レッドブル、インディー系「ネットラジオ」でブランド構築

レッドブル(Red Bull)は、エクストリームスポーツに頻繁に投資している。だが、メニー・アメリ氏に言わせれば、同社が行っているのはカルチャーやコミュニティーへの投資だ。アメリ氏はスケートボーダーでもなければ、クリフダイバーでもなく、レッドブルミュージックアカデミー(Red Bull Music Academy)、およびレッドブルラジオ(Red Bull Radio)の共同創業者だ。

2005年に発足したレッドブルラジオは、アカデミーの延長であり、当初の目的はアカデミーの卒業生に活動の場を提供することだった。2014年、同ラジオは24時間放送のオンラインラジオ局として再スタートを切った。Apple Music(アップルミュージック)、Spotify(スポティファイ)、サウンドクラウド(SoundCloud)といった各種サービスで、あらゆるタイプの音楽をいつでも聴けるこの時代にあって、レッドブルラジオはいまも数十本の番組をストリーミング放送している。

レッドブルのミッション

レッドブルラジオに広告はなく、親会社の収入源にはなっていない。世界最大のエナジードリンクブランドにとって、このラジオはマーケティング手段のひとつなのだ。最近では、こういったマーケティングの重要性が増している。ライバルのモンスター(Monster)が米国市場で首位を奪取し、海外でもシェアを伸ばしていることを、非公開企業アナリストは指摘する。

「我々のミッションは一貫して、人々にこれまで聴いたことのない音楽に関心を向けさせることだ。音楽そのものや、人々が瞬時に満足を得られる手段は有り余っている。我々は、信頼のおけるソースとして、人々が自分でも探し求めていると知らなかった音楽に出会える場を提供しようと努力してきた」と、アメリ氏はいう。

レッドブルラジオは、ウェブでも、iOS用とアンドロイド用の専用アプリでも、ネットラジオのチューンイン(TuneIn)、アイハートラジオ(iHeartRadio)でも聴くことができる。アプトピア(Apptopia)によれば、月間アクティブユーザーは2万人、ダウンロード総数は30万回にのぼる。アメリ氏自身からは、聴取データについてのコメントは得られなかった。

人々の発見の手助け

ライバル局とは異なり、レッドブルラジオはインディーアーティストに特化している。ただし、ファイヤーサイドチャット(Fireside Chat)という番組でもっとも聴取数が多かったのは、ケンドリック・ラマーをフィーチャーした回で、以下トニー・アレン、ワンオートリックス・ポイント・ネバーと続く。ヘッドホンハイライト(Headphone Highlights)という別番組では、プリンセス・ノキア、マッドリブ、ケイトリン・オーレリア・スミスといったアーティストが人気だ。発足当初は4番組だったが、いまでは72番組を抱える。

番組には「共通目標があり、アーティスト自身の主張を中心に据えている。我々はこうした方針にそって、リスナーがトピックに引き込まれるような、そこからなにかを学べるような番組づくりを心がけている」と、アメリ氏はいう。

ロンドンで開催されたレッドブルラジオのイベント「オデッセイ」でプレイするDJのカイリスト(Kyrist)

ロンドンで開催されたレッドブルラジオのイベント「オデッセイ」でプレイするDJのカイリスト(Kyrist)

アメリ氏の考えでは、レッドブルラジオは必ずしもSpotifyなどの音楽ストリーミングサービスと競合するものではない。彼は自身のチャンネルを、昔ながらの実体験にたとえる。友達があるアーティストのレコードを見せびらかして絶賛するので、気になってレコードストアに行ってみる、そんな体験だ。

「我々は、世にあるストリーミングサービスとは競合せず、人々の発見の手助けをする立ち位置にある。我々の番組でアーティストや曲を知ったリスナーが、そのあとSpotifyで検索してくれればいい」と、アメリ氏はいう。「我々は音楽やチケットを売りたいわけではない。人々に音楽のことを話題にしてほしいのだ」。

カルチャーへの影響を測定

24時間放送のオンラインラジオ局の運営費は決して安くない。また、レッドブルは年間10回以上の音楽フェスティバルも主催している。今年の9月から10月にかけては、ベルリンで5週間にわたる音楽フェスティバルを開催する予定だ。

レッドブルの音楽への投資は、「翼を授ける」という同社のスローガンとも呼応すると、アメリ氏はいう。

「翼を授けるというのは、『君にはイカれたアイディアがあるんだね、僕は大金持ちだからいくらでも出資するよ』という意味ではない。人々にインスピレーションを与え、アーティストに音楽的ビジョンを表現する場を与え、人々に知ってもらうことだ。これらが補完しあって完成する」と、アメリ氏は話す。

翼はいいとして、投資利益率はどうなのか? アメリ氏は、レッドブルラジオは従来のマーケティング手段ではないという。むしろ、カルチャーへの影響を測定しようという試みだ。レッドブルラジオ限定でニューアルバムやイベントを発表するアーティストの存在がその指標となる。これが不確実な帰属モデルであることは、彼らも認める。

「我々が築いたシステムは生きものであり、人々が下す、自分が何をしたいかという判断の集合体だ。我々は、ただ座視してどの人気トピックを扱おうなどとは考えない。アーティストの側から我々に近づいてきてくれるはずだ」と、アメリ氏は語った。

Kerry Flynn (原文 / 訳:ガリレオ)