「全員が死ぬほど恐れている」:プライベートブランド 戦略、加速させるリテーラーたち

ターゲット(Target)などの企業は昨今、プライベートレーベルの商品ラインナップを増やすことで実店舗の売り上げを伸ばしている。そのほかの大規模なリテーラーもその成功に刺激を受け、広範囲の商品カテゴリでさまざまなプライベートレーベルを立ち上げ、市場への攻勢を加速させている。

だが、店舗での売り上げが減少しているリテーラーにとって、こうした自らを切り売りするようなやり方や、プライベートレーベルが解決策になるかどうかについては、まだ疑問が残る。

ディックス・スポーティング・グッズ(DICK’S Sporting Goods)やコールズ(Kohl’s)はともに、直近の収支報告の場で、2019年は新たにプライベートレーベルを追加・拡大する計画があると発表した。ベッドバス&ビヨンド(Bed Bath & Beyond)も、同社初となるプライベートレーベルを2019年3月に立ち上げたが、この先2年間でさらに6つのラインナップを追加する予定だという。バンクオブアメリカ・メリルリンチ(Bank of America Merrill Lynch)が2019年3月に開催したコンシューマーリテール&テクノロジーカンファレンス(Consumer Retail & Technology conference)で、ウォルマート(Walmart)CFOのブレット・ビッグス氏は、日用品分野でのプライベートレーベルは、おそらくアメリカ全体で、彼の想像をはるかに超えて浸透したと語っている。

ターゲットやウォルマートのようなリテーラーが最初にプライベートレーベルを導入したのは、日用品や、紙タオルや掃除用品などの低価格帯の家庭用品の分野だった。だが、現在のプライベートレーベルのブランドには、女性用下着、水着、家具や室内装飾品、電化製品などハイエンド商品も存在し、業界全体で広く展開されるようになった。さらにウォルマートは、Appleの商品と競合するタブレット製品を開発中だということを明らかにした。このことからもリテーラーは、これまでは長らく数社が独占してきた分野でも、プライベートレーベルの商品を投入することに対して強い関心を示していることがわかる。

万能薬ではない

ほとんどのリテーラーにとって、プライベートレーベルの商品にさらに多くの販売面積を割り当てることは、良いことの方が多いだろうと、アナリストたちは語っている。消費者も、さまざまなカテゴリでプライベートレーベルの商品を購入することに受容的だ。さらに、特定のカテゴリで一定のレベル以上の飽和状態に達するリスクの兆候も、少なくともこの先数年は見られることはないだろう。だが、プライベートレーベルの戦略は、リテーラーが抱える問題の万能薬だというわけではない。こうしたプライベートレーベルのブランドの多くはまだ立ち上がって間もないため、たとえばウォルマートが、ヘッドフォンの分野と同じように、タブレット端末でも成功できるかどうかについては、即座に確信を持つことはできないだろう。

「2018年にプライベートレーベル(の動き)が多かったのは間違いない」と、ジェーン・ハリ&アソシエイツ(Jane Hali and Associates)でリテイルリサーチアナリストを務めるジェシカ・ラミレス氏は語る。「だが、プライベートレーベルの立ち上げで素晴らしい仕事をする人もいる一方で、的確なやり方で推し進めなかったために、それがビジネスにとして何も役に立たなかったという例もある」。

ラミレス氏によると、市場の隙間を埋めることができないようなプライベートレーベルを数多く作りすぎてしまうことは、リテーラーにとってリスクとなるという。彼女は、ブライベートレーベルでまだ成功できていない例として、JCペニー(JC Penny)やメーシーズ(Macy’s)のふたつのリテーラーを挙げた。「商品が良くない。しかも、必ずしも消費者の問題を解決していない」。

ターゲットやコールズなどのリテーラーは、ブライベートレーベルの商品で常に意義のある商品群を取り揃えてきた。それらの商品は、かつては低コストで提供できていたものだが、現在はより高い利益をもたらすことができている。だが、彼らはさらに、より広いカテゴリの商品で、ブライベートレーベルの商品ラインナップを揃えようとしている。

差別化が狙い

「プライベートレーベルの成長を歴史とともに見てみると、昨今の状況は少し独特だ。これまでは経済危機と深い関係があった」と、業界誌『マイプライベート・ブランド(My Private Brand)』のプレジデント、クリストファー・ダーハム氏は語る。「2009年の経済状況は悪かったが、そのときにプライベートレーベルは成長を見せた」。だが、彼によると、アメリカでの賃金は上昇傾向、失業率も減っている現在でも、プライベートレーベルの商品を次々に追加することに対して、リテーラーの大きな関心があるのは明らかだ。これは、単に必要性から生まれた戦略ではないということを示している。

