The Rundown(ランダウン)は、米DIGIDAY編集部の幹部による「社説」シリーズ。歯に衣着せぬ表現で、メディアやマーケティングの最前線が抱える課題を浮き彫りにしている。今回はシャリーン・パサック副編集長が「ブランドパーパス」ブームについて疑問を投げかけた。
The Rundown(ランダウン)は、米DIGIDAY編集部の幹部による「社説」シリーズ。歯に衣着せぬ表現で、メディアやマーケティングの最前線が抱える課題を浮き彫りにしている。今回はシャリーン・パサック副編集長が「ブランドパーパス」ブームについて疑問を投げかけた。
ブランドパーパスはこの1年あまり、業界のスローガン的な存在となっていた。だが、それがついにCMOのオフィスを飛び出した。合同でNPOビジネス・ラウンドテーブル(Business Roundtable)を設立したCEOたちが8月第3週、「ステートメント・オン・ザ・パーパス・オブ・ア・コーポレーション(Statement on the Purpose of a Corporation:企業のパーパスに関する宣言)」 と題する公開書簡を発表したのだ。
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これは端的に言えば、今日の企業は、株主よりも「ステークホルダー(利害関係者)」に価値を提供する責任を負っていると公言したといえる。そのステークホルダーとは、コミュニティ、顧客、従業員、ベンダーを含むとしていた。
パーパスとは「動力源」
この宣言が重要視される理由は、従来のビジネス理論では一般に、企業の(したがって、経営者の)唯一の目的は収益性の確保である、とされていることにある。多くはこれを企業の伝統的存在意義からの大幅な逸脱と考えているようだが、ブランドおよびマーケティングの動向を追うプロである我々の目には、いわゆるマーケティングメッセージとしか映らない。
つまり、マ-ケターにとって、「パーパス(目的)」とは、ブランドの動力源、そのものだ。そして、信用崩壊が広がる現在、企業はさまざまな場に出て行き、多少なりとも良心を見せようと努めている。消費者はいまや、テクノロジーやプライバシー、さらには政府にさえも、かつてのような信頼感は寄せていないのだ。この動きが、たとえば、リサイクルといった無駄の排除を実践するサプライチェーンからの「パーパス(目的)」を中心理念として表明する、多くのD2C企業の登場に繋がった。
コモディティ化の時代において、パーパス(目的)を差別化要因として利用することは、理に適っている。先頃、米DIGIDAYが開催したブランドマーケティングサミット(Brand Marketing Summit)でも、参加者全員が意見を同じくし、自らもその一部になることで社会に貢献していると見せることが成功の鍵であり、それができなければ絶望的だと述べていた。
戯言で終わらせるな
だが、例のごとく、真の鍵はやはり、それをいかにしてマーケティング的戯言で終わらせないかにある。実際、パーパス(目的)を掲げる企業から人々がより多く購入する理由については、すでに十分なリサーチがなされている。少なくとも、こうした宣言を必要とするに足りる程度には議論されており、アンチ企業の声が高まる米大統領の選挙年(2020年)を控えている点を考え合わせれば、なおさら必要だろう。
だが同時に、このように公言されると、ただの大げさなマーケティングプロパガンダに聞こえてしまう点も否定できない。
Shareen Pathak(原文 / 訳:SI Japan)