「リテーラーは、いまこそ『 画像検索 』への投資を」:今後、大きな飛躍を遂げそうな技術

とても広大なホーム・デポ(The Home Depot)の店舗のなかで、オレンジを特色とするエプロンを身に着けた従業員を探して、顧客が通路を歩き回っている。商品の特定の部分、おそらくはガスケットあるいはフランジの部分を取り替えようとしているのだ。

その製品を見つけるのは、干し草の山のなかから1本の針を見つけるようなものだ。

ホーム・デポは2016年、まさにこの問題を解決するために、自社のモバイルアプリの検索バーにカメラのアイコンを設け、画像検索機能を追加した。顧客が必要なパーツの写真を撮りアップロードすると、機械学習やコンピュータビジョン技術がホーム・デポのカタログ上にある100万の製品すべてを検索し、画像にもっとも正確にマッチした検索結果を返し、その製品の店舗内の在り処を示したり、その製品のオンライン上のページへ誘導してくれる。

同社は、これまでと同様に、画像検索を社内で開発するのではなく(ホーム・デポのコードの90%は社内で書かれている)、投資のリスクを抑えるためにコンピュータビジョンのプラットフォーム、スライス(Slyce)を採用した。そして、同社には珍しく、この機能はベータモードでローンチされた。

「この問題の解決策としては、これが適切な方法だと考えているが、利用を開始したころは少し不安だった。画像検索の正確性を確保するのは思っていた以上にずっと難しかった」と、ホーム・デポのオンライン/モバイル製品担当シニアディレクターのマット・ジョーンズ氏はいう。「普及には時間がかかると考えて、提携を結んだ。ベンダーは強力なパートナーになってくれている」。

彼が懐疑的だったのは当然だ。アプリ内や店舗で宣伝を行い、2年間が経過しても、画像検索はモバイルアプリ上での合計検索数において1桁の割合しか占めなかったからだ。しかし、ジョーンズ氏は、同社がユーザー体験だけでなく、いまもこの技術の正確性の向上のために投資しているという。これが極めて重要だと彼はいった。リテーラーは用意を整えておく必要がある。画像検索はまだそれほど普及してはいないが、間もなく広く利用されるようになる。

「3年後、5年後を見通しているリテーラーなら、いまこそ投資すべきだ」と、eマーケター(eMarketer)で画像検索やマーケティング、リテールのアナリストを務めるユーリ・ワームサー氏は語る。「これからますます増えてくるだろう。何度も言うが、リテーラーは準備をしておく必要がある」。

言葉では表せないもの

eマーケターの2018年の画像検索に関するレポートによると、ひと月あたり約10億回の画像検索が行われているという。これはひと月あたり、数千億回のクエリが入力される検索全体においては、ほんの一部に過ぎない。だが、増えつづけているのだ。ピンタレスト(Pinterest)では、月間の画像検索数は、2017年2月にはひと月当たり2億5000万回であったのが、2018年2月には6億回にまで上昇した。

リテーラー、特にアパレルや家庭用品、暮らしを良くするカテゴリの製品を扱うリテーラーは、まだこの技術を使いはじめたばかりだ。Amazonやターゲット(Target)、ベッドバス&ビヨンド(Bed Bath & Beyond)、ウエストエルム(West Elm)、ウェイフェア(Wayfair)、ニーマンマーカス(Neiman Marcus)、メイシーズ(Macy’s)、エイソス(Asos)、H&M、フォーエバー21(Forever 21)は、画像検索機能を自社のeコマースサイトあるいはモバイルアプリのいずれかに組み込んでおり、「こんなシャンデリアを探している」というようなテキストフィールドでは簡単に対応できない検索クエリに答えている。

ウェイフェアやファーフェッチ(Farfetch)をはじめとする企業数社は、画像検索技術を社内で開発してきた。ファーフェッチは15人からなるコンピュータビジョン担当チームが機能強化に努めており、正確な検索結果を表示させるだけでなく、画像のコンテクストをもとにおすすめの製品を表示させ、ジャケットにはどのようなドレスがマッチするかなどスタイルブック的な役割も付与している。

「コンピュータビジョンには知力の面で大きな課題がある。それは、意味を見出すことだ。しかし、それこそが、消費者のエンゲージメントについて大きな知見が得られる部分だ。そのため、ここに注力する必要がある」と、ファーフェッチのCMO、ジョン・ヴィーチマニス氏は言う。「我々は単に申し分のない検索エンジンを提供するだけではない。インスタグラム(Instagram)やあらゆるインスピレーションを与える画像のコンテキストを分析し、このスタイルになりたいという人がいた場合に、それならこれを買えばよいと教えるのだ」。

ビーチマニス氏によると、ファーフェッチのアプリ上で画像検索を使用する顧客は、ほかの顧客よりもアプリを見て考えている時間が長い。同社は3カ月前にこのツールを利用可能にしてから、検索結果の向上を継続し、個人のレベルにまでパーソナライズされたおすすめ製品を提示できるようにするのだという。それには多くのデータやメタデータが必要だ。

