7月1日にポッドキャスト大手のワンダリー(Wondery)が、IABの新しいポッドキャスト測定基準採用に向けて、ハウ・スタッフ・ワークス(HowStuffWorks)と合流するという。同社のIABスタンダードへの切り替えによって、同業者が後に続くことをワンダリーは期待している。
ポッドキャスティングへのブランド広告費用投入というものは、測定基準が欠如しているとなかなか行われない。しかし、測定基準に向けた動きは鈍い。というのも、測定基準を採用することでポッドキャスト制作者に短期的な苦労が生じるからだ。
現在、ふたつの大手団体が競合しあう測定基準を発表してから半年近くが経過しており、業界はゆっくりだがまとまりをみせてきている。7月1日にポッドキャスト大手5社の1社であり「ダーティージョン(Dirty John)」や「アキューズド(Accused)」といった番組を担当しているワンダリー(Wondery)が、インタラクティブ広告協議会(Interactive Advertising Bureau:IAB)の新しいポッドキャスト測定基準採用に向けてハウ・スタッフ・ワークス(HowStuffWorks)と合流するという。同社のIABスタンダードへの切り替えによって、同業者が後に続くことをワンダリーは期待している。
しかし、それには犠牲が伴う。ワンダリーによると、IABスタンダードへの移行により、多くの番組のダウンロード数が「2桁」の割合で低下しているという。その影響で、より多くの広告費の呼び込みが必要であると制作者および広告バイヤーの両者が主張する、IABスタンダードへの移行が停滞しているのだ。
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IABスタンダードの現実
「それは、やらなければならないことだ。我々が第一歩を踏み出したことを、エージェンシーたちに気づいてもらいたい」と、ワンダリーCEO、エルナン・ロペス氏はいう。
IABスタンダードは、ポッドキャスティングがモバイルに支配されたメディアに成長していくにつれて出てきた問題を解決するものであり、短期的な苦悩を伴う。ユーザーがエピソードのストリーミングを開始した場合、ポッドキャスト消費の大部分を占めるAppleのポッドキャストアプリなどは、その番組をまとめてダウンロードするのではなく、分割してダウンロードを行っており、多くの場合、その番組のホストプラットフォームは、そうしたリクエストを複数のダウンロードとして記録していた。このような動きにより、特に長尺エピソードや高ビットレートの番組については、人為的にダウンロード数が水増しされている状態となっていた。
広告主の前にインプレッション数をぶらつかせることなしに制作者が得られるインセンティブはほとんどないが、IABの新しい基準が行おうとしていることはまさにそれだ。この基準では、24時間のあいだにユーザーが行ったダウンロード数のみがカウントされる。そのカウント期間を長くすることで、ダウンロード数を2重にカウントするといったことが最小限に抑えられ、ポッドキャスト制作者の売り上げは少なくなる。『WTFウィズ・マーク・マロン(WTF with Marc Maron)』や『ビル・シモンズ・ポッドキャスト(The Bill Simmons Podcast)』などのポッドキャスト向けに広告を販売する広告ネットワーク、ミッドロール(Midroll)は、ユーザーが1時間のカウント期間にダウンロードしたすべてのエピソードを集計するシステムに昨年末に切り替え、そんな番組のなかにはダウンロード数が40%も落ちたこともあったという。
ライバル企業の考え
「ワンダリーの取り組みに拍手を送りたい。業界の他社も24時間制に切り換えれば、我々もそれに続く」と、ミッドロール・メディア(Midroll Media)の事業開発チーフオフィサー、レックス・フリードマン氏は述べた。
フリードマン氏は、ミドルロールはその大混乱をほぼ乗り切っていると語った。しかし、24時間制で、同じIPアドレスを使用して1日で番組をダウンロードする従業員の大集団といったものによって、さらに数値が低下する可能性があると、フリードマン氏は見ている。
「広告主の望みは気にかけているが、自ら進んでその立場に身を置くことはない」と、フリードマン氏はいう。
他のポッドキャスターたちは、IABスタンダード採用に関心を持っているが、彼らのペースで取り組んでいる。ハウ・スタッフ・ワークス、ブルームバーグメディア(Bloomberg Media)、ウォールストリート・ジャーナル(The Wall Street Journal)などのパブリッシャー向け番組をホストしているザ・スレート・グループ(The Slate Group)所有のポッドキャスト・ホスティング会社、メガフォン(Megaphone)は、新方式への切り替えについて、パブリッシャーパートナーたちに年末まで猶予を与えている。
「IABの仕様には本質が備わっており、皆その方向に動いているが、自分たちのペースで進めていると思う」と、メガフォンのプロダクト責任者、ジョエル・ウィロー氏は語る。
クライアント筋の見解
エジソン・リサーチ(Edison Research)によれば、ポッドキャスティングはその他のデジタルメディアフォーマットと比較して、その規模は依然として小さく、アメリカにおける2018年の月間ポッドキャストリスナー数は約7300万人だと伝えている。また、ポッドキャスティングは、ダイレクトレスポンス広告主が主流だ。彼らは、広告効果の監視にダウンロードコードやユニークURLを頼みにして、アナリティクスとトラッキングに欠いたこのフォーマットを補完している。
しかし、ブランド広告主は、こうしたトラッキング機能が必要であるといい、広告費をそのやり方で動かすためには大企業によって採用されている統一基準が必要であると、長いあいだ主張してきている。
「大手パブリッシャー数社が、同じ方法の採用を表明することが必要だと思う」と、ホライゾン・メディア(Horizon Media)のオーディオ投資責任者、グレゴリオ・ロセト氏は語った。