実店舗とデジタル、セールス部門を統合したセフォラの狙い

LVMHモエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン傘下の化粧品や香水を扱う専門店、セフォラ(Sephora)の実店舗リテールチームとデジタルチームは昨年10月に統合された。これはセフォラにおける、もっとも大きな部門間の壁を取り払った形になる。2014年からデジタル部門のシニアバイスプレジデントとして勤めていたメアリー・ベス・ラフトン氏が全リテールのエグゼクティブバイスプレジデントとして就任した。

インストアとデジタルの統合は時代を反映している。一歩引き下がった場所から、顧客たちがどのように買い物をしているかを観察し、会社の仕組みをそれに合わせて編成し直す必要があったと、ラフトン氏は語る。

「顧客が(デジタルや実店舗など)どこで買い物をしようと、我々にとっては問題にならないはず。けれど組織の現状はそうはなっていなかった。そのため実店舗のチームとデジタルのチームをひとつの部門へと統合し、カスタマーサービス部門とも統合した。セールスの指標、エンゲージメント、そしてチャンネルごとの体験に関して、私たちの思考方法が変わった」と、彼女は言う。

シナジー見つけるコラボ

チームが統合されてからセフォラの顧客プロフィールは、実店舗における購買、販売員とのやり取り、オンラインの閲覧・購買をトラッキングする「360度データ」を含むようになった。顧客が何かを購入するに至るまでの行動をトレースするため、何をセールスの指標とするかも再検討している。この戦略の中心に位置しているのがモバイルだ。モバイルは実店舗でもデジタルでも重要な役割を担っている。もちろんセフォラのアプリをダウンロードする顧客が、もっともロイヤルな顧客であることは言うまでもない。

「顧客がオンラインで閲覧してから実店舗でプロダクトを購入したとき、いまでは私たちはそのプロセスを知ることができる。以前はそれを見ていなかった。(インストアとデジタルという)両方のチャンネルにとってこれは意味がある。以前でもチャンネル間の関係は良好だったが、シナジーを見つけるためのコラボレーションはしていなかった。それぞれのビジネスを独立した形で最大化しようとしていた。いまは以前よりも調整が取れており、実店舗、オンライン、そしてモバイルにおける戦略のあいだをより早く行き来することができる。これらすべてをつなぎとめる糊のような役割を果たしているのがモバイルだ」とのことだ。

セールスがオンラインにシフトするに従って、実店舗を抱えるリテーラーたちは実店舗とオンラインでのセールスの、それぞれ独立した状態にどうやって取り組んでいくかを見極めようとしてきた。このふたつの部門におけるコミュニケーションが存在していなければ、それぞれが競合してしまうことがある。

「多くの場合、(ふたつの部門が)お互いに競合してしまう。その結果、いまの四半期の成績をちょっと良くするためのプロモーションを行う、というようなことを両部門がしてしまう」と語ってくれたのは、ファッション系のリテイラーでeコマースのマネージャーを担当している人物だ。「競合するのではなく、リテール全体におけるセールスを増強するための方法を一緒に考えることができればもっと健全だ」。

ロイヤリティが戦略の中心

ラフトン氏によると、セフォラではすべてのセールスと関連指標がひとつの部門内でトラッキングされているという。そして、このふたつの部門をつなげるための顧客体験にフォーカスしたサブグループが部門のなかに存在している。実店舗が改装を行う際には、デジタル面でのアップグレードも行っている。店舗で顧客にメイクのやり方を実践してみせるメイクアップアーティストたちは、店頭におけるチュートリアルで使ったプロダクトをすべてアプリ上で入力する。それが顧客のプロフィールに送られ、あとで購入できる。購入はオンラインでも実店舗でも良い。

また、アプリに備わっている拡張現実(AR)のツール「セフォラ・バーチャル・アーティスト(The Sephora Virtual Artist)」を使うと、ユーザーはプロダクトをバーチャルで使い、異なるメイクアップのスタイルを試すことができる。そのままオンラインでの購入ページへと進むこともできるし、プロダクトを扱っている店舗を知ることもできる。

しかし、部門統合のもっとも大きい目標は、店舗とオンラインにおける顧客ロイヤリティの特典を統合すること。それによって顧客のロイヤリティをさらに増強することだ。店舗とオンラインにおいて何が閲覧されたかに基づき、より良いプロダクトの推薦ができるようになる。また、適切な顧客に対して、最適なセールス情報などを送ることもできる。

「私の新しいチームは、顧客のロイヤリティを戦略の前面に置いている。体制が改善されて、顧客の理解がチャンネルを横断してできるようになった。このデータを使い、あらゆる側面で顧客にアピールをし、より深いレベルで顧客を理解できる。それによって、チャンネルを横断して、顧客が気に入ってくれる体験を作ることができる。ロイヤリティは、データを中心に据えたエコシステムであり、非常にパワフルだ」と、ラフトン氏は語った。

Hilary Milnes(原文 / 訳:塚本 紺)