#たおりゅう が牽引する、 資生堂 のD2C「レシピスト」:「インスタ軸でテレビ並みの認知を得れた」

役者たちは、ソーシャルアカウントのなかでも演技を求められる時代になった。

資生堂ジャパン株式会社の服部裕子氏は10月29日、フェイスブック ジャパン社が主催するイベント「Instagram Day Tokyo 2019(インスタグラム・デー・トーキョー2019)」に登壇し、同社のスキンケアブランド「レシピスト(recipist)」のマーケティングコミュニケーション戦略について語った。ミレニアル世代の女性をターゲットとするレシピストでは現在、一切テレビCMを利用しておらず、完全にインスタグラムを軸とした施策を展開しているという。

「レシピストは、まだ新しいブランドなので、課題は『認知』にあった。なので、最初はやはりテレビCMの活用を考えた」と、レシピストのアシスタントブランドマネージャーを務める服部氏は語る。「しかし、ターゲットの20代前半女性のインタビューを重ねるうちに、そのセグメントではテレビに触れている人が本当に少ないことを知った。そんななか、話を訊いたすべての人々から、唯一共通して出てきた言葉がインスタグラムだった」。

資生堂ジャパンが2017年11月にローンチした新ブランド「レシピスト」は、いわば同社謹製のD2C(Direct to Consumer)ブランドだ。発売当初のプレスリリースでも「デジタルネイティブなミレニアル世代の生活行動に対応し、情報収集から認知、購買までの全てをスマートフォンの中で完結する『スマホファースト』型マーケティングを展開」すると表明。実際に、卸売りを通した小売展開は行っておらず、基本的にECサイトのみで発売されている(現在では、一部店舗展開も実施)。

なお、インスタグラムの日本国内MAU(月間アクティブユーザー数)は、2019年3月時点で3300万。現在、2600万といわれるFacebookの日本国内MAUを追い越し、インスタグラムの利用者数は、順調に成長を続けている(逆にFacebookの国内MAUは漸減傾向にある模様)。同イベントで、フェイスブックジャパン執行役員の鈴木大海氏は、インスタグラムは若年層でマスメディア化しており、ハッシュタグ検索を意味する「タグる」という行為を通して、ユーザーを発見から行動に促すことができると語っていた。

認知目的のインスタ垢

しかし、レシピストのローンチ直後に用意されていた公式SNSアカウントは、Twitterアカウントのみだった。レシピストの公式インスタグラムアカウントが開設されたのは2018年6月、さらに「#たおりゅう」キャンペーン専用インスタグラムアカウントが開設されたのが、2019年7月だ。この「#たおりゅう」が大きな話題を呼んだ。

「#たおりゅう」とは、女優の土屋太鳳と俳優の横浜流星が恋人同士に扮して更新される、架空のカップルアカウント(いま高校生や大学生のカップルのあいだで流行っている共通アカウントのこと)。24歳の幼稚園の先生の「たおちゃん」と、22歳のお花屋さんの「りゅうくん」が、同棲して間もない初々しい日常をお互いに投稿しあっているという設定になっている。そうしたふたりのささいな日常の投稿の合間に、レシピストがプロダクトプレイスメントされているのだ。


「#たおりゅう」アカウントの投稿

「『#たおりゅう』の目的は、完全に『認知』となっている。そのために、いま旬なタレントさんに協力してもらい、お友達のカップルアカウントをフォローしている気分で見られるアカウントにした」と、服部氏は語る。「公式アカウントはブランドサイトのような役目をもっている。そこは理解を深めるうえで大切な場所だ。だが、インタビューの結果、20代前半の女性にとってインスタグラムは、理解とともに認知も稼げる場所ではないかと考えた」。

「#たおりゅう」のインパクト

11月4日現在、レシピスト公式インタグラムアカウントのフォロワー数は2万1899人、対して「#たおりゅう」アカウントのフォロワー数は43万6290人だ。「フォロワー数の量がすべてではない」という認識は広まりつつあるものの、開設から1年4カ月経過する公式に対して、たった4カ月程度の「#たおりゅう」のインパクトはいかばかりか、想像するに難くない。

「『#たおりゅう』アカウントが設計どおり、認知が広まったおかげで、公式アカウントの流入もすごく多くなった」と、公式アカウントの運用を手がけるテテマーチ株式会社のゼネラルマネージャー、三島悠太氏は同イベントで語る。「インスタグラムはTwitterと比較して、ブランドが伝えたい世界観とか共感して欲しいことに対する、ユーザーの熱量が違う。Twitterではライトに拡散はできるけど、インスタグラムでは一定の広がりだけでなく、ブランドを好きになってもらえる、エンゲージメントの深さを得られる」。

結果として、具体的な数字は披露しなかったものの、「テレビ並の認知は取ることができた」と、服部氏は明かす。加えて、「インスタグラムではエンゲージメントもとりやすく、ROIもよかったのではないかと、社内では話していた」という。

「すべてをインスタグラムに」

もちろん、キャンペーンアカウントだけで、ここまでの成果を得たわけではない。ライブ配信屋外・交通広告やポップアップショップ、さらにペイドソーシャルなど、さまざまな関連施策を打っている。

「インスタグラムと決めたからには、ここは一貫性を持とうと、アクティビティのすべてをインスタグラムにつなげている」と、服部氏。「プロモーションのローンチ発表会も、インスタグラムでライブ配信を行った。これは、業界的にも画期的なことだったと聞いている。また、屋外広告のクリエイティブもすべて、インスタグラムを意識して作っている」。

一般的な屋外広告は、横長のクリエイティブを用意することが多い。しかし、「#たおりゅう」キャンペーンの屋外広告では、縦組みの写真をたくさん使って、横長のクリエイティブを埋めた。しかも、その写真はすべて、スマートフォンで撮影されたものだという。さらに、そのコピー文面もすべて、ハッシュタグ形式になっているという念の入れようだ。

「そのうえで、エリアごとに屋外広告の写真の内容も少しずつ変えた」と、服部氏は補足する。「それぞれのエリアの子が、屋外広告のクリエイティブを写真に撮って、インスタグラムでシェアしあうことで、その差が判明し、さらに拡散されるという設計にした」。

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ポップアップショップと交通広告

ペイドソーシャルも計画的に

また、テテマーチの三島氏によると、レシピストではオーガニック投稿のクリエイティブでもエンゲージメントの高いものは、そのままペイドソーシャルの広告素材に流用しているという。服部氏もその発言を受けて、「そこは計画しながらやっている」と続けた。

「最近の女の子たちのあいだでは、インスタグラムにおける写真の保存も大事になってきている。広告でさえも気に入ったら保存して、あとあと見返して購入に繋がっている」。

そして、もちろんインスタグラムのストーリーズ広告もフル活用していると、服部氏は続ける。「いろいろな媒体に広告を出しているけども、ストーリーズ広告の効果はかなりトップほうで高かった」。

「共感を得る」ことが一番大事

インスタグラムには、ユーザーの好きなものしか出てこないという特徴がある。ユーザー自身も、その特徴を理解しているので、ブランドやメーカー目線のメッセージが挿入されると、瞬間的に嫌がられてしまうところがある。

「私たちがいま一番気をつけていることは、ターゲットの行動とか考えていることに寄り添って、『共感を得る』ということだ。広告打つことよりも共感を得ること」と、服部氏は締めくくる。「そのあとで、ブランドの思いとか、伝えたいこと(ちょっとした広告)を入れていくことが非常に大事というのが実感だ」。

Written by 長田真
Photo frome 「#たおりゅう」スペシャルサイト