結局のところ、プログラマティック広告(デジタル上のプラットフォームを通じて自動的に売買される広告)の未来には、エージェンシーが欠かせないということになりそうだ。
年間広告費27億ドル(約3200億円:2014年米国内)の巨大広告主プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)が、広告世界3位ピュブリシスとのアカウント契約をとりやめ、2位のオムニコムと契約を交わした。
奇しくもこの契約は、自動化が進んでいるにもかかわらず、デジタル広告のバイイングにおいて、広告ホールディングスグループがいまだに必要であることを示す結果となった。
結局のところ、プログラマティック広告(デジタル上のプラットフォームを通じて自動的に売買される広告)の未来には、エージェンシーが欠かせないということになりそうだ。
年間広告費27億ドル(約3200億円:2014年米国内)の巨大広告主プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)が、広告世界3位ピュブリシスとのアカウント契約をとりやめ、2位のオムニコムと契約を交わした。
奇しくもこの契約は、自動化が進んでいるにもかかわらず、デジタル広告のバイイングにおいて、広告ホールディングスグループがいまだに必要であることを示す結果となった。
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再考を進めるブランド企業
過去の2年を見ても、P&Gはプログラマティックに投資をする顕著な広告主のひとつで、投資額で他の企業を圧倒していた。
しかし、P&Gのメディアレビュー(数年に1度の広告会社との取引更改)における最新資料には、オムニコムとそのライバルが、いかにP&Gのプログラマティック戦略へ役立つかしか記されていない。P&Gのみでプログラマティックを運用することは、一切触れられていないのだ。
企業がどれくらいのアドテクノロジーを組織内に組み込めるのか、自らの専門は何なのかを、再考している様子が伺える。
社内運用は難しい
「プログラマティックを社内運用することは難しい。社内運用を規定のルールにせず、例外にすべきだ」と、P&Gに近いデジタルエージェンシーの役員は匿名を条件にこう語った。
「これまでは乗用車、お菓子、炭酸飲料にTシャツを販売することをコアビジネスにしていた企業にとって、テクノロジー人材の採用、テクノロジー自体の評価、データ保管のサポートなどは極めて異質のものだ」。
P&Gはデジタル広告費の多くをプログラマティックバイイング(自動的なデジタル広告購入プロセス)に充てている。また、消費者データやオンライン広告キャンペーンを管理する部隊にも投資を惜しんでいない。
価格と透明性が重要な要素
「すべての広告会社が、同じものをさまざまな方法で売り込んでいる」と、メディアレビューに携わった、異なるエージェンシーの情報筋は話す。「プレゼンテーションの初日から、プログラマティックバイイングやデータの話題が中心となり、これらがどう未来に展開されるかに重きが置かれた」。
オムニコムがライバルに勝利した理由のひとつは、テクノロジーのバックボーンが強固なものであったからだ。オムニコムの「アナレクト(Annalect)」と呼ばれるシステムは、広告在庫とブランド企業のデータをデジタル上でマッチングさせる。
2015年に実施されたほかの見直しでも、価格と透明性が重要な要素となった。ブランドたちはコストを明確にし、価格を隠さないメディアバイイング企業と組みたがる。
浮かび上がるさまざまな課題
近年、広告主たちの間では、直接テクノロジーベンダーと組み、データ管理、バイイング、マーケティングなどを進めるところも多い。従来型のエージェンシーにとっては競業企業だ。
「多くのエーエンジーが、プログラマティックを組織内に組み込みたいと相談に来る顧客を抱えている」と、P&Gの契約更改に関わったエージェンシーの情報筋は話す。「そして多くの場合、その実行を決めた後に、さまざまな課題を抱えて戻ってくる」。
企業側も、テクノロジー企業とパートナーシップを組むだけでは足りないと感じている。データサイエンティストをスタッフとして雇用し、すべてのバイイングプラットフォームと関係性を築く必要性があるためだ。
ハイブリッド的手法が主流に
「私たちには、アドテク企業とパートナーシップを組んでいるが、その管理を依頼したいという顧客が多くいる。なぜなら、私たちにはアドテク企業を管理する専門性があるからだ。メディアを最適化し、特定の顧客を広告のターゲットにする賢い選択をデータから得ることができる」と、情報筋は話す。
業界内の多くの企業が、このハイブリッド的手法を取り入れている。ブランドがアドテク企業とパートナーシップを組むが、管理や執行はアドテク企業のエージェンシーに任せる方法だ。
プログラマティック広告企業であるチューブモーグル(TubeMogul)は、ハイネケンやレノボといった企業のデジタル動画の購買を手助けしている。ブランド企業がこのような購買部門を組織内に持つことは珍しいと、チューブモーグルのグローバル・コミュニケーション部門バイスプレジデントであるデイビッド・バーチ氏はコメントする。
「私たちはいまだエージェンシーを中心としたビジネスを展開している。そして、私たちがともに働く企業の多くは、ハイブリッド的手法を採っている。これは、ブランド企業が技術的な判断を下し、データを管理するということだ。しかし、戦略や執行はエージェンシーが担当している」と、バーチ氏は語った。
Garett Sloane(原文 / 訳:BIG ROMAN)