リセールプラットフォームとマーケットプレイスは、機械学習と人工知能のおかげで偽造品の取り締まりを強化している。
Amazonが発表した第3回年次ブランド保護報告書(Brand Protection Report)によれば、同社は昨年、600万品の偽造商品を処分した。一方でStockX(ストックエックス)は、3000万ドル(約43億2000万円)近い偽造スニーカーが同社のプラットフォームで販売されることを阻止した。ザ・リアルリアル(The Real Real)は2011年の創設以来、20万品点の偽造品を市場から締め出した。
偽造品はインターネットよりもはるか以前から存在していた。しかし、リセールプラットフォームでは、毎日数百、数千の商品が取引されるため、すべての偽造品を見落とさないようにするのは困難だ。訓練を積んだ従業員がこれらのプラットフォームの認証・確認プロセスを監督する一方、機械学習は人間の目に留まらないようなレベルの不整合を見つけることができる。リセールプラットフォームは、何回も機械学習を採用し、本物の商品と偽造品とを区別するためのパターンや特徴を認識できるよう、自社の認証アルゴリズムをトレーニングしてきた。これには、ロゴの配置や商標などについて商品を分析し、それらの不整合にフラグを立てることが含まれる。
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リセールプラットフォームとマーケットプレイスは、機械学習と人工知能のおかげで偽造品の取り締まりを強化している。
Amazonが発表した第3回年次ブランド保護報告書(Brand Protection Report)によれば、同社は昨年、600万品の偽造商品を処分した。一方でStockX(ストックエックス)は、3000万ドル(約43億2000万円)近い偽造スニーカーが同社のプラットフォームで販売されることを阻止した。ザ・リアルリアル(The Real Real)は2011年の創設以来、20万品点の偽造品を市場から締め出した。
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偽造品はインターネットよりもはるか以前から存在していた。しかし、リセールプラットフォームでは、毎日数百、数千の商品が取引されるため、すべての偽造品を見落とさないようにするのは困難だ。訓練を積んだ従業員がこれらのプラットフォームの認証・確認プロセスを監督する一方、機械学習は人間の目に留まらないようなレベルの不整合を見つけることができる。リセールプラットフォームは、何回も機械学習を採用し、本物の商品と偽造品とを区別するためのパターンや特徴を認識できるよう、自社の認証アルゴリズムをトレーニングしてきた。これには、ロゴの配置や商標などについて商品を分析し、それらの不整合にフラグを立てることが含まれる。
偽造品検出のためのテクノロジー活用
ザ・リアルリアルはラグジュアリーの委託販売に特化しており、画像のレタッチや商品コピーを作成するため、2018年から機械学習を使用してきた。しかしこの数年間で、同社は偽造品をより的確に見つけるための新たなツールを開発した。同社は3年ほど前、「シールド(Shield)」というシステムを開発した。このシステムは、委託者についての情報を収集し、その委託者がこれまでに偽造品を販売したことがあるかどうかを通知する。しかし、このシステムは実際の商品には注目しない。この点を改善するため、同社は1年半ほど前、新たに「ビジョン(Vision)」という別のシステムを開発した。このシステムはカメラテクノロジーを使用して、確認プロセスを支援する。同社は現在、これら2つを組み合わせたシステムに取り組んでいる。
ザ・リアルリアルで機械学習担当バイスプレジデントを務めるクリストファー・ブロスマン氏は、機械学習は最終的に「判断をサポートする」ものだと、米モダンリテールに語った。「信頼できる認証を行うには多くの作業が必要だが、このテクノロジーを使用することで、その作業を少しだけ迅速化できる」と、同氏は説明する。ザ・リアルリアルの標準を満たさない商品は送付元に返却される。この返却には3ストライクポリシーが適用されている。同社が「明確な詐欺の意図」を検出した場合、同社はその商品を差し押さえ、法執行機関に引き渡す。
StockXは新品状態の商品のみを受け付け、認証担当者が20〜50のタッチポイントに基づいて商品を評価する。これには、パッケージのチェックから、商品のサイズと色が正しいかどうかのチェックまで、あらゆる項目が含まれている。また、チップやIDなど、製造元がハンドバッグや靴自体に組み込んだテクノロジーも判断基準となる。「偽造商品はなんとなく異なった点があり、それによって偽物だと判定できる」と、同社のブランド保護責任者を務めるポール・フォーリー氏は米モダンリテールに語った。
同社が見つけた偽造品の多くは、別の場所で商品を購入し、偽造品だとは知らなかった人々によるものだと、フォーリー氏は説明する。その場合、同社は商品を送付元に返却する。
