サッポロビールの堀内 亜依氏は、10月10日、トレジャーデータなどが主催するイベント「PLAZMA 2019」のセッション、「『お客様を可視化する』サッポロの新コミュニケーション戦略」に登壇。サッポロビールが目指す、データマーケティングについて語った。
マスマーケティングが利き辛くなるなか、サッポロビールはデータを活用した新たな戦略にシフトしようとしている。キーワードは「共感」だ。
サッポロビール マーケティング開発部 マーケティングリサーチグループ マネージャーの堀内 亜依氏は10月10日、トレジャーデータなどが主催するイベント「PLAZMA 2019」のセッション「『お客様を可視化する』サッポロの新コミュニケーション戦略」に登壇。現在、同社に対してTREASURE CDPの導入やDMPの構築支援を行っている、UNCOVER TRUTHの代表取締役 石川敬三氏をモデレーターに、サッポロビールが目論むデータ活用について語った。
「大量生産した商品を、テレビCMで広く生活者に認知し、購入に繋げる。飲料、特にビール市場はいまでも、こうした『企業の体力に頼った手法』に依存している」と堀内氏。「しかし、消費者の趣向が多様化するなか、数を重視した『パワーゲーム』に乗り続けるのは得策ではない。我々は、力でアプローチするマスな手法への偏重から脱し、データ活用を取り入れた、顧客との関係構築を目指している」。
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いかに共感してもらうか
堀内氏が指摘するように、いくらマス一辺倒な手法でリーチを稼いでも、持続的なエンゲージに繋がるとは限らない。「数も一定数重要だが、もっとも大切なのは、我々のブランドや企業の世界観に共感してもらうことだ」。
その実現のため、現在サッポロではマーケティング開発部の主導で、CRM(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)施策と広告効果の向上を目的とした、DMP構築及び運用を実施中だ。「押し付けではなく、顧客のニーズを汲んだ共感を促すコミュニケーションを実現するには、CRMや広告効果は重要な改善ポイントだ」。
こう意気込みを見せる堀内氏だが、データ活用に踏み切った当初は課題も少なくなかった。なかでも、購買データとリアルな行動データの不足は、大きな悩みの種だったという。
顧客像をより鮮明に
「我々のビジネスモデルは、従来BtoBtoCであるため、購買データをなかなか入手できない」と堀内氏。商品を生産し、小売企業に卸し、それを生活者が購入する。サッポロのようなメーカー企業のなかには、こうした構造でビジネスを推進してきたがゆえ、顧客との直接的な繋がりがなく、データ不足に頭を悩ませる例は少なくない。
また、購買データに加えて重要になるのが、飲食店やイベントにおけるリアルな行動データだ。「自社サイトのログデータや会員データだけでなく、購買やリアルなデータがなければ、コミュニケーションの最適化は難しい」。
これに対し石川氏は「TREASURE CDPなら、サードパーティデータにもグローバルIDが付与されているため、他社のデータを自社のファーストパーティデータと連携することができる」と強調する。これにより、購買データや位置情報といったリアルな行動データを肉付けし、顧客像をより鮮明にすることができるわけだ。
マーケティングのベースアップ
このようにデータ活用を積極的に推進しているサッポロだが、その狙いは顧客との関係を深めるためだけではないという。堀内氏は「データで顧客像を明らかにすることにより、ブランド担当者が実行するPDCAサイクルの効率化、高速化も実現したい」と語る。
「本来、マーケターやブランド担当は、クリエイティブなことをしなければならない。しかし昨今、生活者のライフスタイルや趣向は多様化し、オペレーション業務の負荷が大きくなっている。データを活用することで、生産性を向上させ、我々のマーケティング活動をベースアップしていきたい」。
Written by Kan Murakami
Image by Shutterstock