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第3波リスクのなか、米 食品小売 が備えるクリスマスシーズン :「最悪を想定し、最高を期待している」

米国ではあらゆる業界の小売企業が、クリスマスシーズンに向けた戦略の見直しを迫られている。食料品店も例外ではない。

食料品店が直面している課題はふたつある。その原因となっているのが、米国内における新型コロナウイルスの感染拡大だ。たとえばブラックフライデーは食料品と無縁のようにも思えるが、現在の感染拡大により、ホリデーシーズンに食料品配達への需要が増加すると考えられる。さらに、自宅で過ごす時間が増えるなか、クリスマスに向けてベーキング用品や小さな七面鳥といった特殊な商品の需要も高まる可能性もある。

食品小売各社はクリスマスに向けて、オンライン注文をより早くさばけるように従業員を増やし続けている。たとえばクローガー(Kroger)は今春と比べ、従業員を10万人以上増やした。また、各社は買い物客に対し、感謝祭のディナーに向けて早めに商品を注文して確保するよう推奨している。コストコ(Costco)は8人前の感謝祭用ディナーセットの予約注文を10月から開始していたが、同社のウェブサイトによればすでに「売り切れ」となっている。

各社の動きの背景には、春のような問題を起こしたくないという考えがある。感染拡大当初、米国ではトイレットペーパーやクロロックス(Clorox)の除菌ワイプなどの売切れが続き、食料品のオンライン注文は届くまで何日も待たされるというケースが続出した。もちろん、このときのように買い物客が食料品店に殺到するかは不透明なことでもある。カンター・コンサルティング(Kantar Consulting)の小売分析ディレクターを務めるパメラ・グッドフェロー氏は「各社は最悪のケースを想定し、最高のケースを期待しているはずだ」と分析する。

オンライン注文の増加に備える

コンサルティング企業のブリック・ミーツ・クリック(Brick Meets Click)は「食料品のオンライン注文のピークは6月で、その後にステイホームや営業規制が解除されたことで需要は落ち込んでいる」と語る。一方で、昨年よりも多くの世帯が食料品のオンライン注文と宅配サービスを利用しているのも事実だ。オンラインの食料品の宅配数は、2019年8月に2140万件、2020年8月は3750万件と推計されている。さらに、これらのサービスを今春に初めて利用し始めた消費者の一部は、パンデミックの終息後も利用し続けると考えられる。

オンライン食料品店のフレッシュダイレクト(FreshDirect)でCMO(Chief Merchandising Officer)を務めるスコット・クロフォード氏は、米DIGIDAYの姉妹サイトのモダンリテール(Modern Retail)の取材に対し、「1月から3月にかけて、当社のウェブサイトでは新規カスタマーのトラフィックが800%も増加した。自宅で食事をする人が急増したことで、注文量と頻度が増えている」と語る。現在、フレッシュダイレクトのオンライン注文量は春ほどではないものの、それでも新規カスタマーは前年比で50%ほど増加するだろうと同氏は予想している。

各社は、今後のオンラインにおける食料品の需要に対応するため、ウェブサイトの改善、数万人規模の店員の雇用、マイクロフルフィルメントセンターの構築といった高コストの投資も厭わない構えを見せている(こうした投資が実際に実を結ぶのには1年から2年ほどかかることが多い)。オムニコム・コンサルティンググループ(Omnicom Consulting Group)のコマース担当シニアバイスプレジデントを務めるブライアン・ギルデンバーグ氏は、「今春の食料品の配達需要は非常に高かったが、対応できるだけのインフラ準備が整っていなかった」と語る。

サイト構築、整備も急務

クリスマスに備え従業員を増やしたのはクローガーだけではない。クローガーに次ぐ食品小売大手のアルバートサンズ(Albertsons)や配送プラットフォームのシップト(Shipt)、インスタカート(Instacart)などもパンデミック以降、それぞれ3万人、10万人、30万人の店員を新規雇用している。

だが、労働力を増やすだけでは片手落ちであり、需要の増加にスムーズな対応ができるウェブサイトの構築も不可欠だ。クローガーの広報担当はモダンリテールに対し、食料品のオンライン注文増に対応するため、全米でピックアップや宅配のための時間枠を増やしたと回答している(ただし、同担当は各店舗における具体的な時間枠については回答を避けた)。

一方、Amazonの食料品担当バイスプレジデント、ステファニー・ランドリー氏は10月にVox傘下のテクノロジーメディア、リコード(Recode)に対し、ウェブサイトやアプリに新機能を追加していると語っている。これにより、食料品の宅配注文時に配達時間枠が埋まっている場合は、その時間枠が利用可能になったときにカスタマーに通知が行く仕組みとなっている。

適切な在庫管理

クリスマスシーズンに向けて食料品のオンライン注文をスムーズに捌くためには、さらに対策が必要だ。消費者からの需要が特に多い商品をストックし、時間内に届けることが求められる。フレッシュダイレクトのクロフォード氏は「今年は例年よりも(招待客を絞った)小規模な感謝祭が増えるのではないか」と予想する。

「どのような規模のディナーにも対応できるよう、人気のある商品は大小サイズを取り揃えている」と同氏は語る。「提携している食肉ブランドやシェフも、小型の肉やマリネをオプションで用意してくれている。(丸焼き用の七面鳥ではなく)年中販売している部位別の七面鳥肉が売れるだろうし、クリスマスシーズン向けの骨付き胸肉の需要も大幅に増えると予測している」。クローガーやウォルマートも、今年は例年より小型の七面鳥を用意するようだ。クロフォード氏はさらに、「今春と同様、クリスマスシーズンに自宅で料理をする人が増えるのではないか」と語る。同社ではそれに合わせ、かぼちゃの缶詰やスパイスなど料理に使いやすい商品の在庫も増やす予定だ。

こうした食料品宅配の費用対効果を高め、長期的な効率を向上させようとする食品小売各社の取り組みは、今年のクリスマスシーズンのためだけにおこなわれるものではない。たとえば、各社の投資のなかでも多数のマイクロフルフィルメントセンター構築は特に大規模だが、その結果は今年のクリスマスシーズンに間に合うものではない。カンター・コンサルティングのグッドフェロー氏は来年のトレンドについて次のように分析する。「自動化と効率化が重要になる。適切なタイミングで、確実に注文を届けるための取り組みがさらに進んでいくだろう」。

[原文:‘Preparing for the worst and hoping for the best’ How grocers are preparing for the holidays

Anna Hensel(翻訳:SI Japan、編集:分島 翔平)