Sansan株式会社は2019年6月19日、東京証券取引所マザーズに上場した。これに際し、同社内では、経営資源を効率よく回し、事業を円滑に進めるための組織改革が行われた。その背景とともに、変革にひと役買った、マーケティングインテリジェンス・プラットフォームのDatorama(デートラマ)について深掘る。
「それさぁ、早く言ってよ〜」のCMでお馴染みのSansan株式会社は2019年6月19日、東京証券取引所マザーズに上場した。法人向けクラウド名刺管理サービス「Sansan」を展開する同社は、2007年の創業から12年を経ての上場となった。
2015年以降、売上高において、年平均で55.1%という目ざましい成長率を実現しているSansan。5700件以上の契約数と、2018年5月期で約73億円の売上を達成しており、上場初日の終値は公募価格を上回った。さらに、その後も株価は安定して推移しており、おおむね同社の上場は好感を持って迎えられているようだ。
今回の上場を迎えるにあたり、Sansan社内には大きな変化があった。経営資源を効率よく回して事業を進めていくために、マーケティング部を含め、社内で組織改革があったのだ。それに合わせて、マーケティングの仕組みも大きく変えることになったという。
「かつて、たとえばリード獲得担当者なら、施策を打ってリードを取ったら、そこで終わり。その後の動きを可視化することはなかった」と、同社Sansan事業部マーケティング部の新名庸生氏は語る。「しかし、現在ではマーケティング部のみならず、会社全体でデータドリブンな体制が着実に作られてきている」。
「施策ドリブン」という元凶
順調に成功体験を積み重ねてきたように見えるSansanだが、上場に向けて組織改革に踏み切った。同社が感じていた課題について、Sansan事業部マーケティング部戦略企画グループのリーダーである福永和洋氏はこう説明する。
「BtoB事業を所管するSansan事業部の配下には、マーケティング、インサイドセールス、営業、カスタマ-サクセスの4部門がある。これまでは各部門の独立性が強く、結果、部門最適な動きになりがちだった。そこでこの4部門の動きを横断的に調整・下支えする『事業企画部』を新設した。これによって、社内の水平連携が実現し、事業目標達成に向け、各部門の動きを全体最適になるよう修正することができるようになった」。
その動きに合わせて、福永氏と新名氏が所属するマーケティング部も、抜本的な組織改革に取組んだ。もともとSansanのマーケティング部は、プロジェクトチーム制を採用したフラットな組織構造。各チームはそれぞれの計画に沿って施策を実施しており、チーム単位でサイロ化してしまっていたという。そのため、マーケティング部門全体としての動きがつかみづらく、また新たな施策を進めるために必要なデータの所在もわからない状態だったのだ。その原因は、客観的な指標となるデータに基づいた動き方よりも、「担当者のやる気と施策を打つことが重要」という、いわば「施策ドリブン」というべき考え方にあった。
「リード獲得担当者は施策を打ってリードを取ったら、そこで終わり。その後リードがどうなっているかを可視化することが難しかった。そのため、実施した施策が受注に貢献しているのか確認する術もなく、マーケティング部全体で、目標までどの程度進捗しているのかというところまで、関心は持っていなかった」と、新名氏は振り返る。
データドリブンへの変革
そのような状況のマーケティング部だったが、全社的な要請を受けて組織改革に踏切った。合わせて「施策ドリブン」を廃し、より効率的・客観的な施策の実施と評価が可能になるよう、データドリブンな組織への変革を進めることとなったのだ。具体的には、プロジェクトチームが横並びとなっていたフラットな組織構造を、戦略企画、デジタルマーケティング、オフライン、クリエイティブの4つのグループに改編。そして戦略企画グループがマーケティング部門のデータドリブン化を主導することとなった。そこで注目したのが、マーケティングインテリジェンス・プラットフォームのDatorama(デートラマ)だ。Datoramaは経営層からマーケティング担当者まで、誰もが簡単に散在するあらゆるマーケティング関連データを統合・可視化し、分析できるソリューション。データの一元管理を通じて、同じデータに基づいて誰もが迅速な意思決定を実現できるよう支援する。
「営業部門の事業目標達成に向け、マーケティング部ではどのタイミングで、どの程度のコストを投入してリード獲得を進めるべきか、戦略企画グループが予測を立て、施策実施後の動きを可視化する仕組みをDatoramaで作った」と、福永氏は語る。
