アパレルの製造小売であるバナナリパブリック(Banana Republic)は2月19日、オンデマンドの配達サービス「ポストメイツ(Postmates)」の提供を開始した。「ネットで注文、店舗で受け取り」サービスの延長として、商品を顧客の玄関先まで即日配送する。
アパレルの製造小売であるバナナリパブリック(Banana Republic)は2月19日、オンデマンドの配達サービス「ポストメイツ(Postmates)」の提供を開始した。「ネットで注文、店舗で受け取り」サービスの延長として、商品を顧客の玄関先まで即日配送する。
オンデマンドの配達サービスとの提携は、バナナリパブリックにとっては初の試みだが、ポストメイツやウーバー(Uber)のような即日配送プラットフォームとの連携そのものは、ノードストロム(Nordstrom)やターゲット(Target)をはじめ、ファッション関係の小売企業がここ数年模索してきた取り組みだ。どの小売企業も、Amazonが展開する即日出荷のような超がつくほど便利なサービスに対抗するため、購入プロセスのあらゆるステップを短縮する、斬新で独創的な方法を追求している。
結果はすでに現れはじめている。ポストメイツの報告では、昨年、アパレル商品の宅配は60%増えた。同社のヴィヴェック・パテル最高執行責任者(COO)によれば、あらゆる分野の小売企業を合わせると、ポストメイツのデリバリー(デリバリーアズアサービス)製品は、前年比300%増の成長を記録した。
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ポストメイツの配達サービスは、バナナリパブリックの「ネットで注文、店舗で受け取り」のインターフェイスに統合されている。顧客は通常2時間以内に引き渡し準備完了の通知を電子メールで受け取る。住所がニューヨーク市または南カリフォルニアのバナナリパブリックの店舗から半径4から5マイル以内であれば、ポストメイツに無料で配達してもらうこともできる。
Amazonのプレッシャーは、エイソス(ASOS)や最近撤退したばかりのジェットブラック(Jetblack)など、数多くの小売企業を即日配送に駆り立てている。だが、「フリクションレス」は高くつく。Amazonによると、ホリデーシーズン中は即日配送費だけで15億ドル(約1570億円)の出費があったという。
バナナリパブリックは「ネットで注文、店舗で受け取り」を2019年10月にはじめたばかりで、いまだ初期段階にある。
5年間で急増した配送業者
ポストメイツは2011年に飲食店向けのデリバリーサービスとして出発した企業だが、同社の広報担当者によると、小売企業との提携が2019年だけで前年比200%以上増えたという。この提携先には、ウォルマート(Walmart)やショッピファイ(Shopify)など、アパレル業界の最大手も含まれている。厳密に言えば、創業当初から、妥当な範囲の配送業務にポストメイツを活用することはできたのだが、同社が小売企業との直接提携を本格的にはじめたのは2015年のことだ。
ターゲットも2017年に買収した食料品の即日配送サービス「シプト(Shipt)」を活用して、似たようなオンデマンドのデリバリーサービスを展開しており、米国の一部地域限定だが、販売した商品を一律10ドル(約1050円)で24時間以内に宅配している。ノードストロムは2016年にウーバーとの提携を発表し、一部地域で即日配送を提供するとしていたが、2017年以降、この提携に関する続報はとんと聞かない。ノードストロムに提携の進捗について訊ねたが、返答はなかった。同社のウェブサイトを見るかぎり、現在、即日配送サービスを利用できるのは、ニューヨーク市に限られるようだ。
即日配送を開始した企業はほかにもあるが、多くの場合、対象地域は限られる。たとえば、ナイキ(Nike)はギークプラス(Geek+)という会社と連携して、日本で即日配送を試験運用している。H&Mも同様のテストを行っており、2018年のベルリンを皮切りに、ヨーロッパと北米の一部地域に少しずつ拡大している。ネッタポルテ(Net-a-Porter)はネッタポルテプレミア(Net-a-Porter Premier)という即日配送サービスを自社運営しており、ニューヨーク市のほか、隣接するニュージャージー州とコネチカット州の一部地域で利用できる。
ジュエリーブランドのイラン23(Ylang23)と連携するドロップオフ(Dropoff)、ショッピファイと連携するデリバリーソリューションズ(Delivery Solutions)など、小売分野に特化したサードパーティの配達業者はこの5年間に急増した。そして、小売企業の配送時間の短縮を助けてきた。
「ごく自然の流れだった」
去る12月、ウーバーのダラ・コスロシャヒ最高経営責任者(CEO)は、主に食料雑貨を扱う同社の配達サービスについて、理論上はどんな製品にも拡大可能と発言し、特に関心のある分野として小売分野に言及した。現在、小売企業との提携はあるか、あるとすればどの小売企業かという問いに対して、ウーバーからの回答はなかった。
ポストメイツの広報担当者によると、同社は、戦略の一環として、即日配送サービスを自前で運用するのが難しい小売企業に注力する考えという。Amazonでさえ、自社の配送システムに困難を抱えている。配送時間の短縮には相当のコストがかかるからだ。実際、プライム会員を対象に、無料で即日出荷する商品を増やした2018年から2019年にかけて、フルフィルメントのコストは20億ドル(約2080億円)近く跳ね上がった。
「ポストメイツによる即日配送は我々にとって、ごく自然の流れだった」と、バナナリパブリックでチーフマーケティングオフィサー(CMO)を努めるメアリー・アルデリート氏は語る。「顧客に便利で切れ目のないショッピング体験を提供することは、激変する小売業界でバナナリパブリックの差別化要因を確立する取り組みにほかならない」。
DANNY PARISI(原文 / 訳:英じゅんこ)