エアバスは、2016年初頭に約40万フォロワーだったインスタグラムのオーディエンスを、たった1年で2倍以上となる89万6000フォロワーまで増やした。この成長について、ソーシャルメディア担当マネージャー、アンソニー・ロセンド氏は「この役職に就いた私は、足元に金鉱が眠っていることに気づいた」と語る。
インスタグラムでウケるコンテンツといえば、まっさきに思いつくもののひとつが旅行だろう。では、旅行に利用する飛行機そのものは? …あまり需要はなさそうだ。だが、そんな認識を変えつつあるのが、ヨーロッパの航空機製造企業エアバス(Airbus)だ。
ソーシャルメディア担当マネージャー、アンソニー・ロセンド氏の指揮のもとエアバスは、2016年初頭に約40万フォロワーだったインスタグラムのオーディエンスを、たった1年で2倍以上となる89万6000フォロワーまで増やした。参考までに、最大のライバルであるボーイング(Boeing)は28万8000フォロワーだ。
「当社のアカウントは2013年にマーケティングの一環として開設したが、当初の伸びは鈍く、実質的な戦略をもち合わせていなかった。この役職に就いた私は、足元に金鉱が眠っていることに気づいた」と、ロセンド氏は言う。
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ロセンド氏が見出した金脈
金鉱とはこういうことだ。エアバスには専属の写真家や映像作家がいるので、ロセンド氏はインスタグラムにうってつけで、ほかの誰にもマネできないコンテンツを量産できる。しかも、インスタグラムの主なオーディエンス(航空オタク)にとっては、他所では見られない社内風景や、大量のいわゆる「プレーンポルノ(plane porn:航空機ポルノ)」こそ、まさに求めるものなのだ。
ロセンド氏は、「リーチを最適化したいなら、オーディエンス主体で考えなければならない。彼らの好きなものを把握し、彼らの好きなものを提供するべきだ」と述べた。
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エアバスは#tbt(「ThrowBack Thursday」の略で、木曜日に過去の思い出に関する投稿をし合うハッシュタグ。インスタ上で一般的に広まる風習)に便乗して、過去の画像や動画の発掘も試したが、スクリーンセーバー向きの画像はあまりなかった。ユーザーが求めるのは、新しさ、美しさ、澄み切った青空のようなアイデアだからだ。
UGCとの相性はイマイチ
現在、エアバスのアカウントでもっとも人気が高いのは、ご想像のとおり機内から別の機体を撮影した「エア・トゥ・エア」画像だ。しかし、細部にフォーカスした画像への関心も高く、コックピットやシャークレット(エアバス独自の翼の先端部分)は特に人気だ。以前はキャプションなしで投稿していたが、いまでは豆知識というコンテクストを付け加えている。
「次世代の航空機を担う企業としてやっていることを見せることにした。これは航空会社にはマネできないことだ」と、ロセンド氏は言う。
現在、多くのブランドはユーザー作成コンテンツをフィードに組み込んでいる。ロセンド氏によると、エアバスもそれを当初は試してみたものの、成果はいまひとつだったという。息をのむほどきらびやかな通常コンテンツと相性が悪かったのだ。エアバスは、ユーザー作成コンテンツは別の場所で公開することにした。たとえば、同社のウェブサイト「iflyA380.com」は、乗客が撮影したインスタグラムの投稿でいっぱいだ。
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フィードバックを得る場
「ブランドイメージのためにインスタグラムを積極的に活用したいと考えている。また、インスタグラムはフィードバックを得る場としても重要だ」と、ロセンド氏は述べている。エアバスはインスタグラムで目立つ存在なので、ユーザーがエアバスの写真を撮ったり、写真にエアバスのタグを付けたりして投稿することも多い。
エアバスは、ソーシャルメディア分析ツールと手作業を併用して、顧客の好き嫌いを探っている。その結果は、投稿するコンテンツの種類に反映されるだけでなく、製品の細部への有益なフィードバックとしても活用される。画像より動画の方がコメントが集まるため、フィードバックが欲しい課題については動画コンテンツを今後さらに増やす予定だ。
エアバスは、ヘリコプター、宇宙、人事の部署にも専用のインスタグラムアカウントを持っていて、ソーシャルチームは計5人だ。これらのアカウントはブランド強化を目的としたものであり、ロセンド氏の優先課題は依然として、できるだけ多くの人にリーチすることだ。
そのために、エアバスは単発でインスタグラムの「ストーリー」や「ライブ動画」の機能も実験的に使用している。ロセンド氏によれば、こうした実験を行うのは、たいてい航空機の納入式典(かなり盛大だ)などの大イベントの前後だという。メインフィードのコンテンツほど作りこまれていない「舞台裏」コンテンツを投稿するにはいい機会というわけだ。
オーディエンスが気に入るものを
「穴埋めのために使うわけではない。だが、とくに話題がないときでも、つねにメッセージを発信して存在感を発揮したいと考えている」と、ロセンド氏。
「成功をつかむのに、写真家10人のチームは必要ない。重要なのは勢いに乗ることと、多様で高品質のコンテンツを配信することだ。社内で推したいものではなく、オーディエンスが気に入るものを届けるべきなのだ」(ロセンド氏)
Grace Caffyn(原文 / 訳:ガリレオ)