今年、ファンタ(Fanta)のCMは、テレビで流れない。
コカコーラ(Coca-Cola)のブランド、ファンタは広告支出先をリニアTVからデジタル――特に、ソーシャルチャンネル、デジタル動画およびOTTプラットフォーム――へと切り替えている。Z世代を狙い、彼らのいわばホームグラウンドに焦点を合わせるためだ。
今年アメリカでは、ファンタ(Fanta)のCMは、テレビで流れない。
コカコーラ(Coca-Cola)のブランド、ファンタは広告支出先をリニアTVからデジタル――特に、ソーシャルチャンネル、デジタル動画およびOTTプラットフォーム――へと切り替えている。Z世代を狙い、彼らのいわばホームグラウンドに焦点を合わせるためだ。
「弊社にとって、動画はきわめて重要なメディアだが、我々はティーンと、それも彼らがいままさに動画を消費している形で繋がりたいと考えている。つまりは、オンライン動画とOTTだ」と、ファンタのブランドディレクター、トゥトゥル・ラーマン氏は語る。「フォーマット自体はこれまでのものと同じだが、今回は新世代との、あくまでも新世代のやり方での繋がりを試みており、それがたまたまテレビではない、というだけのことだ」。
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「あくまでも大きなエコシステム」
テレビとの別離は、10代が日々を過ごしている場所を踏まえての行動、というだけではない。これは、デジタルプラットフォームを介して10代の消費者とリアルタイムでやり取りするという、同社の広告戦略の一環でもある。たとえば、ファンタはOOHキャンペーンを活用して消費者をSnapchat(スナップチャット)に誘っている。Snapcode(スナップコード)やARを介して、彼らの投稿画像に写るファンタのOOH広告を見栄え良くさせるのが狙いだ。
2019年度第2四半期、ファンタは33万6000ドル(約3600万円)をメディアに費やしており、第1四半期の9000ドル(約97万円)からの大幅な増額が見られると、カンターは報じている(ソーシャルチャンネル費は同社の調査対象ではない)。同じくカンターによれば、ファンタの2018年度におけるメディア費は、2017年度の580万ドル(約6.2億円)をわずかに下回る540万ドル(約5.8億円)だった。
今年度、ファンタはメディア予算の大半をデジタルチャンネルに投じると思われ、これにはソーシャル(インスタグラム[Instagram]、Facebook、Snapchat、Twitterへの投資が計画されている)、YouTubeおよびヴィーヴォ(Vevo)におけるデジタル動画、Hulu(フールー)、ロク(Roku)、ソニー・クラックル(Sony Crackle)、プレイステーション ヴュー(PS Vue)を介したOTTが含まれる。また、一部はOOHおよび映画館広告にも割かれる見込みだ。同社は具体的な数字も、どこにいくら使うのかも明かさず、予算の内訳は社の方針として以前から明かしていないとしか述べなかったが、いずれにせよ、大半がデジタルチャンネルでの消費者との会話促進に費やされるのは間違いない。
ただ、「どれをどの程度にするか、グラフを見ながら割り振るのとはまったく違う」と、ファンタのインテグレーテッドコミュニケーション部門シニアマネージャー、ジェシカ・カリッシュ氏は語る。「あくまでも大きなエコシステムとして捉え、全体としてどう機能するのかを見ている。弊社のOOHは、国道沿いに立ついわゆる広告板(ビルボード)とは違う。我々はバスの待合所やショッピングモールのキオスクといった人通りの多い場所に広告スペースを買っている。その意図は、OOHといった、安心感を抱きやすい昔ながらの広告に触れてもらい、人々を弊社のソーシャルワールドに引き込むことにある」。
馴染みのあるブランドには効果的
これは消費者にすでに馴染みのあるブランドには効果的な戦略だと、クリエイティブコンサルティング企業イレヴン(Eleven)のマネージングディレクター兼パートナー、ミシェル・シレオ氏は指摘する。
「世間におけるファンタの知名度はきわめて高い。いわゆるブランドエバンジェリストが数多くいるため、新世代層、とくにZ世代市場に切り込むために新たなプラットフォームの利用を考えるのは当然だろう」と、シレオ氏はeメールで回答した。「双方向の会話を可能にするデジタルプラットフォームの活用は、既存のブランド信奉者との絆を強化するとともに、新たな潜在的消費者とのオーダーメイドの対話のきっかけにもなり、それは彼らとの近しい関係の確立にも繋がりうる」。
そうした対話を促すためにファンタが利用するのは、Snapchatだけではない。実際、インスタグラムも利用している。同社は、ファンが投稿したお気に入りフレーバーと写る画像を、各フレーバーに合わせたユーモアたっぷりのイラストなどを加えて編集し、自社インスタグラムに投稿するとともに、そのファンをタグ付けしている。
「繋がりを重視するこの手法は、ファンタ独自のソーシャル/デジタルモデルであり、今後、社が前進していくうえで大切にしていきたい」と、ラーマン氏は語る。
「競合他社との差別化を図る」
自社ブランドに関する消費者との対話促進にデジタルチャンネルを利用するファンタの手法は、飽和状態に近い飲料市場で頭一つ抜け出すための戦略でもある。同市場では現在、いわゆる炭酸飲料ブランドが苦戦している一方、 セルツァー(発泡水)ブランドが市場シェアを拡大している。「(消費者にとっての)選択肢は以前とは比較にならないくらい増えた」と、ラーマン氏。「我々はブランドとしての独自の声をもって、競合他社との差別化を図っていく」。
Kristina Monllos(原文 / 訳:SI Japan)