トラフィック流入装置となりつつある、インスタストーリー:パブリッシャー&インフルエンサーの新戦略

2018年初頭のFacebookによるアルゴリズム変更で、パブリッシャーやインフルエンサーがウォールドガーデン(壁に囲まれた庭)のなかで開拓したオーディエンスは、彼らのものではないことが浮き彫りになった。だが、パブリッシャーやインフルエンサーは徐々に、インスタグラム(Instagram)のストーリー(Stories)を使って、そうしたオーディエンスを自分たちのものに変えはじめている。

オーディエンス獲得ツール

YouTubeのスターである双子の姉妹、ブルックリン・マクナイト氏とベイリー・マクナイト氏は、自身のブランドからマスカラの新シリーズ「ラッシュ・ネクスト・ドア(Lash Next Door)」を5月16日に発売する。2人は、490万人の登録者がいるYouTubeや、310万人のフォロワーがいるFacebook傘下のインスタグラムへの投稿を通じて、製品のプロモーションができる。だが、そうしたプラットフォーム上では、彼らのマーケティングはアルゴリズムの気まぐれに左右されてしまうだろう。

そこでマクナイト姉妹は電子メールのニュースレターを作り、インスタグラムのストーリーのなかに登録フォームへのリンクをつけてプロモーションを行うことにした。現在までに、310万人いるフォロワーの1.67%がニュースレター購読の登録をしていると、セレクト・マネージメント・グループ(Select Management Group)の共同創設者でパートナーのアダム・ウェスコット氏はいう。セレクト・マネージメント・グループは、マクナイト姉妹のようなインフルエンサーとともに仕事をするタレントマネジメント会社だ。

「最初の窓口はオンラインのみなので、セールスの50%強はインスタグラムのストーリーから来ていると言っていいと思う」と、ウェスコット氏。

同氏によると、平均して、リンク付きのストーリー投稿上でのインプレッションの2~5%だけがスワイプアップにつながっている。だが、多くの場合、そうしたスワイプアップは登録につながり、その結果、より多くのパブリッシャーやインフルエンサーがオーディエンス獲得ツールとしてインスタグラムのストーリーを利用するようになっている。

LTVが高いユーザーたち

インスタグラムのストーリーで誰かがスワイプアップして登録することは、Facebookの記事からやってきた登録より生涯価値(LTV)が高いと、ファーストメディア(First Media)でデジタル部門を率いるユバル・レッチャー氏は語る。

ファーストメディアは、ソー・ヤミー(So Yummy)のパブリッシャーで、インスタグラムのストーリーのリンクを使って、ソー・ヤミーの電子メールニュースレターの購読者を集めてきた。そうしたリンクのスワイプ率は平均して2.3%、ニュースレター購読者の10~15%を占める。インスタグラムからやってきた購読者がメールを開く率は平均より高いと、レッチャー氏。「ソー・ヤミーの(インスタグラムの)ストーリーを消費する場合、通常は毎日そうしている。だからブランドとのつながりがより強い」。

ナショナル・ジオグラフィック(National Geographic)も同様に、インスタグラムのストーリー内のリンクを利用している。ナショナル・ジオグラフィックのインスタグラムには8700万人以上のフォロワーがいて、その多くにとって、インスタグラムはこの雑誌に接する唯一の場所かもしれない。こう語るのは、ナショナル・ジオグラフィックの上級写真編集者で同誌のインスタグラムアカウントを管理するボーン・ウォレス氏だ。ナショナル・ジオグラフィックは、ほかのすべてのチャンネルの活動へのポータルとしてインスタグラムを利用している。

ナショナル・ジオグラフィックは今年、ストーリー内のリンクを使って電子メールニュースレターのプロモーションを開始した。野鳥保護への認識を高めるための全米オーデュボン協会(National Audubon Society)との共同作業の一環で、ナショナル・ジオグラフィックは、ストーリーの視聴者に電子メールニュースレター「イヤー・オブ・ザ・バード(Year of the Bird)」への登録を呼びかけている。登録フォームは、鳥とは関係のないナショナル・ジオグラフィックの更新情報を受け取るようにも求めている。

やり過ぎないように注意

ウォレス氏は、インスタグラムのストーリーでやり過ぎないように注意している。ナショナル・ジオグラフィックは、ストーリーをスワイプアップした画面で印刷版の雑誌の購読を求めはしない。「我々にとって、それは少し求めすぎだと思う」とウォレス氏はいう。ウォレス氏は、この慣例を採用するビジネスが増えるにつれ、(数字は明かさなかったが)ストーリーのリンクのスワイプ率が下がっていることにも気づいている。広告主がCTA(call-to-action)機能を活用するなかで、「ユーザーは、スワイプアップを要求するようなものをスキップしてしまう習慣を身につけている」と、ウォレス氏は話す。

要求のしすぎは、コンテンツが広告のようになってしまうことにもつながりうる。パブリッシャーのクオーツ(Quartz)がストーリーで電子メールの購読を特に強調していない理由もここにある。同社は違うアプローチをとっていて、2018年はインスタグラムのオーディエンスを増やすことを目標にしていると、クオーツで成長担当の編集ディレクターを務めるサリ・ザイドラー氏は話す。その目標に合わせて、インスタグラムのストーリー向けに電子メールニュースレター「クオーツ・オブセッション(Quartz Obsession)」を採用しはじめた。そうしたストーリーは、ニュースレターに登録するためのリンクを含んでいるが、インスタグラムが提供する購読には「驚くような副次的作用があるだろう」と、ザイドラー氏はいう。

人々のスワイプアップによるプラスの副次的作用もあるが、パブリッシャーやインフルエンサーは、人々がスワイプアップしないことがもたらしうるマイナスの副次的作用もまた意識している。ファッションブロガーのメアリー・オートン氏は「人々がスワイプアップしているかどうかをインスタグラムのアルゴリズムにメッセージを送り、人々のコンテンツに対するエンゲージメントがなければ、ほかの多くの人にはそれを見せないなど、多くの推測が存在する」と話す。オートン氏は、インスタグラムのストーリーのリンクを使って、16万4000人以上のフォロワーに自身の電子メールニュースレターを購読させたり、彼女が共同創設したトローブ(Trove)のモバイルアプリをダウンロードさせたりしている。

もうひとつ、インスタグラムがFacebookを真似て、パブリッシャーやインフルエンサーが人々をウォールドガーデンの外に送り出すことをよしとしなくなる、あるいは人々にリーチするためにリンク付きのストーリーへの課金を開始する、つまりオーディエンスのレンタルを公式にスタートさせるのではないかという懸念もある。だが、パブリッシャーやインフルエンサーはそれまでに、自身が持っているオーディエンスを取り込んでしまおうと考えるだろう。「電子メールニュースレターの購読登録は、サードパーティーが奪えないものだ」と、オートン氏は語った。

Tim Peterson(原文 / 訳:ガリレオ)