「商品受け取り」拠点、新サービスに賭けるリテーラーたち

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小売大手各社が、店舗で商品だけでなくサービスも提供する取り組みを進めている。この取り組みは、新規カスタマーを獲得するための、小規模かつ安価な手法としてトレンドになりつつあるようだ。

一例がウォルマートだ。同社は「ピックアップポイント」と呼ばれる商品受け取りの拠点をイリノイ州とカンザス州で試験的に運用している。ウォルマートは米国のカスタマー向けに商品受け取りサービスを強化しており、ピックアップポイントもそのサービスの一貫となっている。ウォルマートは地方、都市部を問わず全米に幅広く展開しているが、ピックアップのみを行う拠点は都市部のカスタマーをより重視している形だ。小売業界全体で、(主に都市部の)新規カスタマーの獲得とカスタマーエンゲージメントの維持を目的とした新たな手法が盛んになりつつある。この取り組みはリスクが小さいのも強みだ。そして実店舗を展開する小売企業のなかには、これをAmazonに挑むための戦略の一環に位置づけているところもある。

ウォルマートによれば、ピックアップポイントはカスタマーから好評を得られているという。この戦略は、カスタマーがより簡単に買い物を済ませられる環境づくりを目的としている。現在は大半が都市部で展開されており、地方に展開されているのは1箇所のみだ。ウォルマートのグローバルコミュニケーション担当ディレクターを務めるアン・ハットフィールド氏は米DIGIDAYの姉妹サイトのモダン・リテール(Modern Retail)に対し「ピックアップポイントの展開先はニーズに基づいて決めている」とメールで回答している。同氏はウォルマートが今後さらにピックアップポイントを増やす予定かについては明かしていない。

ほかにもスターバックス(Starbucks)がニューヨークでまもなく商品受け取りのための場所をオープンする。これは基本的にモバイルデバイスで注文し、商品を受け取るための場所だ。カスタマーはオンラインでコーヒーを注文してミッドタウンの店舗へ出向き、あらかじめ淹れられたコーヒーを受け取る。多くの店舗を展開しているスターバックスだが都市部ではラッシュアワー時の混雑に悩まされており、この問題を解決するための策として生み出されたのがこの取り組みだ。

スターバックスはAmazonと必ずしも直接的に競合しているわけではない。だが、カスタマーの満足度を高めていくために、新たな実験的サービスを打ち出していく必要があると考えている点では他社と変わらない。調査会社のeマーケター(eMarketer)で主席アナリストを務めるアンドリュー・リップスマン氏は、各社はこういった店舗における新たなフォーマットを足し合わせていくのではないかと語る。「これは小売業における本質を考えれば分かりやすい」と、同氏は指摘する。「運用効率を改善すれば利益は増える。客をより多くさばけるし、売り場もとらなくなる」。

「より大きなトレンドの一貫」

ウォルマートをはじめとする小売大手は、こうした拠点で提供するサービスを増やすことでAmazonに立ち向かおうとしている。Amazonは当日配達や商品受け取り拠点を充実させるための投資を続けている。ウォルマートもまた自社拠点を活用して似たサービスを提供する新たな取り組みに投資している。ムーディーズ(Moody’s)のアナリスト、チャーリー・オシェイ氏は「オンラインで購入して店舗で商品を受け取るという仕組みは、実店舗を展開する小売企業にとって大きな強みになる」と語る。「大半のアメリカ人が商品を当日に受け取れるようになる」。

レジでの待ち時間を嫌がるカスタマーにとって、商品受け取りを専門とする拠点は魅力的だと気づく小売企業は分野を問わず増えつつある。オシェイ氏によれば、こうした企業のあいだでは「カスタマーとの関係性を構築する」ことが切迫した課題となっているという。同氏は具体的には「いかにカスタマーとの関係性を深めるか」、「いかに満足度を高めるか」「いかに新たなカスタマーを獲得するか」といった課題が掲げられていると指摘する。こういった新たなサービス拠点は、とりわけ大都市のカスタマー向けにより迅速なサービスを提供するための土台となるものだ。

それを考えれば、商品受け取りのみを受け付ける店舗やほかの商品販売よりもサービスを重視した店舗形式は「より大きなトレンドの一貫と見て間違いない」とリップスマン氏は語る。スターバックスやウォルマート以外に、ノードストローム(Nordstrom)も「ローカル」というスペースを新たに設けてオンラインで注文した商品の受け取りや仕立てなどのサービスを展開している。「ローカル」は商品受け取りだけを行う場所ではないが、オンラインで注文を行ったユーザーがより素早く用を済ませられるという点が主な価値となっている。

顧客は新しいものを求めている

小売企業のあいだでは、カスタマーが店舗に新しいものを求めているという認識が広がりつつある。リップスマン氏は、実店舗はウィンドウショッピングだけの場所ではなく、「摩擦を減らす」であるとか「サプライズや喜びを提供する」といった要素が求められるようになっていると指摘する。

こういった実験的な取り組みは、小売企業がカスタマーの求める新たなサービスを模索している表れだ。何より重要なのが、必要な敷地をあまり増やさずに、すでに提供しているプログラムを拡張していくことだ。これはいわば「手当たりしだいに物を投げてどれがヒットするかを試している」状態だとオシェイ氏は表現している。「どの企業も巨額の投資を行っているわけではない」

Cale Guthrie Weissman(原文 / 訳:SI Japan)