アプリ「フリックペイ」は、ファッションリテーラー「ジャパンLA」や、全米で「ダウンタウン・サンタ・モニカ」のような地域活動団体と連携している。目指すのは、メタバース(オンライン上の仮想空間)のデジタルコレクションをAR(拡張現実)を使って現実世界にもたらすことだ。
この記事は、DIGIDAY[日本版]のバーティカルサイト、ビューティ、ファッション業界の未来を探るメディア「Glossy+」の記事です。
アプリ「フリックペイ(Flickpay)」は、ファッションリテーラー「ジャパンLA(JapanLA)」や、全米で「ダウンタウン・サンタ・モニカ(Downtown Santa Monica, Inc.)」のような地域活動団体と連携している。目指すのは、メタバース(オンライン上の仮想空間)のデジタルコレクションを、AR(拡張現実)を 使って現実世界にもたらすことだ。来年にはヨーロッパでのパートナーシップも予定している。
純粋なデジタル体験は未来だともてはやされてきたARだが、現実世界の中に画像が入り込むこの技術は、とくにVR(仮想現実)に不慣れなユーザーにもインタラクティブで興味深いものとして受け止められるだろう。大ヒットしたARゲーム「ポケモンGO」を運営するナイアンティックの創業者兼CEO、ジョン・ハンケ氏は8月にメタバースについてこのように述べている。メタバースは、ARを通して現実世界での交流を人々に促し、新しいつながりを生み出し、何千年にもわたる人間の体験を高めることとなるだろう、と。メタ社が成長しメタバースが拡大するにつれ、AR体験はテクノロジーとのより自然なかかわり方を可能にするのだろうか?
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この考えに賛同しそうなのが、ARアイテム収集のためのプラットフォーム「フリックプレイ」を立ち上げたピエリーナ・メリノ氏だ。フリックプレイのアプリはオンライン上の人物を動かすように設計されており、アイテムで飾ることができる。そのアイテムはNFTと同様に、アンロックしたり、自慢したり、売ることもできる。ユーザーはインタラクティブなゲームマップによって、他のユーザーが所有するデジタルアイテムとリアルタイムでの交流が可能だ。フリックプレイは世界的なベンチャーキャピタル「ライトスピード・ベンチャー(Lightspeed Ventures)」とサンフランシスコに拠点を置く「アブストラクト・ベンチャーズ(Abstract Ventures)」による500万ドルのシード投資を受け、今月初めにはジャパンLAとのパートナーシップ締結を発表した。
ジャパンLAの創設者、ジェイミー・リバデネイラ氏は今回のパートナーシップについて次のように語る。「フリックプレイのメタバースは、我々のデジタルリテールストアの構想と合致しており、インスタグラムやTikTok上でのコミュニティーとの交流に役立つ。いまでは顧客が注文した品物を受け取ると、我々のフリックプレイ上の店舗で交流したり、当店やブランドのデジタルアイテムを集めて、選択したメタバース上で永久に所有することができる」。
メリノ氏にとってARやVRの世界は、社会とソーシャルメディアの関係性の延長線上にある。「Facebookは人々がつながる方法として、自己と社会が交差する場を初めて提供した。さまざまな瞬間をシェアするプラットフォームとして誕生したインスタグラムは、自分の人となりを示すだけでなく、アイデンティティを形作るプラットフォームへと進化した」と同氏。「デジタル台帳の技術は我々の現実を形作るのに役立っただけでなく、触れたり感じたりできるものと同じくらいに、現実的で有形的な感覚になりつつある」。
メリノ氏のこれまでの経歴は、フリックプレイの開発に役立った。まだVRとARの技術が業界内でようやく導入され始めた頃に建築家のもとで働き始め、のちにVRプロジェクトを主導した。その後は建築の知識とテクノロジー領域での経験を組み合わせ、新しいプラットフォームを立ち上げる好機を見出したのだ。
同氏が最初に立ち上げた「ピーマー(PIEMER)」は、ノードストロームなど小売大手で初めて販売された3Dプリンターによるジュエリーラインだ。「その後、人々が至るところでポケモンGOを楽しみ、このゲームが現実世界で大勢の人を動かすのを目の当たりにした」と同氏は語る。「そして、ミュージアム・オブ・アイスクリーム(the Museum of Ice Cream)などの体験型ポップアップが開催されるようになり、人々は物理的空間を通じてデジタルアイデンティティーを確立していった」。
フリックプレイのインタラクティブさは、ブランドに新たな機会をもたらしている。たとえばバレンシアガ(Balenciaga)などがフォートナイト(Fortnite)とコラボレートしたが、ユーザーとのインタラクションといえば衣類販売のレベルに限られていた。だがARを用いれば、店内や屋外を歩き回る顧客に、店舗やストーリーテリング、歴史を組み合わせながら体験を提供することができる。「VRルームを訪れる人はクレイジーな没入型の体験を常に求めている訳ではない、それは週末に求めるようなことだろう。だが人々は日常の中でARの現実と、本当の現実世界をつなぐためにVRゴーグルや電話を使うだろう」とメリノ氏は語る。
フリックプレイは、ロサンゼルスをはじめとする全米の都市とも提携している。最近はサンタモニカでクリスマスをテーマにした体験型ARフィルターを発表し、現在は季節限定商品を増やしつつ、より多くのブランドとのパートナーシップを計画している。
[原文:Pokemon Go-style Flickplay is here to bring digital collectibles to retailers]
ZOFIA ZWIEGLINSKA(翻訳:田崎亮子/編集:山岸祐加子)