日本の「アプリ内広告」、予算全体に対する割合は 28%:パブマティックの調査レポート

D2C(Direct to Consumer)を試みる企業が増えたことにより、GoogleとFacebookのデジタル広告が「レッドオーシャン」化するなか、いま「ブルーオーシャン」である可能性を秘めているのが「アプリ内広告」だ。しかし、それに気づいている企業も少なければ、必勝法も確立できているわけでもない。

グローバルなSSP事業社であるパブマティック(PubMatic)は11月21日、日本国内におけるアプリ内広告の意識調査に関するレポートを発表。100名の広告主と広告代理店担当者に対して実施されたこの調査結果によると、デジタル広告予算全体におけるアプリ内広告予算の割合は、28%となったという。

「アプリ内広告は、市場として伸びていくと認識している」と、パブマティックのCCO(チーフ・コマーシャル・オフィサー)を務めるジェフ・ハーシュ氏は、DIGIDAY[日本版]の独自取材に対して答える。「消費者がアプリを使う時間も長くなっている。そのため、広告主もそこへリーチしたいと思うのは当然だろう」。

その一方、スマートフォンの普及とともに立ち上がってきたアプリ内広告は、まだまだ歴史が浅い。そのため、多くのメディアバイヤーにとって、いまだ「未開の地」となっている。

「日本のアプリ内広告のクライアントは、ゲームアプリのデベロッパーがかなり多い」と、パブマティックにおける日本のカントリーマネージャー、廣瀬道輝氏は語る。「そのため、インストールを目的とした広告に偏りすぎていて、健全なマネタイゼーションができていない」。

本記事では、ハーシュ氏・廣瀬氏の解説を交えつつ、この調査レポートのハイライトを紹介していく。

日本のアプリ内広告は、5強の様相

アプリ内広告といえども、テックジャイアントの影響力からは逃れられない部分もある。事実、海外ではGoogleとFacebookによるデュオポリー(複占)が懸念されるようになってから久しい。それは、アプリ内広告においても変わらないと、ハーシュ氏は語る。だが、今回のパブマティックの調査によると、日本におけるアプリ内広告は、Facebook、Twitter、LINE、Google、Yahoo!による5強によって寡占されている状況にあるようだ。

アプリ内広告が出稿されているプラットフォーム

「アプリ内広告を出稿しているものは?」に対する回答(複数回答)

「やはり大きくて独自のエコシステムを持っているウォールド・ガーデンには、バジェットが付きやすいと考えている」と、廣瀬氏は語る。「本来サポートすべきプレミアムパブリッシャーやコンテンツクリエイターへ予算をいかに落としていくかは、我々に限らずパブリッシャー全体で考えなければならない課題だと思う」。

KPIはやはり、コスト単価重視の傾向

また、さまざまな指標を得られるデジタル広告には、どうしてもパフォーマンスが求められる部分が否定できない。そうなると、KPIのみが重視され、結果ウォールド・ガーデンに予算が集中するという状況が生まれる。実際、アプリ内広告においても、キャンペーンを評価するKPIは、CPA(56%)、CPC(34%)、CPI(32%)とコスト単価重視が目立つ。

アプリ内広告のキャンペーンを評価するKPI

「アプリ内広告のキャンペーンKPIは?」に対する回答(複数回答)

「ブランド広告とパフォーマンス広告の違いがあまりなく、かつパフォーマンスオリエンテッドなところが日本のデジタル広告の特徴のひとつ」と、廣瀬氏は説明する。「そうなってくると、ブランドバジェットもパフォーマンス重視のKPIに寄ってしまい、すべての予算がウォールド・ガーデンに流れる」。

広告主と代理店における意識の違い

だが、広告主は必ずしも、パフォーマンスのみを思い求めているわけではない。アプリ内広告を実施する際の主な目的に関する質問に対して、広告主のもっとも多い回答は、「ブランディング」(46%)となった。それに対して、広告代理店の一番多い答えは、「アプリのインストールを促す」(56%)となったという。

アプリ内広告を実施する際の目的

「アプリ内広告の主な目的は?」に対する回答(複数回答)

「大きな予算を持っている広告代理店が、あまりプランニングしていないのではないだろうか。KPIを追いかけるだけで、KPIが良いところに予算を投下している」と、廣瀬氏は推察する。「もう少し代理店がうまくプランニングして、広告主をしっかりリードしないと、この傾向は変わらない」。

プログラマティック広告の認知不足

実は、こうしたギャップを解消してくれるのが、プログラマティック広告だ。ユーザー生成コンテンツ(UGC)をメインとするプラットフォーマーとは異なり、プレミアムパブリッシャーのコンテンツのみを対象とするプログラマティック広告は、ブランドセーフティのリスクも低い。また、出稿先が明確にならないケースもあるアドネットワークとは異なり、商流の身元を保証する「ads.txt」「app-ads.txt」などの施策が普及しているプログラマティック広告は、透明性も高い。

しかし、メディアバイヤーたちのあいだでは、まだまだ正しい知識が広まっているとは言い難い状況だ。プログラマティックバイイングをしない理由を問う項目では、31%以上がプログラマティックバイイングを知らないという現状がある。

アプリ内広告をプログラマティックバイイングしない理由

「アプリ内広告でプログラマティック購買しない理由は?」への回答(複数回答)

こうした状況について、「世界的に、まだブランドもエージェンシーも、理解できていない部分がある」と、ハーシュ氏は説明する。「プログラマティック広告自体のブランドリフトが必要」と、廣瀬氏も補足した。

「(アプリ内におけるブランド広告は)タイミング的には、まだはやいと思っている」と、ハーシュ氏は最後に語る。「しかし、消費者の可処分時間がモバイルアプリに流れている以上、市場も大きくなっていくはずだ」。

Written by 長田真、村上莞
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