TikTokクリエイターにとって、ソーシャルディスタンスを考えなくて良いことは、ブランドやほかのクリエイターとのコラボレーションという別の、新たなコンテンツを生み出すことにつながった。最近のデルタ株によるコロナウイルス感染者急増によって、クリエイターは皆、バーチャルコラボに再び積極的になっているようだ。
2020年3月、ホルヘ・ソト氏は「隔離退屈」(と彼は呼んでいる)から、自分の部屋でTikTok動画を作成しはじめた。それから数カ月の間に、ロードアイランドに住むこの19歳のクリエイターは、オーディエンスを少しずつ集めた。そして高校3年を終了した現在、@horchata_sotoという彼のTikTokアカウントは210万人にフォローされている。
パンデミックのなか、人々は家にこもってTikTokを見て長い時間を過ごすようになった。多数のTikTokクリエイター同様、ソト氏もこのプラットフォームでオーディエンスを見つけた。ソーシャルディスタンスを考えなくて良いことは、クリエイターにとってフォロワーを増やすのに貢献してくれた可能性は高いが、一方でブランドやほかのクリエイターとのコラボレーションという別の、新たなコンテンツを生み出すことにもつながった。最近のデルタ株によるコロナウイルス感染者急増によって、クリエイターは皆、バーチャルコラボに再び積極的になっているようだ。
たとえばソト氏は、2020年6月からテキサス州やカリフォルニア州などに住むクリエイターとバーチャルコラボでスキッツ(Skits:寸劇)を作成しはじめた。「僕らは別々にパートを作った」とソト氏。「クリエイティブにやろうと考えた。スマホを使うことで、スキッツのなかで同じ場所にいる必要はなくなる。確かに新型コロナウイルスは障壁には違いないが、これなら、そんなことは関係なく制作できる」。
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完璧な美学は求められない
ZoomやFaceTimeを利用して、ほかのクリエイターやブランドとのコラボの可能性についてブレインストーミングすることは、パンデミックの最中に成功を収めたTikTokクリエイターのあいだではあたりまえになっている。ブランドやエージェンシーがTikTokでのインフルエンサーキャンペーンを優先させてきたからだ。TikTok動画を作成するときは、同じ場所やセットにいなくてもスケッチやコマーシャル、あるいはその他のコラボを機能させる方法を見つけるのが簡単だと、クリエイターやエージェンシー幹部は言う。TikTokのバイラルコンテンツは、特にインスタグラムと比べて、高度な品質を備えていないことがよくあるからだ。
「TikTokの真正性のレベルは、ほかのプラットフォームとは異なる」と、約30万人のフォロワーを擁するアカウント、@thecorporatemamaを持つアーカンソー在住のTikTokクリエイターのサラ・スティール氏は述べる。「制作レベルに関係なく、インパクトを与えることができる。文字通り、机の前に座ってスマホで自分のストーリーを語れば、ブランド所有のインスタグラムの非常にうまく制作された動画よりも多くのヒット数を稼げる可能性がある。だからブランドがその価値に注目しはじめているのだと思う」。
エージェンシーの幹部によると、クリエイターとのコラボを検討しているブランドは、TikTokコンテンツのゆるい雰囲気を利用しようとしているという。「TikTokユーザーとTikTokというプラットフォーム自体が、粗削りでクリエイティブな面白いコンテンツを好む。だからこうした姿勢は、参加したいと考えているブランドにも必要だ」とサーチ・アンド・サーチ(Saatchi & Saatchi)のデジタル戦略担当バイスプレジデントのメリッサ・ホッチマン氏は語る。
エンデバー(Endeavour)が所有する文化マーケティングエージェンシーである160オーバー90(160over90)のソーシャル&インフルエンスのアカウントディレクターであるケイティ・ウェルハウゼン氏も、このコメントに同意する。「インスタグラムなどのプラットフォームのコンテンツに主要都市が提供する完璧に作られた美学は、TikTokではあまり期待されていない。そして、ニューヨークやロサンゼルスに行くことが難しくなっているという単純な事実と相まって、米国のすべての地域でクリエイターが生み出されたのだ」。
「もっと深い、絆をつくりたい」
とはいえ、ZoomやFaceTimeだけを介してクリエイターたちとコラボすることは、クリエイターにとってもブランドにとっても難しい場合がある。「ひとりで部屋にいると、ひどく孤独感を覚えるときがある」とソト氏。「だから、同じような心理状態や考え方の人と話をすると、リフレッシュできる」。
「だから、長期的なブランドとの関係を持つクリエイター同士で、コミュニティ感覚を持てる場所を作ることは非常に重要なこと。でも、それはZoomで築くのはとても難しい。やっぱり、集まって顔を合わせて話し合う方法にはかなわない」とウェルハウゼン氏は述べる。
クリエイターの一部でも、ワクチン接種後、直接会う傾向になっている。「数週間前にTikTokの友達にはじめて会ったばかりだ」と、アカウント名@mirandaalolで420万人のフォロワーを持つTikTokクリエイターのミランダ・レイ氏は言う。「ワクチンを打ったので、前よりも安心して人々と会うことができるようになった」。
とはいうものの、レイ氏は直接会いやすくなったからといって、ほかのTikTokクリエイターたちとコンテンツを共同制作するためだけに会うつもりはない。「一緒に撮影する前に、まず友情を築きたい。単なるビジネスで終わりにはしたくない。もっと深い、絆をつくりたいんだ」とレイ氏は言う。
[原文:How TikTok creators and brands have virtually collaborated amid the pandemic]
KRISTINA MONLLOS(翻訳:SI Japan、編集:長田真)