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中国ライブコマース市場から、日本企業は何を学ぶべきか?:「徹底したローカライズで活路を」

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中国のeコマース市場は急速にその規模を拡大しているが、日本企業はそこから何を学ぶべきか。

中国におけるライブコマースの市場規模は、前年の2019年に6兆6000億円、2020年にはその倍額の15兆円に届くと予想されている。日本でも2017年から2018年にかけてライブコマースのブームがあり、さまざまなサイトが立ち上がったが、現在サービスを継続しているのは、そのうち30%を下回るという。しかし今後、日本でも本格的に5Gが普及していけば、ライブコマース市場が再び盛り上がることも予想できる。その際、日本企業が気を付けるポイントとは何か。

「中国の真似をするのではなく、徹底的にローカライズした仕組みをつくり、日本に合ったライブコマースを展開することで活路は見いだせる」。こう語るのは、オイシックス・ラ・大地の執行役員と、顧客時間の共同CEO 取締役を務める奥谷孝司氏だ。

同氏は、2020年10月12日から30日まで開催された、Treasure Dataなどが主催するオンラインイベント、PLAZMA13のセッション「市場規模6兆6000億円 中国のライブコマース事情とは?」に登場。中国のeコマース事情に詳しいhoppin代表取締役CEOの滝沢頼子氏に加え、モデレーターとして登場した、ブライトコーブの代表取締役社長兼本社シニアバイスプレジデント 川延浩彰氏と共に、中国のライブコマースの特徴と、日本企業が取り入れるべき点について議論を交わした。

KOLという存在

中国のライブコマースのメインプレイヤーは、大きく分けてeコマースサイト系とショート動画系のふたつに分けられる。eコマースサイト系では、アリババグループのタオバオ(淘宝网/Taobao)、ショート動画系では中国版のTikTokである、ドウイン(抖音/Douyin)が中心になっているという。

そんな中国のライブコマース市場の特徴として、滝沢氏がまず強調するのがKOL(中国においてインフルエンサーを意味する)の存在だ。「中国におけるライブコマースでの販売方法は、KOLに依頼するパターンと、企業のCEOや社員が自分たちで販売するというパターンがあるが、圧倒的に売上規模が大きいのは前者だ」。

KOLは「Key Opinion Leader」の略称で、視聴者から寄せられたコメントにリアクションを返したり、サイズを確認したいという視聴者のリクエストに応じて、実際に商品着用してみせるなど、ショーのようなエンターテイメント性のあるコンテンツで消費者の支持を集めている。

実際、あるショッピング系のイベントでは、ふたりのKOLが全体の2割の売上をつくったという事例がある。また、男性ながら口紅のライブコマースで圧倒的な支持を得ている口紅王子(口紅一哥)と呼ばれるKOLは、15分で15000本もの口紅を販売したこともあるという。

経営者がインフルエンサーになることも

KOLは、中国のライブコマースを語る上で非常に大きな要素だ。しかし大半のライブコマース施策は、売上規模こそKOLには劣るものの、企業のCEOや社員自らが登場して、自社商品をライブで売り込むパターンがほとんどだ。実際滝沢氏によると、KOLへの委託は1割程度で、残りの9割はこの方法なのだという。

このパターンの事例としては、コロナ禍で売上げが激減した、あるOTA(オンライン・トラベル・エージェンシー)のトリップドットコム・グループ(Trip.com Group)の例が挙げられる。同社では、CEOが自らコスプレをして登場しライブコマースに取り組んだところ、売上が大幅に伸長し、数千億円にもおよぶキャンセルによる損害を取り戻したという。

奥谷氏は、このような取り組みに対して次のように語る。「こうした企業には、ライブコマースに対する『本気度』がある。CEO自らが出演するという熱量は、消費者にも伝わるものだ」。

一方日本では、こうした事例はほとんど見られない。国内のライブコマース市場はまだ黎明期だ。そこで成功するには、経営者が率先して前面に出て熱意を示す必要がある。「経営者が本気でやり切る。中国からは、そういう姿勢を学ぶ必要があると思う」。

統合されたシステム環境

こうしたコンテンツの要素以外に、中国のライブコマース市場が急速な拡大を続ける大きなファクターが、統合されたシステム環境だ。

中国では、プラットフォームへのアクセスのしやすさ、そして決済手段があらゆる場面で連携していることで、非常に利便性が高くなっているという。キャッシュレス決済に関しても、中国ではWeChatPayやアリペイなどは、オン/オフ問わずどこでも利用でき、「視聴」から「購入」まで一環したユーザー体験の提供が可能になっている。

消費者が新規でeコマースサイトを利用する際も、クレジットカードの登録を改めて求められることもない。このような決済の手軽さも、ライブコマース普及の後押しをしているといえるだろう。

しかし日本には、どのプラットフォームとも連携できるWeChatPayやアリペイのような決済手段が存在しない。その一方、乱立気味といって良い程、決済サービスの数は増えている。この点について奥谷氏は「日本で、WeChatPayなどに相当するような決済会社をつくろうと思ったら、100年たっても前に進まない」と述べる。

「eコマースサイトやライブコマースのチャネルと、既存のモバイルペイメントを顧客視点で繋ぎ直し、シームレスな買い物体験を実現できるような、新たな仕組みが必要だ」。

ローカライズが欠かせない

奥谷氏がこう述べるように、中国の成功モデルをそのまま展開しても、日本で通用するとは限らない。大切なのは、日本人に向いた仕組みとはどのようなものか、徹底的に精査し、ローカライズすることだ。

滝沢氏も「なぜ中国ではライブコマースがうまく行っているのか、視座を一段上げて背後にあるエッセンスを抜き出し、それを日本人に合うように使っていくことで成功に近づくと思う」と強調する。

中国に比べ、日本はまだライブコマースそのものへの取り組みが少なく、知見が不足している点は否めない。たとえ失敗したとしても、そのことによって知見を蓄え、それに基づいたチューニングを重ねていくことで、より精度の高いコンテンツを制作することができるようになるのだ。

川延氏は最後に、次のように話した。「はじめようと思えば、店舗スタッフの自撮りで、ライブコマースは簡単にスタートできる。一歩踏み出すことが重要だ」。

Written by 滝口雅志
Image by Shutterstock