米・洋服レンタル が目指す、クラウド型クローゼット とは? : ホテルとの提携で「旅行」分野にも

店舗や家庭、そして職場向けの高級ブランドやデザイナー服のレンタルサービスサービスで成功を収めているレント・ザ・ランウェイ(Rent the Runway)が、ホテル向けのサービス提供を開始した。

同社は12月5日から、米国内の4拠点でWホテル(W Hotels)と提携することを発表した。これによりホテルを予約しているカスタマーはレント・ザ・ランウェイで最大4点の衣服を注文できる。そしてカスタマーがホテルの部屋に到着すると、クローゼットに予約していた服がかかっているというサービスだ。レント・ザ・ランウェイのCOOを務めるモーリーン・サリバン氏は、このサービスについて同社が家庭と職場に次いで取り組むべき分野としている。同社はカスタマーの人生におけるすべての場面で少しずつ関わっていくという大局的な戦略を立てており、この提携もその戦略の一環だという。

同社は増大する需要への対応に苦慮してはいるが、ライバルと大きな差をつけている。2019年に同社は時価総額10億ドル(約1088億円)と年間売上1億ドル(約109億円)を達成したと報じられている。ライバルのヌーリー(Nuuly)の年間売上は5000万ドル(約54億円)、ルトート(Le Tote)は500万ドル(約5億4000万円)に過ぎない。

「当社の構想は、『クラウド型クローゼット』であり、『必要なときに使えるクローゼット』だ」と、サリバン氏は語る。「それが当社のビジョンだ。『旅行』は当社が明らかに進出すべき分野だった。いつも着ている黒やベージュの服とは異なる、特別な機会だからこそ着たい服というニーズがあるからだ」。

新分野での取り組み内容

実現のためのプロセスは極めてシンプルだ。カスタマーがアスペン、サウスビーチ、ウェストハリウッド、ワシントンに展開しているWホテルの部屋を予約すると、ホテルのウェブサイトでレント・ザ・ランウェイのオプションが表示される。このオプションは、レント・ザ・ランウェイの提供する「アンリミテッド・クローゼット(Unlimited Closet)」のラインナップから4点の服を69ドル(約7500円)でレンタルできるサービスとなっている。カスタマーがホテルに着くと、ホテルの部屋のクローゼットに予約した服が用意されているという仕組みだ。そして旅行を終えたら、服はクローゼットに置いておくだけで自動返却される。

実際はレント・ザ・ランウェイのラインナップであればどの商品でも選べるのだが、サリバン氏は実際に服を提案したほうがカスタマーの反応は良いと明かす。4軒のホテルでは、それぞれの地域に合わせた服を提案しているという。たとえばサウスビーチではビーチカバーアップや夏服を取り揃えている一方で、アスペンではレント・ザ・ランウェイが12月2日にリリースしたスキーウェアも用意している。

「バックエンドは、通常業務とほとんど同じだ。カスタマーが選んだ商品を届けるというプロセスに違いはない」とサリバン氏は語る。「一方、当店以外に届けたり、カスタマーに直接届けたりといった点ではこれまでにない試みとなっている。自社以外に商品を発送したり、提携企業に商品を任せたりといった面でも初の試みだ」。

サリバン氏はWホテルと同社の提携内容の詳細は明かしていないが、現在は4軒のみの展開となっている今回の提携も、反応次第ではさらに多くのホテルでサービス提供することも検討中だという。

レンタル分野の競争の歴史

レント・ザ・ランウェイの創業は2009年にさかのぼるが、当時と比べてレンタル分野の競争は非常に激しくなっている。ヌーリーやソフトウェアを活用した衣服レンタルプラットフォームのカースル(Caastle)など、レンタルの場所により柔軟性をもたせたライバル企業も登場した。いずれの企業も似たような商品を展開しているなかで、カスタマーサービスと利便性が差別化の大きな要素となっている

レント・ザ・ランウェイは決して順風満帆だったわけではない。今年はじめにはバックエンドの物流に問題が発生したため新規会員の登録を停止したほか、アナリストらはとりわけ旅行分野におけるライバル企業の台頭を指摘している。

マーケティングエージェンシーのミュートシックス(MuteSix)のCEOを務めるスティーブ・ワイス氏は、「たとえばファッションパス(FashionPass)は、カスタマーサービスやニッチ市場へのターゲティングで突出した存在だと思う」と語る。ファッションパスは高級ブランドを多く取り揃えるレント・ザ・ランウェイより多少低い価格帯ながら、ファストファッションよりも高価なブランドを取り揃えている。「レント・ザ・ランウェイは高めの年齢層をターゲットとしているが、ファッションパスは休暇やブランチ、インスタ映えといった目的で利用するミレニアル世代に狙いを絞っている」。

レンタル業界では、旅行分野との相性の良さに着目して以前から展開を進めてきた企業も多い。4月にはファッション小売企業のワードローブ(Wardrobe)がニューヨークのザグレゴリーホテル(The Gregory Hotel)と提携して同様のサービス提供を開始している。こちらもカスタマーがあらかじめ服を予約し、クローゼットで受け取り、クローゼットに置いて返却する仕組みとなっている。

2030年に向けたビジョン

「実用性や、習慣に関連する企業であれば当社にとって良いパートナーとなる可能性がある」と、サリバン氏は語る。「仕事は強制的に習慣づけられているものだし、旅行もカスタマーが好んで行う習慣だ。ほかにもスポーツクラブを日常的に利用する人は多く、相性が良いと思う。いつもこれからカスタマーがどこに出かけるようになるかを考えている。2030年頃になっても、旅行にスーツケースは必須のままなのだろうか? 当社のビジョンは常に中身が入れ替わり、どこからでも利用できる『生きるクローゼット』だ」。

DANNY PARISI(原文 / 訳:SI Japan)