リテール界は現在、勝ち組と負け組の差が歴然となった。各社の第2四半期報告書で明らかになったとおり、好調を極めているのは、当然ながら、大半の事業のオンライン化を確実に進めていた企業だ。一方、新型コロナ禍以前から苦しんでいたブランド勢は、さらなる向かい風を受け、これまでにも増して喘いでいる。
リテール界は現在、各社のデジタル投資によって明暗分かれるという新たな様相を呈しており、勝ち組と負け組の差が歴然となった。
各社の第2四半期報告書で明らかになったとおり、好調を極めているのは、当然ながら、大半の事業のオンライン化を確実に進めていた企業だ。一方、新型コロナ禍以前から苦しんでいたブランド勢は、さらなる向かい風を受け、これまでにも増して喘いでいる。
競争の熾烈なリテール業界がこの数カ月でどう変わったのか? この先何カ月、いや何年続くかもしれないこの状況に対し、準備万端に整えている企業はどこなのか? 以下がその概要だ。
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Winner / 勝ち組
eコマース勢は総じて、依然、最強の勝ち組だ。デジタルフルフィルメントへの投資に積極的だったすべての企業が、この3カ月間で多大な利益を上げている。
なかでも、米最大のeコマースプラットフォームであるAmazonは、同社史上屈指の急成長を遂げた。売上は前年同期比40%増を記録し(第1四半期の26%増をさらに上回った)、利益は520億ドル(約5.4兆円)に達した。この急激な伸張により、一株当たり当期純利益(EPS)は、1.5ドル(約158円)の予測に対し、10.3ドル(約1085円)まで跳ね上がった。「Amazonの莫大な伸びは、まさに未曾有だ」と、市場調査会社イーマーケター(eMarketer)の主席アナリスト、アンドルー・リップスマン氏はいう。ほかにも主なトピックを箇条書きにする。
- 著しい伸張を見せているプラットフォームは、無論、Amazonだけではない。たとえば、イーベイ(eBay)は前年比18%の収益増を計上した。
- ウォルマート(Walmart)もeコマースの売上97%増、実店舗の売上9.3%増を記録した。また、それをさらに上回る成長を見せたところもある。ターゲット(Target)の売上は24.3%増で、カーブサイドピックアップの利用は実に700%以上の伸びを記録した。ベストバイ(Best Buy)もオンライン売上が242%の伸びを見せ、実店舗売上も5.8%増に達した。
- たとえば、在宅フィットネスは世間を席巻しており、その結果、多くの企業が多大な利益を手にした。在宅フィットネス事業を展開する米企業ペロトン(Peloton)の売上は前年比172%増を記録。一方、ヨガやトレーニング向けのスポーツウェアブランド、ルルレモン(Lululemon)――以前は実店舗での売上に依存していた――は、全体としては2%増だが、オンライン売上は157%の伸びを見せた。
Loser / 負け組
一方、昔ながらの画一的な企業は苦しんでおり、なかでも百貨店の状況は逼迫している。
- メイシーズ(Macy’s)は、前年の同期純利益が8600万ドル(約90億円)だったのに対し、今期は4.31億ドル(約454億円)の純損益を計上した。また、チャプターイレブン(米連邦破産法11条)の適用を申請後、身売りに向けて動いている老舗JCペニー(JCPenney)は、44%の売上減により、純損益が3.98億ドル(約419億円)に達した。ノードストローム(Nordstrom)は、米百貨店のなかではeコマースに積極的とされているが、それでも収益は前年同期比で54.1%減の18億ドル(約1896億円)だった。
The fundamentalsr / 基礎的事項
こうした結果は必ずしも驚くにはあたらないが、これらリテーラー勢の成長/凋落のスピードには厳然たるものがある。勝ち組の多く――とりわけ大規模小売店――はオンラインフルフィルメント体制をしっかりと整えていた企業だ。
「最大のテーマ推進力となったのは、D2Cビジネスをどう進化させたのか」と、「クリック&コレクトをどれだけ強靱にできているか、その2点だ」と、リップスマン氏は指摘する。
D2Cへのフォーカスは、実店舗での卸売に依存していたブランドにとっては、とくに重要だった。たとえばナイキ(Nike)などは、オンラインプレゼンスの拡大に、なおいっそう注力している。ルルレモンも、前年同期は総売上の24.6%だったD2C販売が、今期は61.4%まで増加した。一方、自社eコマースチャンネルの拡大に苦戦しているアンダーアーマー(Under Armour)は13%の収益減を計上した。
D2Cへの移行はまた、ただでさえ青息吐息だった百貨店の気勢をさらに殺いでいる。「Bクラスの百貨店は、卸売に関していえば、まさにギリギリの状態だ」と、リテールアナリストのレベッカ・コンドラット氏は8月に米DIGIDAYの兄弟サイトであるモダンリテール(Modern Retail)に語っている。
過去3カ月におけるリテーラー各社の成績は、新型コロナウィルスがもたらした変化がなおいっそう常態化しつつあることを明確に示している。第1四半期の結果は、新型コロナの影響が業界全体に及ぶ可能性を示唆していたが、第2四半期の結果には、企業がそれに十分に対応できているか否かが明確に現れている。多くのブランドは3月に発生した大変動に晒された。需要の急騰を経験したところがある一方、閉店に追い込まれたところもあった。
その原因のひとつが、スペンドシフト(消費行動の変化)だ。より多くの消費者が生活必需品や自宅で快適に過ごすための商品を求め、華美なアパレル製品やアクセサリーを買い控えた。こうした生活費の再配分が、ノードストロームなど、より現代的な収益ルートの構築を目指したいくつかのリテーラーにとっては、とりわけ大きな打撃となったと、リテールアナリストのスティーヴ・デニス氏は指摘する。「この手の消費の原動力は、ある種のリテーラーにきわめて優位に働くことになる」。
この状況は基本的に、今後少なくとも数カ月間は続くと予想される。デジタルに素早く切り替えられた企業は――ホリデーシーズン中は特に――その体制を維持していくだろう。一方、需要が激減し、閉店を余儀なくされている企業は、この先も苦しい戦いを強いられると思われる。
これらの結果は、リテール業界に大々的な整理統合が起きうる可能性を示唆していると、デニス氏は指摘する。「勝者と敗者の差がなおいっそう顕著になる」が、それは閉店や倒産が増えた結果、消費者は自然と残された数少ない選択肢を採ることになるからだという。また、それだけでなく「買収による整理統合も起き」、強者はさらに力を増し、強力なバランスシートを武器に喘ぐ弱者をすくい取っていくことが考えられると、氏はいう。
これらの企業の多くは「すでに変曲点を迎えつつあった」のであり、第2四半期の結果は単に「それを加速化させた」に過ぎないと、リップスマン氏は指摘する。
[原文:Retail winners and losers emerge from second quarter earnings]
Cale Guthrie Weissman(翻訳:SI Japan、編集:長田真)