個人情報保護関連の諸々が依然、マーケターおよび広告主の頭上に暗い影を落とすなか、D2C家具レンタル企業Fernish(ファーニッシュ)はこれまでのメディアミックスを再考し、実験的なチャネルに増資している。
個人情報保護関連の諸々が依然、マーケターおよび広告主の頭上に暗い影を落とすなか、D2C家具レンタル企業ファーニッシュ(Fernish)はこれまでのメディアミックスを再考し、実験的なチャネルに増資している。
ほかの多くのブランドと同じく、Fernishは広告費の大半をFacebookとインスタグラムを中心とするデジタル広告に費やしている。しかし、iOS 14の個人情報保護方針、混み合う一方のデジタル広告スペース、そして高騰するコストに照らし合わせ、カリフォルニアに拠点を置く創業4年目の同社は、メディアミックスの多様化をはじめた。
社長兼COOのクリスティン・トス氏によれば、同社がFacebookおよびインスタグラムに投じるデジタル広告費は、全体の8割を超える。そこで、インフルエンサーマーケティング、コネクテッドTV、OOHを併用することで、それを6割程度に下げたいと、同氏は語る。具体的な数字については明かさなかった。
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「この先、個人情報の扱いがますます厳しくなるなか、我々の活動を知りたいと思ってくれる人々を引き続き的確にターゲティングしていくにはどうするべきか、その難題を自らに課しつづけている」と、トス氏は語る。
新たな戦略を常に試しておく姿勢
ファーニッシュは今秋の最新キャンペーンでデジタルとOOHを併用しており、これはそれまでの細切れ的手法と大きく異なると、氏は語る。「今回は『中心的コンセプトを共有し、そのうえでプラットフォーム間の違いを翻訳的手法で統一し、すべて同時並行的に仕掛けるにはどうしたらいいのか?』という問いに基づいた」と氏は語る。これは同社にとって初の、多チャネルを股にかける本格的キャンペーンだという。
同社のマーケティングチームは以前から、メディアミックスの多様化を図ってきた。広告費の1~2割を実験的なチャネルに投じ、より多くの買物客を掴むべく、音声広告からダイレクトメールに至るまで、さまざまな実験を行なっている。
もちろん、メディアミックスおよびマーケティング戦略に関するかぎり、どのブランドにも通用する万能策はないと、メディアエージェンシーであるメディアハブ(Mediahub)のSVP/グループメディアディレクターであるヴァネッサ・ヒギンズ氏は語る。とはいえ、きわめて不安定な現在の業界において、広告主には「我々が必ずや直面する不可避な変化」に先んじて、新たな戦略を常に試しておく姿勢が欠かせないと、氏は指摘する。
「将来に花開く種を植える」行為
「コロナ禍、ストリーミングサービスの急激な拡散、TVの需要/供給不均衡を考えると、前年に効果のあったものはもはや、メディアミックスおよび予算に関し、前進という意味では通用しない」と、ヒギンズ氏はeメールで語った。「ブランド勢は今後、不慣れに感じることもしなければならなくなる。そうするなかで、そのどれかを自分のものにしていくしかない」。
トス氏が喩えるとおり、ファーニッシュの戦略はまさに「将来に花開く種を植える」行為となる。
「新たな筋肉をつけ続ける必要がある」とトス氏。「マーケティングについて確実に言えることがあるとするなら、それは『何であれ、慣れることはありえない。何かは常に変わろうとしているからだ』という事実にほかならない」。
KIMEKO MCCOY(翻訳:SI Japan、編集:長田真)