匿名を条件に本音を語ってもらうDIGIDAYの「告白」シリーズ。本稿では、大手消費財メーカーのマーケティング担当者が、サードパーティCookieへの締め付けが強化されるという変化の波をどうさばき、エージェンシーやベンダーの紛らわしい勧誘をどうかわしているかについて、その内情を語ってくれた。
マーケターたちは、長年にわたり、社内の顧客管理データベースとサードパーティのデータベンダーを併用しながら、オーディエンスセグメントを構築し、オンラインでのターゲティングを実施してきた。ところが、消費者に自己情報に対する強力なコントロール権を認める新しいデータ保護法制が相次ぎ、ブラウザがサードパーティCookieへの締め付けを強化するなかで、マーケターたちは、プライバシー優先という新たな地勢を滞りなく前進するための対策に追われている。
匿名を条件に本音を語ってもらうDIGIDAYの「告白」シリーズ。本稿では、大手消費財メーカーのマーケティング担当者が、この変化の波をどうさばき、エージェンシーやベンダーの紛らわしい勧誘をどうかわしているかについて、その内情を語ってくれた。
インタビューの内容は読みやすさを考慮して若干の編集を加えている。
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──マーケターはサードパーティCookieのニュースと、どう折り合いをつけているのか?
デジタルマーケティングにおける持てる者と持たざる者の格差は、ますます広がっていると思う。しかも、この格差拡大は皆が追いつけないほどの速さで進行している。
誰もが傍観者の立場を決め込んでいる。そして[データへの取り組みに]重い腰をしぶしぶ上げたとしても、彼らの口から出る言葉は、「うちは[アイデンティティ管理を]やらないが、高いスタンダードを掲げている手前があるから、これこれのパートナーにやってもらおう」というのが関の山だ。そして、これこれのパートナーたちは、いまや手足をもがれたも同然で、完全にお手上げの状態だ。
──「彼ら」とは誰のことか?
マーケターであり、エージェンシーであり、「アイデンティティ」パートナーたちだ。そして誰よりも、「ぶっちゃけ、ユーザーまるごと追跡するわけじゃない。でも我々にはCookieがある。そうだろう?」と、うそぶいてきた、大勢のパブリッシャーたちだ。
──現在、市場では、規制とCookieという、本来別々の問題が一緒くたに扱われているようだが?
一緒くたの傾向は多分にあるし、その影響を理解している[と思っている]人も多分にいる。なかでも一番混乱しているのはエージェンシーだ。都合の良いネタをあれこれ拾ってきては、提案してくる。「心配ご無用、皆さんにぴったりのパートナーを見つけて差し上げましょう」などと言ってくるのだが、「ありがたいお話ですが、けっこうです。自分たちで何とかしますから」と返している。
溝はますます広がるだろう。マーケターとパブリッシャーが直接連携をはじめたら、データベンダーやアドテクパートナーやメディアエージェンシーが、両者の間に入り込む隙などあるのだろうか。表現の部分、いわゆるエグゼキューション以外に、どんな役割が果たせるというのだろう?
──ほとんどのマーケターは有効なデータを持たないため、ベンダーを必要としているのでは?
データを持たない者、顧客との直接的な関係がなく、他の誰かの仲介を必要とする者は、お先真っ暗だろう。デモグラフィックデータによるターゲティングに戻ったほうがいいかもしれない。顧客関係を所有していなければ、ターゲティングする権利も主張できないのだから。あとはテレビに予算をつぎ込んで、がんばるしかない。
2020年という新しい時代のデジタルマーケターをめざすなら、顧客関係の整備に最大限の施策で臨むべきだ。顧客との距離をゼロにしなければならない。
──誰もがサードパーティCookieに代わる技術を模索しているが、あなたの対策は?
このさき18カ月は、今後のプロセスを周知させるために、社内の教育に専念する。それから、メディアアクティベーションの現場と連携して、具体的にどの程度の代替が必要なのか見極めたい。一般的に考えて、現状はパートナーの問題というより、プロセスの問題だと思う。
多くの場合、我々はデータプロバイダーからビジネスと直結するオーディエンスを購入してきた。これがなくなるなら、今後はどのような指標を使えばよいのか。Cookieに依存するものはすべて、代替技術に移行するなり置き換えるなりしなければならない。
そこではおそらく、真の勝ち組はコンサルタントだろう。社内で人材を確保するか否かは別として、プライバシーやデータの保護を外部委託するわけにはいかない。外から内へのアプローチは使えない。サードパーティベンダーとの連携は減少すると思われる。そしておそらく、在庫元のパブリッシャーとの連携がもっと必要になるだろう。
──このプライバシー最重視の新世界で、パブリッシャーはどう立ち回る?
全部台無しにするだろうね。何が適法で、何ができるのか、すばやく見極められるほど、彼らの頭の回転が速いとは思えない。パブリッシャーは結局、何もしないのではないか。
「あなたは私のオーディエンスを転用してはいけない。あなたは私のオーディエンスベースを他者のために活用してはいけない。あなたのコンプライアンスはどうなっているか?」。私には、これを表現するための[契約]言語が必要だ。
パブリッシャーに対する信頼よりも、GoogleとFacebookのデータクリーンルームに対する信頼のほうがずっと大きい。[GoogleとFacebookは]このアプローチについて熟慮を重ねてきた。持ち込みたいデータを持ち込むことはできるが、持ち出せないデータはある。パブリッシャーはと言えば、社内に人材がない。新たに採用する必要に迫られるだろう。
いま現在、業界の状況を見るに、ほかのどの職種でもなく、マーケターでよかったとつくづく思う。
Lara O’Reilly(原文 / 訳:英じゅんこ)