P&G は、なぜ D2C ブランドを買収し続けるのか?:「ECとD2Cは伸びている」

大手ブランドホールディング企業は、人気が急上昇するダイレクト・トゥ・コンシューマー(D2C)ブランドの驚異を、ここ数年感じている。

ユニリーバ(Unilever)がダラー・シェーブ・クラブ(Dollar Shave Club)を10億ドル(約1100億円)で買収した大ニュースから3年が経ち、P&Gもまた、D2Cポートフォリオを静かに増やしている。イノベーション・インキュベーター、自社内でのD2C開発、そして買収といったチャンネル経由だ。

P&Gの戦略に通じている情報源によると、小規模なブランドが持っているオーガニックなアピールを維持したうえでスケールできる潜在力を持っているニッチなプロダクトを買収するべく、P&Gは計画しているとのことだ。消費者にとって、大手ブランドの魅力が比較的失われているなか、こういったブランドを買収しても、それらがなるべくP&Gのブランドであるということが明らかになり過ぎないようにしたいと考えているようだ。P&Gの広報担当者は、本稿公開までにコメントのリクエストに応えなかった。

D2Cの買収で再構築

最高ブランド責任者であるマーク・プリチャード氏はダボスにおいて1月、Business Insiderに語った。「eコマースとD2Cは伸びている。大手ブランドがより機敏になるには、小規模(ブランド)が助けとなると、我々は考えている。そして、大手ブランドは小規模がより早く成長する助けができる」。

D2Cブランドを複数買収したことで、P&Gは新分野でビジネスを成長させることができ、パフォーマンスマーケティングのような新しいマーケティング手法を学習し、スタートアップの形を真似してブランドチームを再構築することができたと、プリットチャード氏はBusiness Insiderに語った。P&Gはシグナル・アクセレレーター(Signal Accelerator)を2012年に開始、それを通じて27万5000のスタートアップへのアクセスを獲得した。その変化を自社のブランドチームに加えたことで、P&G自体も顧客の問題解決やデザイン実験により素早く取り組むことができるようになった。

本稿の情報源によると、P&Gが現在取り組んでいる戦略は、買収分野ですでに採用しているものと合致するという。2月には、P&Gは生理用品ブランド、ディス・イズ・エル(This is L)を1億ドル(約110億円)で買収したと報道されている。2018年12月にはトリスタン・ウォーカーのウォーカー・アンド・カンパニー(Walker & Company)を買収。これによってヘアケアとグルーミングブランドであるベヴェル(Bevel)、フォーム(Form)を獲得した(買収金額は非公開)。

そして昨年7月、ファースト・エイド・ビューティ(First Aid Beauty)を2億5000万ドル(約270億円)で購入、2018年2月にはスキンケア・ブランドのスノーベリー・ニュージーランド(Snowberry New Zealand)を買収した。2017年には自然派デオドラント・ブランドのネイティブ・コス(Native Cos)もブランド買収している。しかし、これらのブランドのウェブサイトを訪れると、P&Gブランドによる所有であることは明らかにはなっていない。

「我々は分水嶺に達した」

そして、自社ブランドの創設としては3月に、テレビ番組の「ホーム・メイド・シンプル(Home Made Simple)が、ライフスタイルブランドとして植物ベースの掃除プロダクトラインを販売すると発表した。その前にはベンチャー・ファームのM13と、D2Cビジネスを発見・資金提供を行い、ローンチするパートナーシップを結んだとも明らかにした。そして興味深いことに、昨年6月、P&Gはクラウドファンディングのインディーゴーゴー(Indiegogo)を使って、環境に優しいクリーニングブランドであるDS3で1万8380ドル(約200万円)の資金調達も行っている。

P&Gにとって、D2C業界により実地的な参加をすることは重要だ。「従来のセールスチャンネルはP&Gが圧倒してきた。しかし、世界はオンラインの方向へと移行している。消費者と直接つながる方法を彼らは持っていなければ、それは不利になるだろう」と、ブランドコンサルタントであり、メタフォース(Metaforce)の共同ファウンダーでもあるアレン・アダムソン氏は語った。

2009年、オンラインの消費者のうち、新しいブランドやプロダクトを試すことに意欲的なのは39%だけだった。フォレスター(Forrester)のデータによると、いまではその数字は56%にまで上った。「我々は分水嶺に達した。消費者は新しい物を求めている」と、フォレスターのシニア・アナリストであるアンジャーリ・ライ氏は語った。

「大手ブランドはイノベーションの取り組みを見せ、自分たちも何か違ったことを行っていると、消費者に示そうと不安になっている。変化を起こそうとする彼らの取り組みは、今後大きな成果を見せるだろう」と、ライ氏は言う。

D2Cがもたらしたもの

P&GによるD2C分野への参入はいくつかの側面がある。ひとつには、D2Cブランドであれば顧客データをコントロールできるという点だ。これはP&Gの卸売の伝統では不可能だった。D2Cブランドであればまた、そのときに応じて、特定の「価値」と関連付ける傾向がある。そのためマーケティング戦略としてブランドの目的がより重要になる。

「D2Cディスラプターたちのあいだで見られる、もっとも大きな変化は、消費者と近い関係性を築き、特に対話を持っている点だ」と、ライ氏は言う。

P&Gはすでに、D2Cのマーケティング手法から学んでいる。インフルエンサー、PR、ソーシャルという面だけでなく、オーレイ(Olay)やSK-IIといったブランドのマーケティングによりデータを中心に据えたアプローチを導入している。D2Cブランドのあいだで人気なパフォーマンスマーケティングのアプローチを取り、オーレイやSK-IIのブランドには、ブランド認知キャンペーンよりも売上を伸ばすことにフォーカスを集めているのだ。

「彼らは遅れての参加になるが、非常に重要な課題に取り組んでいる状態だ。彼らのパフォーマンス全体に成果を出すためには、小規模な物をたくさん買収する必要がある」と、アダムソン氏は語った。

Kristina Monllos(原文 / 訳:塚本 紺)