P&Gの小澤佳史氏、博報堂DYメディアパートナーズの井上喬裕氏がイベント「PROGRAMMATIC FORUM」に登壇した。本イベントで両氏は、ザ・トレード・デスク(The Trade Desk)の新谷哲也氏をモデレーターに、プログラマティック広告を用いたブランディングの可能性について語りあった。
プログラマティック広告のブランディング活用が、いよいよ本格化している。
P&G(Procter & Gamble)のメディアマネージャー・小澤佳史氏、博報堂DYメディアパートナーズのプラットフォームビジネス局 メディアプロデューサー ディレクター・井上喬裕氏が2019年8月6日、恵比寿で開催されたイベント「PROGRAMMATIC FORUM プログラマティック・バイイングで変わる、ブランド企業のデータ活用」に登壇。ザ・トレード・デスク(The Trade Desk:以下、TTD)とDIGIDAY[日本版]の共催となった本イベントで両氏は、TTDの日本カントリーマネージャー・新谷哲也氏をモデレーターに、プログラマティック広告を用いたブランディングの可能性について語りあった。
「ブランド認知を目的とした場合、プログラマティック広告こそが、リーチの効率性と効果性を達成するためにベストな媒体だと認識している」と、P&Gの小澤氏は、その期待を隠さない。博報堂DYメディアパートナーズの井上氏も、「広告会社としても、プログラマティック広告は、もっとブランディングに活用されてしかるべきと考えている」と語る。
いまや、新聞・雑誌のみならず、テレビやラジオ、交通広告や屋外広告までもがデジタル化した。そんななか、プログラマティック広告は、さまざまなデジタルメディアに対して、データにもとづき、いつ・どこで・誰に・どんな文脈で広告を当てるかを精密にコントロールできる。だからこそ、ブランディングにうってつけのツールとなるのだ。
だが、その一方で、いわゆる運用型広告の一部とみなされ、検索連動型広告やアドネットワーク、リターゲティング広告、SNS広告などと同じ文脈で語られてしまう悩ましさも、プログラマティック広告にはある。電通が発表した『2018年 日本の広告費』によると、昨年のインターネット広告媒体費は1兆4480億円。そこにおいて運用型広告費は1兆1518億円と大部分を占めるが、プログラマティック広告は、そのわずか数%にすぎないという。

「プログラマティックの価値は、今後さらに高まる」と小澤氏
プログラマティック広告
実際、日本におけるP&Gのデジタル広告比率もそのような状況になっていると、小澤氏は説明する。運用型広告のなかでもプログラマティック広告が占める割合は、まだまだ少ない。だが、グローバルではプログラマティック広告に対して、多くの予算を投じるようになっており、日本チームもそれを踏まえ、今後1~3年でさらに多くの投資を行う予定だという。
「すべての広告主にとって、KPIが何であれ、いかに効果的かつ、効率的にコストやターゲティングをコントロールするかは非常に重要だ」と、小澤氏。「広告主側で、さまざまなコントロールを利かせることができるプログラマティックという領域は、今後さらに価値が高まるのは間違いない」。
また、デジタルメディアのバリエーションが増えると、課題となるのがアドフォーマットだ。たとえば、動画広告ひとつ取っても、スキッパブルフォーマットがいいのか、ノンスキッパブルフォーマットがいいのか、インストリームフォーマットがいいのかインリードフォーマットがいいのかなど、国内ではノウハウがそこまで蓄積されていない。だが、プログラマティック広告だと、さまざまなアドフォーマットを活用してブランドの目的に応じて、最適化を図ることができると、博報堂DYメディアパートナーズの井上氏は指摘する。
「さらに、もうひとつ評価すべきがある。それは、コンテキストを最適化させやすい点だ」と、井上氏。「ビューアビリティやオンターゲット率などの基本的な指標をクリアしたうえで、コンテキストをフィッティングした広告をインリードフォーマットなどアウトストリームフォーマットを用いて配信することで、最適なタイミングで配信できる。そうすることで、効果を大きく増大させることが可能だ」。