たとえば、どのフォームが受注につながりやすく、反対に受注が伸びなかったフォームがどれだったのかなど、施策の結果を常時ダッシュボードで追えるようになれば、当然、担当者も気にするようになる。
「全社的に、上場に向けて全体最適化とデータの可視化に向かって進んでいた。なので、我々も実際のマーケティング施策で、その流れを実現しようと考えた」と、福永氏は続ける。「その切り札がDatoramaだ」。
ひと目でわかる「到達度」
Sansanのマーケティング部は、組織改革を受け、かつてチームごとに独自に設定していたKPIを部門で統一。スタッフは常に、Datoramaのダッシュボード上でそれぞれの施策のパフォーマンスを確認し、必要に応じて施策をチューニングしていく。
「マーケティング部で統一したKPIを追うことになった結果、部門としてひとつの方向に進んでいる実感がある。Datoramaでひと目で到達度がわかることも、モチベーションの向上につながっていると思う」と、福永氏は語る。「弊社で扱うマーケティングデータは、SFA(Sales Force Automation:営業支援システム/Salesforce活用中)から吐き出される営業系の数値や、オンライン広告やオフライン施策で収集したリードに関するデータなど、多岐に渡る。特別な開発をすることなく、それらをひとつのテーブルに統合でき、リアルタイムで分析・可視化できるツールがDatoramaだった」。
現在Sansanでは、新名氏がダッシュボードを構築し、オンライン、オフラインなどマーケティング部内のグループに、整理された情報を提供している。さらに、マーケティング部内のグループだけではなく、マーケティング部全体のダッシュボードもDatorama上に構築されており、いわばDatoramaはマーケティング部の情報インフラともいうべき存在になっている。
「Datoramaの導入で、目標の数字と現状が簡単に見えるようになった」と、新名氏は語る。「その結果、会社全体の目標を達成するために、本当に追うべき指標、会社にインパクトを与える指標は何かを、マーケティング部員全員が模索するような動きも出てきている」。
Sansanの事例に近いB2B企業向けサンプルダッシュボードイメージ。リードの流入元ごとの商談成立率、流入チャネル・サブチャネルごとの詳細な効果測定ができる
全社的なムーブメントへ
マーケティング部でのDatoramaの活用を見て、Sansan社内では、インサイドセールス部などからも「このようなデータがほしい」と、新名氏に声がかかるようになり、他部署との連携も進みつつある。
たとえば、受注目標が未達の場合、いままでは未達の原因を推測するしかなかったようなケースも、DatoramaとSalesforceのデータをつなぎこむことで、数字として明確に示せるようになった。たとえば、マーケティング部が獲得したリードに量または質的な問題があったのか、あるいは十分なリードは獲得できていたが、インサイドセールス側に問題があり、結果的に商談につなげられなかったのか、などだ。
「課題を解決しようと思えば、そのために必要なデータはある」と、新名氏は続ける。「我々のチームに依頼すれば、それらを可視化する仕組みを実現できるという認知が社内に広がってきた。会社全体でデータドリブンな体制が着実につくられてきている」。
「すでに取組みは進めている」
今後、新名氏が取り組んでいきたいと考えているのは、さらなるセグメントの実装だという。たとえば、現在は業界や従業員規模を軸にしているリード分析も、商談の対象となる企業が導入しているツールを軸にすれば、「このツールを利用している企業はSansanと相性がよい」ということがわかるかもしれない。そうすれば、より効率的な施策が打てるようになる。
「あと、伸びている業界、受注を獲得するべき業界を全社的に見極められるようにしたい。マーケティング、インサイドセールス、営業の3者が同じ狙いをもって、Datoramaでパフォーマンスを確認しつつ、一気通貫で効率よく活動できるようにだ」と、新名氏は今後の抱負を述べる。「すでにその取組みは進めている。なので、早く軌道に乗せるのが目標だ。Sansanでは同取り組みをともに推進できるメンバーを募集している」。
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Written by 滝口雅志
Image courtesy of Sansan