閉ざされた空間で大音量の音楽が流れるなか、見知らぬ人たちと大声で語り合う。バーはまるで、新型コロナウイルスを拡散させるために作られたかのようだ。そのため、人々は自宅で控えめにお酒を飲むようになると、ラム酒ブランドのバカルディ(Bacardi)でCEOを務めるジョン・バーク氏はいう。
閉ざされた空間で大音量の音楽が流れるなか、見知らぬ人たちと大声で語り合う。バーはまるで、新型コロナウイルスを拡散させるために作られたかのようだ。
そのため、人々は自宅で控えめにお酒を飲むようになると、ラム酒ブランドのバカルディ(Bacardi)でCEOを務めるジョン・バーク氏はいう。
「今年の夏は、自宅にいてソーシャルディスタンス(社会的距離)を保つ方がはるかに快適に感じられるので、自宅で飲む人がかなり増えるだろう」と、バーク氏は米DIGIDAYの姉妹サイトであるモダン・リテール(Modern Retail)のポッドキャストで語った。「我々は、4月はじめからこうした傾向を予測し、すでにかなりの数のブランドをRTD(Ready To Drink:そのまま飲める缶入りやペットボトル入りの酒)パッケージでの製造に切り替えた」。
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市場調査企業のIWSR(International Wine & Spirit Research)が最近発表したレポートによれば、RTDはアルコール業界で唯一見通しの明るいカテゴリーで(米国では「ホワイトクロー[White Claw]」が昨年ヒットした)、今年は前年比で20%以上の成長が見込めるという。
また、アルコール飲料の需要はパンデミックの発生前から下降気味で、世界全体の需要が新型コロナウイルス流行前の水準に戻るのは、2024年以降になりそうだと先のレポートは報告している。下降トレンドは強まるばかりだが、バカルディはまさにこのような状況に備えてきたのだと、バーク氏は語る。「飲む量を減らしたり、アルコール度数の少ないものやノンアルコールのものを求めたりする傾向がますます強まると我々は予想している」
このような予測にパンデミックが加わったことを受け、バカルディは「マルティーニ(Martini)」ブランドのノンアルコール食前酒の販売を強化した。「業界は混乱しているが、当社はこうしたイノベーションを実現するという、今年の目標を前倒しで達成する予定だ」とバーク氏は話す。
もうひとつの希望は、ほかの業界と比べて「異常なほど低いレベル」からスタートしたeコマース事業が成長していることだ。「この3カ月で、おそらく2年分の進展が見られていると思う。お酒をオンラインで購入するというeコマース体験がはじめてという人はきわめて多いため、業界の構造に恒久的な変化がもたらされるはずだ」とバーク氏は述べている。
この記事では、バーク氏とのインタビューのハイライトをお届けする。なお、読みやすくするため、若干の編集を加えている。
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RTDへの投資を拡大する
「今年の夏は、自宅にいてソーシャルディスタンスを保つほうがはるかに快適に感じられるので、自宅で飲む人がかなり増えるだろう。我々は4月はじめから、こうした傾向を予測し、すでにかなりの数のブランドをRTDパッケージでの製造に切り替えた。米国では、もっぱら缶入りのパッケージとなる。そして、これが突如として業界でもっとも急成長するカテゴリーとなった。人々は、1杯分のお酒をお店以外の場所で安全に飲みたいと考えている。そこで我々は、店舗が営業を再開したらどうなるのか議論しはじめた。店舗によっては、飲み物をより効率良くテーブルに届けるために、RTDを提供したいと考えるところもあるだろう。我々はいま、このようなトレンドに軸足を置き、市場を開拓する方法を検討している」。
急激に普及するeコマース
「この3カ月で、おそらく2年分の進展が見られていると思う。お酒をオンラインで購入するというeコマース体験がはじめてという人はきわめて多いため、業界の構造に恒久的な変化がもたらされるはずだ。いずれそうなるはずだったが、新型コロナウイルスの影響で大きく進展した。また、我々に影響するもうひとつの大きなトレンドは、健康志向の高まりだ。より良いお酒をより控えめに飲むという流れが明らかに見られる。また、飲む量を減らしたり、アルコール度数の少ないものや、ノンアルコール製品への需要は、ますます強まるだろう」。
近所のバーにとってはチャンス
「自宅で仕事をする時間が増えれば、住まいの近くにあるバーやレストランが、いままで通っていた街なかのバーやレストランより、はるかに重要な存在になるだろう。その結果、業界の構造が必然的に変わることになる。我々にとっては、そのような状況に合わせてパートナーをサポートする方法を考えることが重要だ。ブランドの基本的な要素の多くは、今後も変わらない。自分たち自身やブランドの立ち位置をよく理解し、誠実な言葉で話しかけることがきわめて重要になる」。
[原文:Bacardi CMO John Burke on e-commerce and at-home drinking]
PIERRE BIENAIMÉ(翻訳:佐藤 卓/ガリレオ、編集:Kan Murakami)