ギャップ傘下のバナナ・リパブリック(Banana Republic)から2月にギャップ本体に加わり、CMOを務めることになったメリー・アルデレテ氏は、「マーケターにとって信じがたい時代だ。知っていると思っていたこと、道具箱のなかにあって使えると思っていたことが、すべて無効になってしまった」と述べる。
小売業界にいる多くの同業者と同様、ギャップ(Gap Inc.)も、たくさんの出来事があった1年を経てホリデーシーズンを迎えようとしている。
休業し、カーブサイドピックアップに対応し、店舗を再オープンするまでのあいだに、ギャップは自社製品のマーケティング手段の調整を迫られてきた。そのなかには、予定している季節ごとのキャンペーンへの誘導に加え、多くの米国人が自宅で仕事をするようになるなかでカジュアルなラウンジウェアに重点を置くことが含まれていた。
ギャップは2020年10月22日、eコマースとショッピングモール以外の場所に焦点を絞るため、2021年に数百店舗を閉鎖すると発表した。四半期収支にも明るい点がいくつかあった。そのひとつがオンライン販売の成長で、350万人の新規顧客獲得の甲斐もあり95%増となった。ギャップは2023年までに、売上の約8割をeコマースとショッピングモール以外の場所の店舗であげたいとしている。
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ギャップ傘下のバナナ・リパブリック(Banana Republic)から2月にギャップ本体に加わり、最高マーケティング責任者(CMO)を務めることになったメリー・アルデレテ氏は、「マーケターにとって信じがたい時代だ。知っていると思っていたこと、道具箱のなかにあって使えると思っていたことが、すべて無効になってしまった」と述べる。アルデレテ氏は米DIGIDAYの姉妹サイトであるモダンリテール(Modern Retail)に対して、覆されてしまったマーケティングカレンダーや、期間が長くなった今年のホリデーシーズンに向けてギャップが掲げているプランについて話してくれた。
インタビューには、長さと読みやすさを考え、少々編集を加えてある。
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──数カ月前にギャップに加わって以後、マーケティング戦略はどのように変化したか?
多くの企業がそうしているように、我々は、適切と思われるさまざまな方法を使って消費者とつながろうとしてきた。全体戦略は3月以降も進化し、その進化はまだ続いている。突然、小売業者として、チノパンツを売っているだけではすまなくなった。人々は、大統領選挙や「Black Lives Matter(ブラック・ライブズ・マター:黒人のいのちは大切だ)」、そしてもちろん新型コロナウィルスなど、重くのしかかってくるあらゆることに疲れ果ててもいる。
──2020年の第4四半期は多くの点で、ほかの四半期とは違っている。小売業者が苦境に立つときに、現状に敏感に対応することと、商品のマーケティングを行うことのバランスをどうやって保つのか?
第4四半期が1年のうちでもっとも盛んに商取引が行われる時期であることに変わりはない。メッセージを伝えるという点では、今までと同じ路線を進んでいく。1年のうちこの時期の広告ではいつも、楽観主義とマジックが火花を散らしている。今年はいつも以上にそれが重要だ。先日開始したキャンペーンは、2月から計画を立て始めたもので、コアバリューでリードすることに焦点を当てている。パンデミックが続くなかで、それはより現実に直結した課題になっている。
ビジネスの視点からは、達成したいことがいくつかある。まずは、値引きを超えた価値を追加すること。それは、フリクションを取り除き、店内も、8月に開始したカーブサイドピックアップも含めて、より簡単かつ安全にショッピングができるようにすることを意味する。それを実現するための技術をすべて揃えるのは簡単なことではないが、我々は常に、利用できるあらゆるサービスと連携して取り組みを進めている。さらに3つ目が、チャリティーになる社会還元の要素を持つことだ。我々はコンテンツを押し付けるだけではないと示したい。
──10月から12月までと長期にわたるホリデーシーズンのキャンペーンを、どのように誘導しているのか?
実際のホリデーシーズンが始まる前に、ハロウィンと大統領選挙をどう乗り切っていくかが課題だった。だが我々は8月までに、調査データとほかの小売業者がジャンプスタートする様子を見て、今年のホリデーシーズンの買い物は必然的に早めに始まると気づいていた。さらに9月には新たなチャネル分割を強調、オンラインフルフィルメントやカーブサイドピックアップへの移行が増えた。
これらすべてが、新学期シーズンの混乱と相まって、ホリデーシーズンキャンペーンの9~10週前に最高潮に達していた。ここで問題になったのが、そんなに長いあいだ人々の注目を惹きつけておくにはどうすればいいか、だ。幸い我々はすでに、今年の夏に店舗を再開したときにマーケティングへの投資を計画していたので、広告制作にゴーサインを出すことができた。その計画とは、デジタル広告と全国ネットのTV放送のスポット広告の両方を活用することだ。
──ホリデーシーズンのコンバージョンは最近数カ月の反応よりもいいと予測できるか?
人々がホリデーシーズンをどのように祝うか、どのようなタイプの贈り物をするつもりかはまだわからない。あまり家における学校の再開さえ9月までは混乱につぐ混乱だったのだから、これを予測することは難しい。7月にホリデーシーズンに関する検索が急増していることを感じ始めたが、それは実現しなかった。同時に、先延ばしにするという人間の行動も心に留めておく必要があるので、シーズン後半に遅れて買い物をする人へのサポートもできなければならない。
実際のところホリデーシーズンは、休日の到来を告げる広範な取り組みというところに行き着くだろう。Amazonはすでに、10億ドル(約1045億円)をかけてシーズン到来のシグナルを出しており、業界全体が追随している。これは私の勘だが、買い物パターンは、例年ならば感謝祭の週末に急増するのに対し、今年は特別なピークがないまま長く続くと思われる。
[原文:‘Shopping patterns will feel longer and flatter’: Gap’s CMO on preparing for holiday campaigns]
GABRIELA BARKHO(翻訳:藤原聡美/ガリレオ、編集:長田真)