小売各社、店内での「 ロボット 」導入テストを進める:目的はフルフィルメント業務の支援

現在、大手量販店の店舗はオンライン注文のフルフィルメント拠点としての役割も果たすようになっている。それに伴い、各社は業務の高速化と効率化のためにロボットの導入を進めている。タスクの一部をロボットに負担させることで、店員がカスタマー対応により集中できるようにするための取り組みだ。

日用品小売企業のジャイアント・イーグル(Giant Eagle)は4月15日、シンベ・ロボティクス(Simbe Robotics)が開発したロボット、タリー(Tally)の導入を開始した。タリーは店舗内を動き回って商品在庫を確認し、陳列棚の商品補充の担当者にデータを送信する。現在タリーが導入されているのは3店舗となっており、今後はさらに多くの店舗に展開していく予定となっている。また4月第2週に、ウォルマート(Walmart)は店内のカスタマーとオンライン注文の支援を行う複数機種のロボットを導入することを発表した。両社ともロボットのコストについては公表していないが、ウォルマートの今回の導入は同社がすすめる110億ドル(約1.2兆円)規模の店舗刷新およびカスタマーサービスとサプライチェーン改善計画の一環だ。

従来の小売企業と競合するオンライン専門小売企業は、発注量を最大化するためロボットを活用している。たとえばAmazonの場合、世界の26のフルフィルメント拠点で展開されているロボットは10万台にものぼるとされている。一方、従来の小売企業の場合は店員の負担を軽減するためロボットの導入を進めている。機械的な作業をロボットに担当させることで、社員がカスタマーに提供できるサービスを増やそうという試みだ。さらに店舗はオンライン注文のフルフィルメント機能も持つようになっており、ロボットは同方面でのサポートも行う。これはウォルマートとジャイアント・イーグルに限った取り組みではなく、ターゲット(Target)やクローガー(Kroger)、ロウズ(Lowe’s)といった小売各社もまた実験を進めている。

小売企業の導入事例

ジャイアント・イーグルもまた、オンライン注文を行ったカスタマー向けのサービスを強化しており、2012年には「カーブサイド・エクスプレス(Curbside Express)」と名付けたカーブサイド・ピックアップ(店舗に入らず駐車場などで商品を受け取れるサービス)を、2017年には宅配サービスを開始している。また、店舗内の陳列棚が常に補充された状態を保つことでミスを防ぐことも可能だ。

ウォルマートは在庫管理を行うロボットを2種類導入する。陳列棚の商品確認ロボット(今年300台を導入予定)と、トラックから荷降ろしされた商品を自動でスキャンして優先順位と部門ごとに分類するロボットだ。ウォルマートによると、この商品確認ロボットは陳列棚の商品がなくなった場所を特定して携帯型のデバイスを持つ社員に画像を送信するとともに、荷降ろしと分類を行うロボットにもこの情報を送ることでトラックから優先的に荷降ろしを行わせる機能を有しているという。同社の広報担当のラーガン・ディキンス氏は、ロボットを導入して店舗やオンライン注文関連の業務支援を行うことで店員の生産性が向上するとしており、次のように語った。

「陳列棚の商品確認だけを行う店員はおらず、業務の一部として実施している。ロボットを導入することで必要な反復作業に費やす時間が減り、そのぶんカスタマーのための時間を確保できるようになる」。

ターゲットやロウズをはじめとする大手小売企業もまたロボット技術の試験運用を進めているが、アナリストらは導入はまだ初期段階で、店員の日常業務の一部を肩代わりすることを主眼においていると指摘する。

「店員を支援するため」

ガートナーL2(Gartner L2)のシニアディレクターを務めるジョアン・ジョリエット氏は、「ロボットの導入は戦略的なものであり、店員と同じことをさせるためではなく、店員を支援するために導入されている。人間である店員の優位性を脅かす形での導入ではない」と、この状況を分析する。

ロボットの導入段階は企業ごとに異なり、それぞれに応じた課題が存在する。ジャイアント・イーグルの場合、ロボットによる在庫確認の最適なタイミングの把握が重要な課題だ。

同社の広報担当を務めるジャナ・ジャブロノウスキー氏は「タリーは事前にプログラミングルートを通り、通り道がいつブロックされているかを把握できるようになっている。だが、1日のうちでもっとも効果的に実施できるのがいつかを把握するのが重要だ」と語る。ジャイアント・イーグルの場合、朝の早い時間帯ような混雑時は避けるほうが良い場合も多い。ディキンス氏はウォルマートもまた同様の懸念から、陳列棚の確認を人混みの少ない時間のみに限定していると指摘している。

カスタマー体験が最優先

マーケティング分析企業レブトラックス(RevTrax)のCEO、ジョナサン・トレイバー氏は、ロボットの導入でカスタマー体験が損われるリスクもあるため小売各社は慎重に検討すべきだと指摘し、次のように述べている。

「もっとも優先されるべきはカスタマー体験だ。SFでしばしば描かれてきたような状況が生まれつつある。ロボットを動かすのは夜中のほうが良いだろう」。

Suman Bhattacharyya(原文 / 訳:SI Japan)