「死」の印象を払拭する、トイザらス・カナダの 危機管理 :「我々はここで腰を据えてがんばっている」

元気ハツラツがんばっていると世間に知ってもらうこと。それがトイザらス・カナダの切なる願いだ。

破産法が適用され、数週間前に全店舗を閉鎖して以来、トイザらスの米国における機能は完全に停止しているが、カナダでは変わらず営業を続けている――そしてそれゆえに、「死」のイメージが付いてしまった企業ならではの、極めて珍しい問題に悩まされている。

同社カナダ部門のトップ、メラニー・ティードマーク氏は現在、2カ月をかけて国内を巡り、ブランドの再建に努めている。メディアを通じて同社の健在ぶりをくり返し伝えるとともに、新たな店内体験を可能にするため、店舗デザインの見直しを図っている。さらに、Amazonでの買物を好むと思われるハイテク通の存在を考慮し、モバイル決済と店頭での商品受取サービスも導入する。

「あいかわらず、米国から大量の報道が伝わってくるし、あいにく、悪いニュースのほうが良いニュースの10倍も多い。だから、カナダではしっかりと営業中だと世間に伝えること、それが目下の当社の最優先事項」と、ティードマーク氏は最近のインタビューで語った。

ブランド再建の核

同社がブランド再建の核と考える戦略はふたつ。ひとつは実店舗の刷新で、今年末までに760万ドル(約8億4000万円)を投資する。もうひとつが、カナダの企業というイメージを前面に押し出す作戦で、消費者のコミュニティ意識に訴えかけていく。

「我々はここカナダで腰を据えてがんばっている」と、ティードマーク氏は今週、YouTubeにアップした動画で語った。「我々は(トロントに拠点を置く保険金融グループ)フェアファックス・ファイナンシャル・ホールディングス(Fairfax Financial Holdings)が運営するカナダの会社だ。4000人以上の雇用を守り、皆さんのご兄弟、従妹、そして近所の方々に働いてもらっている。つまり、トイザらス・カナダとベビーザらス・カナダで買い物をしてもらうのは、みなさんの地域社会に再投資をすることになる」。

トイザらス・カナダが有する現在の店舗数は82軒。今年4月、フェアファックス・ファイナンシャル・ホールディングスが同社のカナダ部門を2億3700万ドル(約260億円)で買い取り、トイザらス名での営業続行を決めた。一方、ドイツ、オーストリア、スイスにある93軒の店舗は、アイルランドの大手玩具会社スミス・トーイズ(Smyths Toys)が買収した。

他のカナダ企業を手本

カナダ企業というイメージを強く打ち出して消費者の愛国心に訴える戦略は、高機能アスレチックウェアブランド、ルルレモン(Lululemon)や大型書店インディゴ(Indigo)など、経験価値マーケティングを実践して成功を収めた他のカナダ企業を手本にしていると、NYのブランディング/ストラテジーエージェンシー、レッド・ピーク(Red Peak)のCEOスーザン・カンター氏は言う。

「トイザらスの動きは、決して前代未聞のものではない。よりダイナミックなブランド体験を提供することでトラフィック増を成し遂げた他のブランドや企業を参考にしている」と、カンター氏。「カナダの消費者は、商品に直に触れて吟味することを好む。彼らの多くは、実店舗での買い物体験を非常に重要視している」。

トイザらス・カナダは米DIGIDAYの取材に応じなかったが、報道によると、今夏末までに40店舗を改装し、オンタリオ州バリーとブリティッシュコロンビア州ラングリーで展開したプロトタイプを参考にし、実店舗での買い物体験をよりインタラクティブなものにしていく。これに向けて導入を考えているのが、顧客の視線を考えた棚作り、ブランド名ではなく子どもが遊ぶパターンに基づいた商品のグループ分け、店舗内スペースのゲームプレイ、フードサービスパートナー、誕生日会やワークショップといったイベント用への作り替えだ。

危機管理の見地

クライシスコミュニケーションの見地から言うと、同社は迅速な対応をとることで、カナダの消費者に安心感を与えた。米国では崩壊したが、カナダでは営業を続けており、今後、時代とともに進化していくと宣言したことになる。

「[米国における]倒産と店舗閉鎖は、悲報として大々的に取り上げられた」と、クレンショー・コミュニケーションズ(Crenshaw Communications)のCEOドロシー・クレンショー氏は言う。「だからこそ、彼らにはこの再建劇を語り続ける必要がある。そして、カナダという新天地で、新たな財政構造のなか、見事な復活を遂げた英雄となる必要がある。この物語には焦点を当てるべき側面が数多くある」。

ソーシャルメディア分析会社クリムゾン・ヘキサゴン(Crimson Hexagon)によると、過去3カ月におけるTwitter、Facebook、インスタグラム(Instagram)でのトイザらスに関するコメント数は、米店舗が閉鎖された6月に急増しており、カナダでは7900件だったのに対し、米国では27万3500件に上った。また、いずれの国でもトイザらスへの否定的な発言が目立ち、米国では71%が否定的、29%が肯定的、カナダでは66%が否定的、34%が肯定的だった。

新興企業にはない長所

店舗体験の重視は、物理的拠点と長い歴史という新興企業にはない長所を活用できる有効な戦略のひとつだと、クレンショー氏は言う。ただし、成功の継続にはペイドメディアへの広告掲載を含め、強力なマーケティングの実施が不可欠だとも、氏は言い添える。

カナダ人は一般に、ネット通販より実店舗に好意的であることを示す統計結果を踏まえ、物理的拠点への注力はカナダ人消費者へのアピールになりうると、カンター氏は言う。一方、トロントを拠点とするリテールアナリストで、リテール・アドヴァイザーズ・ネットワーク(Retail Advisors Network)の共同創設者ブルース・ワインダー氏は、カナダの消費者がアメリカのそれに比べて実店舗を好む傾向――ネット通販が全売上に占める割合は5~7%程度――は、あくまでも一時的なものだと指摘する。とりわけAmazonの影響により、カナダでもデジタルリテールは急速な追い上げを見せており、トイザらスのリブランドおよび物理的拠点の刷新は、カナダ市場への猛進を続けるAmazonへの対抗策だという。実際、Amazonはカナダ市場における存在感を急速に増しており、先日もオタワにフルフィルメントセンターの設立を発表したばかりだ。同社はすでにオンタリオ州、ブリティッシュコロンビア州、アルバータ州にもセンターを構え、それぞれをネットワークで連結しており、カナダ人社員数は6000人を越える。

トイザらス・カナダは現在、カナダ第2の玩具小売業者であり、年間売上高は7億6200万ドル(約848億円)に上る。同社は新規店設立や、実店舗の維持が不可能な場所におけるテーマ別ポップアップストア出店の可能性を否定はしていない。同社が進む方向自体は正しいが、競合他社に後れを取らないための時間・資金の投資は今後、大きな課題となっていくだろうと、ワインダー氏は語る。

Suman Bhattacharyya(原文 / 訳:SI Japan)