「この技術の利用を開始し、継続して利用していくには技術面で多額のコストが必要だ」と、データエージェンシー、ジャニュアリーデジタル(January Digital)の創業者であるビク・ドラビッキー氏は語る。「我々は、自社で開発しても、他社と提携してでも良いので、リテーラーにいま、準備をはじめるようにいっている。これが従来のテキスト検索という方法を揺るがすことになるからだ。それらのリテーラーには、検索が行われるための基盤となる大規模なプラットフォームを用意してもらうことになるが、いずれはほかのあらゆるリテーラーにも自社プラットフォームが必要になるだろう」。

ピンタレストに注目

このレースはプラットフォーム間でも起こっている。ピンタレスト(Pinterest)は画像検索に進出する最初の大規模プラットフォームになりたいと考えている。

購入可能なピンが、何度も繰り返しピンタレストのフィードを流れている。しかし、最新のバージョンでは、コンピュータビジョンを使用して「これと似ている製品(products like this)」というフィードをピンの下に流している。これらの製品はすべてオンライン上にストックとして表示される。昨年にこのフィードの提供を開始して以来、ピンタレストのリテーラーに対するトラフィックは40%増加した。

「ストックされている製品と画像の橋渡しをする。これは、我々だからこそできると感じている」と、ピンタレストでショッピング製品を統括するティム・ワインガーテン氏はいう。「ピンタレストは、もっとショッピングモードを増やすだろう。強制はしない。しかし、ショッピングをはじめたいと思ったら、簡単にショッピングを開始できるようにしたい」。

現在、ピンタレストの画像検索に製品を表示する方法は、3つの方法がある。1つ目の方法では、リテーラーはピンタレストが製品のピンを作成し、タグ付けをし、そのときどきで購入できるか、その値段はいくらかなどの詳細を追跡できるように、自社のeコマースカタログのキー要素をピンタレストに渡す。2つ目の方法では、リテーラーは自社のライフスタイル画像をアップロードし、自社製品にタグ付けをし、顧客はWebサイト上でピンを目にすると、写真にあるのと同じ製品を購入できる。そして3つ目の方法では、ブランドやリテーラーは、検索結果において宣伝される購入可能な製品のフィードに表示される広告を購入できる、というものだ。

eマーケターによると、ピンタレストは製品の検索結果で宣伝するのに要するコストは公開しないだろうが、いまのところ、ピンタレストはこのツールでマネタイズしはじめた唯一のプラットフォームであるということだ。Googleの類似のスタイルマッチ(Style Match)ツールやAmazonのレンズ(Lens)の検索結果では、まだ製品にスポンサー枠は付いていない。

成長速度は上がっており、マーケターがデュオポリー(GoogleとFacebook)に代わるものを探しているいま、ピンタレストにはついにその時が来たのかもしれない。

「今後、これがマーケティング予算に入ってくるのを実際に見られるだろう」と、ドラビッキー氏は言う。「ピンタレストは秘宝だった。しかし、これまでは皮を破れず、必須のプラットフォームにはなれずにいた。画像検索は、ここで不動の首位を占める絶好のチャンスだ。特にFacebookがつまずき続けていることもあり、顧客はそういったものを探している。Googleも画像検索は得意分野になるだろうが、リテールよりも下位の層を対象とするアプローチをとっている。ピンタレストはその穴から入って、主流のパートナー企業になる」。

ハロー効果

プラットフォームが画像検索を広めようと動いているため、リテーラーは背後で用意をする必要がある。概して、画像検索は、顧客が製品を見つけたとき、特にモバイル上で見つけたときに簡単に購入できるように、eコマースサイトが自社製品の画像をより巧みにカタログ化し、精算ページを分かりやすくする手助けをする。eマーケターのワームサー氏は、今後2年間で画像検索広告と連動した製品がますます増えてくると予測している。

プラットフォームと提携するよりもモチベーションとなるものがある場合もある。ウェイフェアの製品統括者、マット・ジソウ氏は、画像検索やコンピュータビジョン、機械学習の技術を使用しているなかで、エンドツーエンドのデジタル体験を所有する価値を見出している。ウェイフェアはカタログ上に1000万の製品を掲載しているため、画像検索は拡張現実を利用したインテリアデザインツールから、製品検索、在庫切れ商品の交換、個人へのおすすめの提示に至るまであらゆるところでその役目を担う。概して、ウェイフェア上の製品画像は、その一つひとつがコンピュータービジョンアルゴリズムを利用してコーディングされており、検索結果の関連性を高めることによって、ウェブサイトのユーザー体験を向上させている。

ヴィーチマニス氏によると、画像検索は、顧客が関心を持つ製品に関する画像データを早い時点で集めることになるため、ファーフェッチのトレンド予測方法やインベントリーの購入方法に長期的な影響を及ぼすだろうという。

あとは、より多くの人に使用してもらうだけだ。

「画像検索にはファネルの上層から下層までのすべての層で優れたユースケースがある。これによって画像検索は非常に貴重なものとなっている」と、ドラビッキー氏はいう。「いまこそ画像検索に関して力説し、人々の前でこれを披露し、『これこそ探しているものを見つけるもっとも簡単な方法だ』と言える時が来たのだ」。

Hilary Milnes(原文 / 訳:Conyac