StockXは、この12カ月でメキシコシティ、東京、ベルリンに3つの新しい認証センターを設置した。同社は現在、認証担当者に役立つほかのテクノロジーを探求するため、デトロイトにイノベーションラボ(Innovation Lab)を建設中だと、フォーリー氏は述べている。
同氏は次のように説明する。「当社はいまだ、さまざまなテクノロジーを調べてそれぞれを比較検討している段階だ。『それぞれのテクノロジーの価値はあるのか、スケーリングする可能性があるか』といったことを検討する必要がある。そこで当社は、ほかの業界で使用されているが、その商品の属する垂直市場では使用されていないかもしれない、ほかのテクノロジーを調べるため、イノベーションラボを設立している」。
一方でeBayは、ソリューションプロバイダーの3PMシールド(3PM Shield)を2月に買収し、偽造商品の販売を防止するための追加テクノロジーを利用できるようになった。
「eBayは、人、ポリシー、テクノロジーの強固な組み合わせにより、買い手と売り手の両方を保護する包括的なアプローチをとっている」と、スポークスパーソンのひとりはメールで米モダンリテールに語った。「当社には、人工知能テクノロジーにより支えられたツールもあり、2022年には、偽造の疑いがある8800万点の商品が出品されることを事前に防止したほか、eBayの調査担当者による審査の後、130万点を事前に削除した」。
機械学習の課題
偽造品の摘発は、リセールマーケットプレイスで、特に中古品購入への関心が高まっていることからも、大きな問題となってきている。これはラグジュアリー市場において特に顕著で、ザ・リアルリアルは第1四半期にアクティブな買い手の数が前年比で22%も増加した。さらに、eBayなど一部のマーケットプレイスは何年も前から存在するものの、新たに多くの競合他社が参入してきており、買い物客はほかのマーケットプレイスで買い物をするようになっている。たとえばeBayは昨年、アクティブなユーザー数が前年比で減少した。各プラットフォームは大急ぎで売上を増やそうとしており、その多くは商品が最良のものであると証明するために機械学習に頼っている。
しかし、機械学習にはこのように多くの利点があるものの、いくつかの課題も存在する。機械学習の獲得や構築には多くの費用が必要で、システムの性能は「与えられたデータによって大きく変化する」と、ガートナー(Gartner)のディレクターアナリストを務めるカッシ・ソチャ氏は米モダンリテールに語った。
多くの企業は何年分もの認証データを保有しているため、それらを活用できるが、ゼロからはじめるプラットフォームはアルゴリズムをトレーニングさせるためにさまざまな本物と偽造の商品を入手する必要がある。ザ・リアルリアルのブロスマン氏も、これらのツールをプログラムすることには、特別なレベルの専門技術が必要だという。「偽造品を検出したりする際には、その分野の専門家に近い技能が必要だ」と同氏は述べている。
さらに、ほかのテクノロジーと同様、機械学習もエラーがないわけではないとソチャ氏は述べる。「いうまでもなく、AIによる機械学習の出力が常に予測できるわけではないため、モデルの学習に応じて出力は変化する可能性がある。いい換えれば、本当の意味でブラックボックスのアルゴリズムだ。そのため、正しくないデータで学習したり、データが足りていない場合、偽造品を検出する能力が損なわれる。その点は、プラットフォームが直面する大きなリスクや課題だといえる」と同氏は説明している。
プラットフォームやブランドをまたいだ連携体制
また、偽造者がこのような機械学習を利用して先手を打ち、さらに巧妙な偽造品を製造するリスクもあるとソチャ氏は指摘する。そのため、アパレル、フットウェア、アクセサリー業界にとって、この「二次的な影響」を防止するのに役立つデジタルIDに投資することは、特に重要だと同氏は述べた。
いくつかの企業はすでにこれを行っている。たとえばマルベリー(Mulberry)は、革製品にデジタルIDを組み入れており、プラダ(Prada)はNFC(近距離無線通信)とRFID(無線周波数認識)ツールを導入している。LVMHやカルティエ(Cartier)など数社のラグジュアリー小売業者は、商品の真正性を保証するための認定業務を行うオーラ・ブロックチェーン・コンソーシアム(Aura Blockchain Consortium)という組織を設立するために提携した。
同様に、StockXのフォーリー氏も、さまざまなプラットフォームやブランドに対して、偽造品を防止するための協力を呼びかけている。
「各社には良いデータが数多くあり、我々にもある。共同で偽造品を取り締まるのは有意義だと思う。それによって事態を大きく好転させることが可能だろう」と、同氏は述べている。
[原文:Resale platforms are employing machine learning to fight the war against counterfeits]
Julia Waldow(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)