靴専門の小売チェーンDSWは、デジタルマーケティング予算の大半を投じて、自社のインフルエンサーマーケティング戦略の標準化に取り組んでいる。そんななかで、いわゆる「マイクロインフルエンサー」よりもさらにフォロワーが少ない「ナノインフルエンサー」に着目。リーチの規模よりも、コンテンツや信頼性を重視する理由とは。
靴専門の小売チェーンDSWは、デジタルマーケティング予算の大半を投じて、自社のインフルエンサーマーケティング戦略の標準化に取り組んでいる。
DSWは、インフルエンサーを店舗スタッフの延長と見なすようになってきた。同社は現在、前払い制やエンゲージメント単位での支払い制など、インフルエンサーに対する従来の支払いモデルを廃止し、インフルエンサー向けの新しいインセンティブを試験的に導入している。だが、同社の戦略にはもうひとつ重要な部分がある。「マイクロインフルエンサー」よりも規模が小さく、フォロワー数8万以下の「ナノインフルエンサー」に目を向けているところだ。
同社は今年、エージェンシー360iのもとですべての戦略を実行に移し、リーチの規模ではなくコンテンツと信頼性を重視しながら、5カ月かけて287人のインフルエンサーを選び出した。狙いは、DSWの業務分野に関わりがあるファッションなどのトピックをカバーすると同時に、ライフスタイル、フィットネス、ヘルスケア、育児に関するナノインフルエンサーにも手を広げることだ。靴が大好きで、ブランドや伝えたいストーリーにふさわしいインフルエンサーを、DSWは季節ごとに360iと協力して探した。
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オハイオ州コロンバスを拠点とするDSWは、売上増に合わせて広告費を増やしてきた。米広告調査会社カンター・メディア(Kantar Media)によると、2016年、DSWが調査対象のメディアに支払った広告費は4340万ドル(約49億円)で、2015年の2910万ドル(約33億円)を大きく上回った。なお、DSWは、デジタルマーケティングまたはインフルエンサーマーケティングに投じている金額を公表していない。
ブランドボイスの代弁者
「我々が心がけていることは、キャンペーンごとのトーンにふさわしいインフルエンサーを探し出すことだ」と360iのインフルエンサーマーケティング責任者、コーリー・マーティン氏は語った。たとえばキャンペーンの主要チャンネルがインスタグラムである場合、キャンペーンのトーンにふさわしいコンテンツを作っているインフルエンサーをインスタグラムで探すようにしている。「つまり、お金を払って商品を宣伝してもらうことではなく、我々の代わりにブランドボイスを持続的に伝えてくれる人を見つけることだ」。
DSWは女優のオリビア・カルポをスタイルアンバサダーに起用し、好みにもっとも近い靴のスタイルを5つ選んでもらった。次に360iがインフルエンサーコンテンツを最大限に活用し、資金を投じてオンラインで広告を制作。ソーシャルメディアやメールで発信し、プログラマティック広告在庫を買い入れる。
DSWが広範囲のインフルエンサーを積極的に起用しているように、いま、複数のブランドがインフルエンサーマーケティングを見直し、標準化と効果測定のオプションを増やそうとしている。そうした動きのなかでは、「いいね!」やコメントなどのエンゲージメントに重点が置かれてはいないと、マーティン氏は語った。「そうした指標は重要ではない」。その一方、インフルエンサーのコンテンツに資金を投じることで、実態に即した効果測定の可能性を切り開くことができると同氏は話した。
より親密なつながりに期待
「インフルエンサーのおかげで、我々はこの時代により合致した望ましい方法で消費者にリーチすることができる」と語ったのは、DSWのCMO、エイミー・スティーブンソン氏。「人々は何よりもまず友人や家族のオススメを受け入れる。ナノインフルエンサーが発信することなら、好意的に受け取られる可能性がより高い」。
その一例として、DSWの「マーチ・オン・マムズ(March On Moms)」が挙げられる。これは、同社がインフルエンサーキャンペーンの一環として360iと協力して実施したプログラムだ。ナノインフルエンサーのブロガー、ヘザー・エイビス氏は、360iからの依頼により、子育てのヒントに関する投稿を行い、世の中の母親たちに堂々と前向きに進むように呼びかけた。ほかに、7万5000人のフォロワーがいるライフスタイルインフルエンサー、ナティ・ミシェル氏も参加していた。
いまさらだけど、子育てはおままごとじゃない。子育ては、私の人生のなかで唯一、まったく思い通りにいかない絶望と、このうえない喜びを同時に感じられることかもしれない。最近、子育てについてアドバイスをもらえないかと尋ねられた。うーん、なんだろう、To Doリストは作っていない、献立は考えていない、図式化や整理整頓は得意ではない。実際、遠足の日に、子どもにお弁当を持たせるのを忘れたこともある。そんな私がアドバイスするなら、前向きに堂々と歩き続けよう! ってことかな。子育ては、右足の前に左足を出して、毎日一歩一歩、少しずつ歩いていくことだ。花でいっぱいの野原にたどり着く日もあれば、泥沼に足を突っ込んでしまう日もある。でも、いつだって一歩一歩に価値がある。今年の母の日は、DSWとのパートナーシップの一環として、世界中のママに#前向きに堂々と歩き続ける(#MarchOn)ことを呼びかけたい。これが、私からの一番の子育てのアドバイス!@DSWShoelovers
DSWによると、顧客宛てのメールにインフルエンサーのコンテンツを活用したところ、より多くの顧客を獲得できたという。DSWはまた、顧客獲得のためにモバイルにも力を入れている。ときには、パッドスクワッド(PadSquad)が新しく制作したショッピング可能なインラインモバイル広告に、インフルエンサーのコンテンツを活用することもあるという。
Shareen Pathak(原文 / 訳:SI Japan)