「プログラマティックで効果を大きく増大できる」と井上氏
運用型広告特有の課題
その一方で、バイサイドからすると運用型広告には、ブランドセーフティ、ビューアビリティ、そしてアドフラウドといった懸念事項がつきまとう。世界でも最高峰のアドバタイザーの1社であるP&Gは、そうした課題について、声高に改善を求め続けてきた。
「この2~3年で、状況はかなり改善してきている。だが、正直、ブランドを毀損する可能性のある在庫は、まだ少なくないのは事実だ」と、小澤氏は広告主としての所感を語る。「マーケット全体に目を向けると、もっとビューアブルなインベントリが増えると嬉しい。ブランドセーフティに関しても、業界全体でそれを担保する仕組みを作る必要があるだろう」。
市場をより健全にしていくためには、広告主とエージェンシー、そしてテクノロジーベンダー、メディアも一体となって、考えなければならない。マスメディアの威力が薄まり、パーソナライズの圧力が高まるなか、しっかりとターゲットを選び出し、適切な場・コンテキストで訴求していくには、お互いの協力が必要不可欠になるからだ。
「広告主も積極的にサプライチェーンのプレーヤーにリクエストを伝えるべき」と、井上氏はエージェンシーの立場から主張する。「広告主が何を求め、何を課題にしているかは、サプライチェーンのメンバーすべてに浸透しているわけではない。我々がそれをきちんと伝えていくことで、はじめて理解が進むのではないか」。
ザ・トレード・デスクの魅力
そんななか、期待がかかるのが、やはりプログラマティック広告だ。特にエージェンシーとパートナーシップを組んで、デマンドサイドに特化したDSPを提供するTTDのプロダクトは、両氏の評価も高い。
実際、プログラマティック広告を提供するサービスは、エージェンシーを必要としなかったり、SSPを内包したものも存在するなど複雑化している。それでは、エージェンシーのノウハウを用いて、広告主の細かな要望に合わせられないし、透明性を担保し辛い。TTDなら、個々の広告主のニーズに合わせ、コントロールを最大限にもたらすことができる。
「さらにTTDを活用すれば、プレビッドの段階で問題のある配信先を外すことができる」と、小澤氏は語る。「そのため、満足できるレベルのビューアビリティも確保可能だ」。
アドフラウドについてもTTDは、ホワイトオプス(White Ops)、インテグラル・アド・サイエンス(Integral Ad Science)、グレープショット(Grapeshot)、最近ではチェック(CHEQ)といったサードパーティーのアドベリフィケーションベンダーと連携し、さまざまな対応を先回りして行ってきた。ブランドセーフティに関しても、早い段階からads.txtへの対応など、先進的なテクノロジーを導入している。

「これからも、こうした議論を続けたい」と語る新谷氏
「我々にとっては宝の山」
加えて、TTDで着目すべきは、「R.E.D.S(Raw Event Data Stream)」だろう。これは、TTDが広告主に提供する広告ログの名称であり、その項目は、サイト、時間・日程、IPアドレス、デバイスタイプ、クリエイティブID、ベンダーIDなど、多岐に及ぶ。このデータを、CDPやDMPにあるファーストパーティデータと掛け合わせることで、新しいセグメントを作成し、ターゲティングに活用できる。
「TTDに関しては、サードパーティデータのセグメントだけで8万ほどあり、量だけでなく、デバイスグラフといった多様な使い方にも対応している点に好感が持てる」と、小澤氏は語る。「R.E.D.Sには非常に価値のあるデータも含まれており、我々にとっては宝の山だ」。
TTDは現在、コネクテッドTVやオンラインラジオといった新しいプレミアムインベントリとすでに接続し、広告主・広告会社とともに横断的にオムニチャネルでの広告配信を実施している。そして、ユーザーの広告認知からコンバージョン、ユーザーの来店計測、アンケート調査を組み合わせた配信も可能になっている。ログをDMP・CDPで分析し、その結果をもとに、精緻なターゲティングを行うサイクルを作り上げることもできる。
「今回、広告主、広告会社、それぞれの立場から、さまざまな課題があることを教えてもらった」と、新谷氏は締めくくる。「これからも、こうした議論を続けながら、ブランド企業から選ばれるプロダクト作りを目指す」。
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Written by 広告制作チーム
Photo by 合田和弘(記事中)、Shutterstock(トップ画像)