打倒AppleをGoogleに期待する、ポッドキャスト配信者ら:「鎮座して動かない野獣」

ポッドキャストの世界には、非常に数多くの配信元がいる。だが、ポッドキャストのパブリッシャーやマーケターは、ひとりのキープレイヤーがスイッチを入れることを切望している。

Googleは2017年を通じて、ポッドキャストの配信支援の取り組みについてパブリッシャーと密に話し合いを進めてきた。そして、その狙いは、Appleのひとり勝ち状態に対抗し、オーディエンスを増やすことだ。2018年4月、カナダのブランデッドポッドキャスト企業のパシフィックコンテンツ(Pacific Content)は、Googleのポッドキャスト関連商品のマネージャーを務めるザック・ルノー=ウェディーン氏を招き、5回のシリーズに渡るインタビューを配信した。そこでは、ポッドキャストの視聴に特化した新しいプレイヤーについて、そしてGoogle検索でもポッドキャストが見つけられるように、という企業構想の概要が語られた。だが、ひとつ目の構想は、まだアプリという形では出ておらず、もうひとつの構想も、まだアンドロイド端末向けのアプリを立ち上げるにとどまっている。

「動きを見せない野獣」

2018年5月末に開催された『ボイスコン』(VoiceCon)という、ヴェイナーメディア(VaynerMedia)主催のデジタルオーディオや音声の現況に関する1日限りのカンファレンスで、主要なポッドキャストのパブリッシャーが語ったところによると「誰もが足踏みしている状態」だという。

もちろん、Googleの親会社であるアルファベット(Alphabet Inc.)の優先度は多岐に渡っている。このテック系企業の巨人は、高速インターネット、防犯カメラ、ドローンによる商品配送、自動運転、そして病気予防への投資を行なっている。だが、Googleの収益の一部は広告が担っているという事実、そしてその結果、オンラインでのスケールが拡大していることを考えても、パブリッシャーにとってはGoogleが配信でAppleに大きく遅れをとっているのは不可解なことだという。なぜなら、これはアドネットワークにとって、もっとも簡単な道を与えてくれるからだ。

「Googleには、非常に強力なポッドキャスト、いわば野獣が鎮座している」と、自身のトラフィックの大部分をAppleが占めているというパブリッシャーのひとりは語る。だが彼らは、スポティファイ(Spotify)やアイハートラジオ(iHeartRadio)などのプラットフォームの広告ソリューションやデータには嫌気がさしているという。

Googleにとっての機会

プログラマティック広告企業のジェリー(Jelli)の製品マネージメント部門でディレクターを務めるディラン・ヘクロー氏は、Appleがスケーラビリティのあるアドソリューションを構築できていないということが、Googleにとってはチャンスになりうる、と語る。

「広告に関しては、Appleが大きな力を持つということはこれまで一度もなかったが、GoogleのDNAには刻まれている。ポッドキャストのアドネットワークが即座にその後に続かなかったとしても不思議なことではない。Googleは広告主が何を考えているか、そしてどうすれば消費者を引き込めるかを熟知している」と、ヘクロー氏は語る。

Googleは、Google検索を通じて検索できる、アンドロイド端末向けのポッドキャスト商品を開発した。そこでは、ポッドキャストの番組名やその他のキーワードを検索すると、最新エピソードの音声クリップが検索結果の1ページ目に表れるようになっている。Googleは、まだこれを公式アプリという形にするには至っていない。

ひとり勝ち状態にかげり

ルノー=ウェディーン氏がパシフィックコンテンツに語ったように、Googleがポッドキャストアプリを開発すれば、パブリッシャーは視聴数や購読数を伸ばすことができるだろう。アドエクスチェンジャー(AdExchanger)によると、NPRの2017年9月のポッドキャストの視聴者1200万人のうち、60%がApple製のプレイヤーからであったという。NPRのスポークスマンによると、現在はその数字は50%にまで減少しており、これはAppleのひとり勝ち状態にかげりが見えている証拠だ。

「iPhoneを開けばポッドキャストアプリがあり、おそらくiPhoneを持っている友だちもポッドキャストを聞いている、という状況は大きい。同じように簡単にはじめられて、ポッドキャストを探したり聞いたりするうえで最高の体験となるような環境をアンドロイド端末で作り上げたいと考えている」と、ルノー=ウェディーン氏はパシフィックコンテンツに語った。

アンドロイド端末はiPhoneよりも多く普及しているが、Googleにプラットフォームを問わずに使えるポッドキャストのプレイヤーがないことが、パブリッシャー、マーケター、そしてGoogleが市場で負けている原因となっている。Googleは現在、スマートスピーカーのGoogle HomeのGoogle Assistantを通じてポッドキャストの検索を可能にしている。

パブリッシャーとの協業

これまでパブリッシャーは、ソーシャルメディアを通じてオーディエンスを獲得しようと奮闘してきた。たとえば、ニューヨーク・タイムズ(The New York Times)のFacebookグループや、ニューヨーク・タイムズのポッドキャストクラブには、2万4000人以上のメンバーがいる。

テック系の巨大企業であるGoogleに、より多くのポッドキャスト商品を求める声は大きく、Facebookと同様に広告費を捻出したりパブリッシャーからのデータを保持しようとする動きが続いている。Googleとその商品への取り組みについて話したことがあるというパブリッシャーのひとりによると、Google検索やスマートフォンからのリーチの規模が非常に大きいことは明らかで、Googleとは敵対せず、協働するのが得策だという。膨大なデータを持つGoogleは、パブリッシャーに解析ツールを提供することもできる。一方Appleは、2017年末にポッドキャストの解析ツールをリリースしている。

ポッドキャストのパブリッシャーはまた、Googleが独占契約を交わしているのがニューヨーク・タイムズやウォールストリート・ジャーナル(Wall Street Journal)のような大規模なメディアではなく、パシフィックコンテンツだったことに対して疑問を表明している。

「まだはじまったばかりだし、我々の商品が増えていくにつれて、さらに多くのパブリッシャーと協働したいと思っている。NYT(ニューヨークタイムズ)やWSJ(ウォールストリート・ジャーナル)のポッドキャストのチームにも部門が違うのは承知のうえで会談した。また、実際、密接に仕事をしている。商品に関する彼らのフィードバックや戦略面での助言は、ロードマップを決めるうえで非常に大きな手助けになっている。我々に興味を持ってもらい、将来的に彼らの編集チームとも繋がれることを期待している」と、ルノー=ウェディーン氏はメールに綴った。

一番良いスタート地点

だが、パブリッシャーのなかには、Googleのデジタル音声の分野への参入に対してやや疑問を感じているものもいる。2018年5月末に開催されたデベロッパーカンファレンスでGoogleが発表したAIの音声デモは、ポッドキャストのコミュニティのメンバーに「声の倫理」に対する不安を与えてしまったのだ。

「これはある意味、マーケターやクリエイターに対して『ヒポクラテスの誓い』を守る必要性を強めたにすぎない」と、ヴェイナーメディアの一部門でIoT関連に力を入れているヴェイナースマート(VaynerSmart)のバイスプレジデントのパトリック・ギブンズ氏は語る。「我々は、コミュニティの一部として責任を持って新しいツールを利用し、機密データを取り扱うという、一連の指針に合意する必要がある。出発点として良いのは、『何よりも害を及ぼさないこと』なのもしれない」。

Kerry Flynn(原文 / 訳:Conyac