米国ではロックダウンが緩和されても、オンラインにおける食料雑貨の売上は鈍化する兆しがまだ見えていない。こうした状況を受け、消費財大手のユニリーバ(Unilever)は、メディア予算の使い方を変化させているようだ。
米国ではロックダウンが緩和されても、オンラインにおける食料雑貨の売上は鈍化する兆しがまだ見えていない。こうした状況を受け、消費財大手のユニリーバ(Unilever)は、メディア予算の使い方を変化させているようだ。
実際eコマースは、同社のメディア支出を牽引するようになってきている。こうした広告主の動きに伴い、Amazonやウォルマート(Walmart)は、メディアプランニングの現場で急速に存在感を高めている。
以前まで、ユニリーバのeコマース経由の売上は、総売上高の6%だった。しかし現在は8%に上昇するなど、2020年から同社のeコマース事業は大きく成長している。現に、2020年の上半期、同社のeコマースチャネルの売上高は26億ドル(約2747億円)で、成長率は49%。ちなみに、2019年「通年」のeコマース売上高は37億ドル(約3910億円)だった。
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「こうした傾向は、ロックダウンの緩和である程度鈍化すると見られていたが、パンデミック前の水準に戻りそうにない」と、ユニリーバのeコマース担当 バイスプレジデントを務めるクレア・ヘンナ氏は語る。ユニリーバのeコマース事業は拡大し続け、テクノロジープラットフォームや小売企業、デリバリーアプリなど、さまざまなチャネルを活用し、いまやそれらを網羅しつつある。米DIGIDAYは同氏に、コロナ禍がユニリーバのeコマース成長要因の一部でしかない理由や、現在同社のメディア戦略がにどう変化しているかなどを訊いた。
なお、以下は読みやすさを考慮して、編集を加えている。
──ユニリーバでは、eコマース事業をどのように区分しているのか?
ユニリーバのeコマースは、B2CとB2Bに分かれており、売上は均等に分かれている。そして、それぞれのモデルのなかで、さらに小さな区分がある。B2Cは、オムニチャネルやピュアプレイ(ある製品や領域に特化したビジネスモデル)、加えてD2Cモデルを開発している。一方B2Bは、より小売企業とのB2Bパートナーシップを軸に展開している。また、インドのような一部の市場では、このB2Bモデルをさらに一歩進めて、セラーが自らD2Cプラットフォームを作ることができる、独自のサービスを構築している。
──eコマースを重視することにより、小売企業との関係はどう変化している?
eコマース事業が成熟するにつれ、我々はポートフォリオの管理からコンテンツ制作、キャンペーンの実施といったより多くの場面で、小売企業と協力をはじめている。それぞれの進行度合いはカテゴリによって異なるが、いずれにおいてもパートナーとの協業が進んでいる。たとえば、テスコ(Tesco)とは以前から強固な長期的関係を結んでいたが、eコマース事業の拡大に向けて、今年はさらに緊密な連携を進めている。
──小売企業が広告ビジネスを拡大することは、ユニリーバにとってもチャンスになる?
我々は、メディア戦略の一環としてeコマースの活性化に取り組んでいる。いまやeコマースは我々にとって、メディア戦略における重要なチャネルだ。現に我々は、多くの市場にデジタルハブを設け、オン・オフを問わず、小売企業との協力を通じて、データに基づくマーケティングの機会に照準を合わせている。最近では、小売企業も独自にメディアを所有するなど、eコマースの活性化をめぐりアプローチが多様化している。なかでもよく見られる傾向は、自前でプラットフォームを構築するか、オン・オフ関係なく、購買を促すために広告の活用を重視するかのふたつだ。
──実際、eコマースチャネルへの支出は増やしている?
パンデミックの初期段階では外出が制限されていたため、POS(Point of sale)などにコストをかけるほどの取り組みは必要なかった。しかし、スーパーマーケットのような小売チャネルで買い物をする人はいたので、eコマースの成長を受けてオフライン支出を減らすといったことはしていない。我々は、どこかのチャネルに依存するのではなく、全体を俯瞰した計画を立てることに目を向けている。小売企業によるプラットフォームなどの独自機能の構築は、過去にはなかったメディア投資の機会が増えると考えている。
──ソーシャルコマースを中心に展開しているのか?
SNSやブログを活用するソーシャルコマースは、非常に魅力的な分野だ。東南アジアや中国のソーシャルコマースプラットフォームや、6.18(中国のインターネット通販セールキャンペーン)中のライブストリーミングなどは、大きな盛り上がりを見せている。アリババ(阿里巴巴)のeコマースプラットフォームでは、我々の研究開発チームが、科学的知見に基づいた施策を実施している。たとえば、中国の人々は手の洗いすぎで肌が荒れている傾向がある。そこで我々は、手が荒れないようにするための方法などを伝えるている。これも、コミュニケーションの一環だ。また、欧米圏では、ミックマック(MikMak)のようなテック企業と提携し、当社のソーシャルコマースの手助けをしてもらっている。Snapchatであれ、TikTokであれ、こうしたプラットフォームを利用する人々の体験を損ねるのは好ましくない。そのため、コンテンツのポートフォリオについて考えることに、多くの時間を費やしている。
ソーシャルコマースのなかでも興味深いのは、ライブストリーミングだ。TikTokは、中国発祥でありながら、欧米圏においてこの分野を開拓してきたリーダーだ。しかしどういうことか欧米圏ではいまのところ、小売企業との統合が遅れている。中国や東南アジアでは非常に普及しているのにだ。
──最近、洗浄剤ブランド用にオンラインストアを開設したようだが、多くの人はそうした商品を小売店舗で購入する可能性が高い。にも関わらずストアを開設した理由は?
選択に尽きる。ロックダウンの初期には、人々は、普段訪れる店では手に入らないことがある、ホームケア製品などをオンラインで求めた。こうした新しい需要にこそ、D2Cビジネスのチャンスがある。実際、一部のプレステージブランドはD2Cで大きな成長遂げた。とはいえ、こうした取り組みが我々のポートフォリオ全体に影響するかは、まだしばらくわからない。だからこそ、できるときに実験を続けることが大切だ。我々の今後は、D2C製品でどのような価値提案を行うか、そしてそれを支える販売モデルにかかっている。
SEB JOSEPH(翻訳:矢倉美登里/ガリレオ、編集:村上莞)