ダーハム氏によると、プライベートレーベルの商品の流行は、TJIリサーチ(TJI Research)調べで現在559の自身独自のプライベートレーベルのラインを持つ、Amazonが火付け役だったという。Amazonのせいでリテーラー間の差別化がますます困難になり、消費者が同じナショナルブランドをどこでも購入できる選択肢はより広くなった。

つまり、かつてはナイキ(Nike)やアンダーアーマー(Under Armour)などの卸売パートナーに強く依存してきたディックのようなリテーラーは、現在は消費者がほかのどこでも見つけることのできないような、自身のプライベートレーベルの商品ラインナップを拡充し、それを目当てに消費者が店舗に足を運んでもらえるように力を入れている。

「結局のところ、彼らはAmazonに殺されてしまうのではないかと、死ぬほど恐れている。そして消費者に対しては、彼らから直接、または通りを挟んだ反対側の店舗で買い物をする動機を与えようとしている」と、ダーハム氏は語る。

ターゲットが模範例

いかに素早く、新しいブライベートレーベルのブランドを立ち上げて成功に導くか、という点では、特にここ数年間はターゲットが模範例のようになっている。ターゲットは、これまでは自身の独自のアパレルブランドの商品ラインナップと、日用品のプライベートレーベルのブランドで知られていたが、昨今は電化製品、ベビー用品、そして最近の例では女性用下着のブランドなど、2年間で20ものプライベートレーベルのブランドを立ち上げた。

そして、こうしたプライベートレーベルのブランドの背景に、ターゲットの直近の四半期における実店舗へのトラフィックが4.5%増加していることがある。2019年3月初頭の投資家集会で、ターゲットCEOのブライアン・コーネル氏は、「我々の店舗の訪問客に対して素晴らしいスタイルと品質を提供できるように、独自性の視点から我々自身のブランドを展開していくという、大きな決断をした」と語った。

eコマースのアナリティクスプラットフォームのプロフィテロ(Profitero)で戦略とインサイト部門のSVPを務めるキース・アンダーソン氏も、瀕死寸前だと見られていた従来店舗型の経営から脱却しつつあるベストバイ(Best Buy)が、近年リテーラーとしてプライベートレーベルの商品で業績を伸ばしていることを指摘している。

「ブランドの立ち上げに際して、彼らはただ単に利ざやを犠牲にするだけでなく、ブランド価値の面やカテゴリの成長促進、そして商品カテゴリで意義のある選択肢を提供することをしっかりと念頭に置いてように感じる」と、アンダーソン氏は語る。

動きが活発な分野

ほかの分野と比べてもブライベートレーベルの動きが活発な分野がいくつかある。2018年にNPDグループ(NPD Group)が収集したPOSデータによると、アパレルと家庭用品のふたつのカテゴリで、プライベートレーベルに移行する消費者の数が過去最多だったという。また、ブライベートレーベルの商品の売り上げも、アパレル分野で全体の3分の1、家庭用品で20%を占めるようになってきた。さらにアンダーソン氏は、ビタミン剤や健康サプリの分野でプライベートレーベルの動きが盛んになっていると指摘する。一方、ラミレス氏は女性用下着の分野で、ヴィクトリアズ・シークレット(Victoria’s Secret)の業績が悪化していると指摘する。ターゲットもAmazonも、最近になって自身のプライベートレーベルの商品ラインナップを追加している。

ラミレス氏によると、プライベートレーベルのブランドはどこもまだ新しいため、そのほかのリテーラーも自身のプライベートレーベルの商品で参入できる余地がまだあり、飽和状態になってしまうことがあるとしても、あと数年はかかる算段だという。

だが、ブライベートレーベルの戦略で商品ラインナップの差別化を図るだけでは、売り上げの減少を食い止める策としては十分とはいえないこともあるだろう。たとえばベッドバス&ビヨンドではプライベートブランド戦略を推し進めているが、ここ半年の店舗売り上げは、アナリストの予測以上に減少している。

トレンドとなる理由

アンダーソン氏によると、消費者はプライベートブランドの商品を購入することには受容的だが、それはその商品にほかにない価値を見出したときに限っての話だという。そしてこれは、リテーラーがときに忘れてしまいがちなポイントだ。

「業績が伸び悩んでいたり、マージンの確保が切迫しているような場合、プライベートレーベルは、既存の需要からさらに多くのマージンを引き出す手段になり得る。我々がいま目にしているものの多くは、そのような意図があるのではないかと思う。私は、これが大規模なリテーラーにとって、多くの買い物客の心理や気持ちの中心に居続けるための戦略だとは見ていない」と、アンダーソン氏は語った。

Anna Hensel(原文 / 訳:Conyac