「 スマホ決済 」導入、いまだ及び腰なリテーラーたち

先日、JCペニー(JCPenney)は店舗での支払い手段としてApple Pay(アップルペイ)を停止することを発表した。発表はTwitter上で行われた。これは、店舗でApple Payが使えなかったことに対する、とある顧客による苦情ツイートに返信をした形だった。Apple Pay、Google Pay(グーグルペイ)、Samsung Pay(サムスンペイ)をサポートする非接触EMV機能を可能にするためにVisa(ビザ)が設定した4月13日の締切を満たすことができないため、というのがJCペニーが後に出した説明だった。

リテーラーたちにとっては、スマホを使ったモバイルウォレットに関してさらに大きな課題が複数存在している。

リテーラーたちの懸念

eマーケター(eMarketer)によると、2018年10月の段階でアメリカ人口のうちモバイルウォレットを利用しているのは20%に過ぎない。利用率がまだ非常に低いなかにおいて、サードパーティのモバイルウォレットを採用することにリテーラーたちは不安を抱えている。JCペニーの今回の判断はそれを目に見える形で提供している。業界における複数の情報源によると、モバイルウォレット向けのプラットフォームを運営するテック企業たちがデータをどう使うのか、という点に関しても明瞭さが欠けているようだ。

Visaの利用条件では、アメリカで非接触式の支払いを受け付ける店舗のPOSマシンはすべて、アップグレードをしなければいけない。その期限が4月13日だった。ある販売者団体の広報担当者は米DIGIDAYに対して、アメリカにおける非接触式カードやモバイルウォレットの利用率の低さから、投資に対して生まれる利益がそれほど多くならないのではないか、それなのにテック分野に支出を増やすべきなのか、という不安がリテーラーの間で幅広く共有されているという。これはJCペニーの意見を代弁している発言ではない。

「モバイル支払いウォレットよりも投資利益率の高く、プライオリティの高いテック導入計画が販売者たちには存在しているかもしれない。利用者がそれほど多いわけではない。それでも販売者たちは決断をしないといけない」と、情報提供者は語った。

独自サービスの存在

ターゲット(Target)、コールズ(Kohl’s)、コストコ(Costco)、ベストバイ(Best Buy)、ウォルグリーンズ(Walgreens)、セイフウェイ(Safeway)といったほとんどの米国小売店がApple Payを導入している。特筆すべきはウォルマート(Walmart)がまだ参加していないことだ。質問をしたが、なぜ支払い方法にApple Payがいまだ加えられていないか、回答は得られなかった。しかし、彼らはウォルマートペイ(Walmart Pay)という独自のモバイルウォレットを展開しており、Apple Payを導入しているリテーラーのなかにも独自のモバイルウォレットを開発したところは存在している。

たとえば、ターゲットのアプリにはバーコードベースの支払い機能が付いており、これは彼らのブランドであるレッドカード(Redcard)と紐付けられている。コールズ・ペイ(Kohl’s Pay)は、QRコードベースのウォレットであり、コールズのストアカードに紐付いている。店舗で買い物をすることで得られる特典が付いたシステムを使って、リテーラーたちは消費者に彼らのモバイルウォレットを使うよう促している。リテール独自のモバイル支払いプラットフォームを顧客が使うことで、店舗は顧客データを直接得ることができ、ターゲットプロモーションなどの展開に役立てることができる。Apple PayやGoogle Payといったサードパーティーの支払いプラットフォームでは、リテーラーが得られるデータアクセスは限られる。また、顧客の行動に関する詳細な知見を得ることはできない。

「顧客の購買データのうち重要なものはすべてAppleにとどまり、リテーラーには届かない」と、Apple Payについて語るのはGDI財団(GDI Foundation)のサイバーセキュリティ研究員でありチェアマンであるビクター・ゲバーズ氏だ。

顧客データの在り処

それに加えて、Apple Pay、Google Pay、Samsung Payを使うと、顧客のクレジットカード番号はランダムに生成されたコードに置き換えられ「トークン化」される。支払い分野のコンサルタントであるデボラ・バックスリー氏によると、Apple Payのようなサードパーティのウォレットを経由して行われた支払いをリテーラーが受け取ったとき、どのモバイルウォレット機能を使ったのか、分からないという。顧客データを活用したマーケティングやプロモーションが行えない。

顧客が誰であるか明確に理解できなければ、データを使って顧客との関係性を構築することも難しくなる。

さらに、テック企業がこれによって獲得したデータを使って何をするのかに関しても不安が存在している。というのも、米国ペイメント・フォーラム(the US Payments Forum)によると、モバイルウォレットを使って顧客がモバイルアプリやオンラインで買い物を行い、そこで偽証行為の被害にあった場合、リテーラーが責任を負う可能性があるかもしれないからだ。法的な責任に関する懸念が生じているわけだ。

「データは新しい石油」

モバイルウォレットを導入したリテーラーたちは、決済をより簡単にするために導入しているという。たとえば、ターゲットが1月にApple Payを導入した際には、顧客がより便利に買い物ができるためだと声明で説明された。その同じ声明のなかで、自社アプリに搭載されたモバイルウォレットの宣伝も行っている。そこでは、顧客にリーチするためにターゲット自身が顧客データを持つことが重要であると強調されている。

「データが新しい石油の存在を果たしている。顧客データはリテーラーにとって欠かせない源だ」と、ゲバーズ氏は締めくくる。「顧客の具体的な購買データを得ることで、リテーラーは関連したプロモーションを特定の顧客にターゲットを絞って、より効果的に提供するすることができる」。

Suman Bhattacharyya(原文 / 訳:塚本 紺)