インスタ「IGTV」:パブリッシャーはどう活用しているか?

インスタグラム(Instagram)がスマートフォンの縦画面向けに、いわゆる「タテ型」の動画専門のハブである「IGTV」を立ち上げてから2週間が経った。パブリッシャーたちは、ほかのプラットフォームで公開済みの動画の使い回しやオリジナルの動画など、さまざまなコンテンツをライブストリーム形式で投稿している。

アメリカでは、ヴォーグ(Vogue)が女優のリリー・レインハートやカイリー・ジェンナーが化粧品を試している姿を収めた動画シリーズ、ビューティシークレット(Beauty Secrets)の新しいバージョンを公開した。BuzzFeedもメインのアカウントから毎日のように動画を投稿している。ミークラッシュマンデー(MeCrushMonday)をはじめ、『ハリー・ポッター』の本の全ページを折り曲げる人物を特集した25分にわたる実験的な番組など、さまざまなライブストリーミング動画をSNSのプラットフォームで配信。また、テイスティ(Tasty)やニフティ(Nifty)などのバーティカルでも、ほかのプラットフォームでの動画を使い回して10分以内の動画を投稿している。

テイストメイド(Tastemade)のイギリス版は、タレントをインフルエンサーに起用してロンドンの素晴らしいお店や食事を紹介するア・テイスト・オブ・ロンドン(A Taste of London)というシリーズを投稿。ターナー(Turner)傘下のスーパーデラックス(Super Deluxe)は、ストリートウェア通のタバスコ・スイート(Tabasko Sweet)を迎え、タレントが司会を務める番組「チープ・スリルズ」(Cheap Thrills)をタテ型動画として編集し、毎日公開している。リファイナリー29(Refinery29)は、ライフスタイルにおける秘訣や、「スタイル・アウト・ゼアー」(Style Out There)や「アンバザード」(Unbothered)といったシリーズからの編集版を織り交ぜて動画を投稿した。

イギリスでは、ブルームバーグ(Bloomberg)が自身の「@bloombergusiness」 のアカウントで4本の動画を投稿したが、それらはニューヨーク・スカイラインの風景の変化など、日常の込み入った話題を取り上げており、ほかのプラットフォームで公開済みの動画を再編集したものだ。

多くの投稿は10分程度

IGTVには最長で60分という尺の制限があるが、こうした動画は30分を超えることはまれで、多くの場合は10分程度だ。パブリッシャーはみな、IGTV向けのオリジナルコンテンツを制作中だという。

パブリッシャーのIGTV向け動画が獲得している視聴数は5桁台の後半である一方、ヴォーグのカイリー・ジェンナーの動画視聴数は24万回、そして時計メーカーのブランパン(Blancpain)のスポンサーのもとでエコノミスト(The Economist)が制作したコーラル・トライアングル(Coral Triangle)のエコツーリズムに関する9分の動画の試聴数は、120万回を記録している。

イギリス国営放送のBBCは、全世界でIGTV向けにコンテンツを投稿するため、12のアカウントを持っている。BBCストーリーズ(BBC Stories)では、多嚢胞性卵巣症候群と闘う女性に密着した動画が公開から1週間でおよそ6万回の再生と60コメントを記録した。また、BBCストーリーズ内のインスタグラム動画の視聴数も1000回を獲得した。問題は、立ち上げ当初の視聴者の興奮をいかにキープできるかにある。「これは新鮮で興味深いが、同時に危険性もある」とBBCのシニア・ブロードキャスター、レベッカ・ドノバン氏は語る。「視聴数だけを引き合いにして何かを判断するには、時期尚早だ」。

モバイル体験の最適解

ブルームバーグは、IGTVのオーディエンス保持率は、FacebookやほかのSNSのプラットフォームと大きな差はないという。だがパブリッシャーはビュースルーレートの詳細について語ってはくれないだろう。テイストメイドのイギリス版は、平均視聴時間はインスタグラムのフィード内での動画の3倍だったという。マネタイズを行う準備をまったくしていなかったエコノミストなどのパブリッシャーは、配信パッケージの幅をコマーシャルパートナーにまで拡大しているが、このプラットフォームが広告主の興味を引くためにはオーディエンスのデータがまだまだ必要となるだろう。

「これは、ストーリーを意図どおりに、分断や中断することなく伝えられるチャンスだ」と、テイストメイドのイギリス支部でプログラミングオペレーション部門のトップを務めるモハメド・アリ・サルハ氏は語る。「これこそが2018年のモバイル体験に即した、長尺のコンテンツ消費を促す直感的な手法なのではないだろうか」。

現在は、そのリソースのひとつが問題となっている。デジタルメディアで成功するためには効率性が鍵であり、ほかのプラットフォーム向けに制作した動画を再編集すれば、かかる手間を比較的少なくできる。「インスタグラムは、すべてにおいて信憑性や独自性を重んじている」と、ブルームバーグでシニア・ソーシャルメディア・エディターを務めるケビン・ヤング氏は語る。「それぞれのプラットフォームに対して個別に取り組む必要はあるが、持っているリソースとのバランスを考慮する必要がある」。

今後解決すべき問題

「パブリッシャーにとって、IGTVがそのほかのプラットフォームのレプリカでは終わらないように、そして長尺の動画コンテンツの廃棄場所になってしまわないようにするのは大変だ」と付け加えたのは、ライフスタイルマガジンのデイズド(Dazed)でソーシャル部門を率いるアーマド・スゥエイド氏だ。「動画視聴の傾向にもとづいたクリエイティブな発想が必要だ」と、彼は語る。デイズドはほかのパブリッシャーと同様に、さまざまに異なるプラットフォームやインスタグラムのストーリーの顧客をIGTVに引き入れようとしている。自身をゲイだと公表している韓国のポップスター、ホランドを特集した動画はインスタグラムで合計24万の再生回数を獲得したが、これは、ホランド自身のオーディエンスをIGTV上に導くことができたためだろう。

だが、パブリッシャー自身のサイトなどの外部リンクのシェアやいいね!を促したり、インスタグラムのストーリーの機能を模したりすることで、さらなる進化を遂げられるかもしれないと、エコノミスト(Economist)で番組ディレクターを務めるデビッド・オルター氏は語る。

多くのパブリッシャーにとってのインスタグラムの魅力は、全世界の若年層のオーディエンスにリーチできる点だ。インスタグラムによると、ユーザーの60%は16才〜24才で、男女比も同じぐらいだという。ロンドンを拠点に活動する@bloombergbusinessのヤング氏によると、イギリスの首都でのフォロワー数は、ニューヨークでのフォロワー数と同じぐらいだという。インスタグラムの発表によると、ストーリー機能を日々使っているユーザーは400万人。シミラーウェブ(SimilarWeb)のデータによると、これはSnapchat(スナップチャット)の倍の数であり、1日あたりの利用時間も1時間と、2017年と比べて倍近くになっているという。

クリエイター、ブランド、そしてパブリッシャーのコンテンツでフィードが埋め尽くされるようになるにつれて、Facebook傘下のインスタグラムに求められるのは、フィードを綺麗に、そして、健全に保とうとする姿勢だ。「現状は、フェイクニュースはもちろん、趣向や作法にいたるまで、フィードに流れるコンテンツの監視方法についてはあまり議論されていない」と、ヤング氏は付け加える。「(投稿するコンテンツの)品質の基準ができればそれは面白い。それに対してインスタグラムがどう反応するかは見ものだ」。

Lucinda Southern(原文 / 訳:Conyac
Max Willens contributed reporting