ユナイテッド航空が最初にインスタグラムを使い始めたのは2013年のこと。当初はイベントの写真やスポンサー画像、ソーシャルメディアチームのスナップ写真に、シカゴのネットワークオペレーションセンターの舞台裏写真まで、あらゆる種類の写真をポストしていた。
しかし、ユナイテッド航空のソーシャルメディアチームと広告代理店であるワンダーマン(Wunderman)が、過去数年のデータを分析して分かったのは、単純なことだった。それは、飛行機からの絶景を写した画像は、ほかのどのようなコンテンツよりも人を惹きつけているということだ。
飛行機での長旅を嫌う人は多い。しかし、窓から見られる絶景は格別だ。飛行機に搭乗するたびに、窓に映る景色をインスタグラムに投稿している人は多いだろう。
ユナイテッド航空(United Airlines)が最初にインスタグラムを使い始めたのは2013年のこと。当初はイベントの写真やスポンサー画像、ソーシャルメディアチームのスナップ写真に、シカゴのネットワークオペレーションセンターの舞台裏写真まで、あらゆる種類の写真をポストしていた。
しかし、ユナイテッド航空のソーシャルメディアチームと広告代理店であるワンダーマン(Wunderman)が、過去数年のデータを分析して分かったのは、単純なことだった。それは、飛行機からの絶景を写した画像は、ほかのどのようなコンテンツよりも人を惹きつけているということだ。
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差し詰め「プレーンポルノ」
夕焼けに赤く染まる雲を滑空する旅客機の羽、鳥の視点から眺める見渡す限り広がる大空の景色。飛行機から撮影されるこういった画像は、ほかのコンテンツよりも145%も多く「いいね!」を集めている。食べ物の画像や動画はソーシャルメディアでの人気の高さから「フードポルノ」と呼ばれるが、これは差し詰め「プレーンポルノ」といえるだろう。
「インスタグラムは、私たちのブランドを表現するアート・キャンバスとなった。インスピレーションを与え、情熱をかき立て、目的地と旅行客をつなぐ、視覚的なハブとなっている」と、ユナイテッド航空のソーシャルメディアコンテンツマーケティングのディレクターであるK・C・ジーン氏は言う。
「多くの場合、『航空ギーク』と私たちが呼ぶ人たちにアピールするのは、上空からの息を呑むような絶景を写した写真だ」。
「旅行の仲間」という人格
この分析結果によって、ユナイテッド航空のソーシャルメディアは新しい「人格」をもつことになった。それは「旅行の仲間」である。これは彼らのインスタグラムコンテンツに強く反映されている。
インスタグラムに上げられる写真では、誰でも撮影できる角度でありながらユニークなアングルで航空機が美しく捉えられている。また青・白・ゴールドといったユナイテッド航空のブランドカラーが強調されていることが多い。
ジーン氏によるとコンテンツに添えられるコピーも「フレンドリーで、ポジティブ、かつ洞察力に優れていて、楽しい性格」というペルソナを想起させるものになっているそうだ。飛行機での旅行と聞くと、ときに数時間も並ばないといけない荷物検査を思い出して嫌になるものだが、まさにこんな友人が一緒に居れば苦にならないだろう。
「(写真に撮られた)これらの光景は、一般客が毎回目にするようなものではないかもしれない。けれど、ちょうど良いタイミングで絶好の場所に出くわすことがあれば、同じような絶景を撮影することができる」と、ユナイテッド航空のソーシャルメディアを担当するワンダーマンのソーシャルメディア責任者コートニー・ケスラー氏は言う。「写真の多くは私たちが『ゴールデン・アワー』と呼ぶ時間帯に集まっている」。
航空写真だけに限らない
インスタグラムはユナイテッド航空のソーシャル・プラットフォームのなかでも、もっとも高いエンゲージメントを誇っているだけでなく、その成長の速さもトップクラスだ。インスタグラムを覗くと#unitedairlinesというユナイテッド航空のハッシュタグを使っているユーザー数は、15万人にものぼる。ユナイテッド航空のアカウントはおよそ10カ月でフォロワー数を2倍の24万5000人に伸ばした。
しかし、コンテンツは航空写真だけに限らない。ケスラー氏によるとユナイテッドは、ほかの種類のコンテンツも試しているということだ。珍しい旅行先で撮影された感動的な写真は、航空写真に続くパフォーマンスを見せている。
オーディエンスにハッシュタグ「#unitedairlines」の利用を促しており、ユーザーのコンテンツも定期的に特集する。感謝祭の祝日にはユナイテッド航空のシェフによる「空のごちそう」レシピを中心にアップデートした。動く写真「シネマグラフ」もポストしている。
「シネマグラフは視覚的に目にとまりやすいので、インスタグラムに最適だ。しかも、手を止めて再生して見るかどうかに関わらず、コンテンツのメッセージを伝えることができる。私たちはこのフォーマットでの成功を見てきた。将来的にも、より多くのシネマグラフを試みる計画だ」と、ケスラー氏は言う。
ソーシャルメディアがますます重要に
全米旅行産業協会によると、アメリカ国内のレジャー・トラベルは2015年を通じて着実に伸びており、2016年にも増加していると見られている。旅行の数が増えるにつれてソーシャルメディアは、航空会社にとって重要な要素となってきた。
クリムゾン・ヘキサゴン(Crimson Hexagon)による2015年のレポートは、「ソーシャルメディアが航空会社にとってますます重要になってきており、ブランド各社は、より流動的でインフォーマルな言葉でもって、カスタマーとソーシャルメディア上でコミュニケーションを行う必要がでてきた」と、指摘している。
フォーカスライト(Phocuswright)の宿泊・レジャー旅行・シニアリサーチアナリストであるロバート・コール氏は、「航空会社はこれまで、自分たちのサービスを日常に不可欠なコモディティーとして売り込むために努力を惜しまなかった。いま彼らは、逆にサービスへ人間らしさを加えている。ユナイテッド航空はそれをコンテンツ、トーンの両面から正しい方法で行っているようだ」と語る。
インスタのアルゴリズム対応
インスタグラムがアルゴリズムによって大幅に変化するのに備えて、ユナイテッド航空を含めた多くのブランドは、インスタグラム上での戦略を考え直さないといけなくなっている。すでにユナイテッド航空はコストを支払って、自分たちのポストをプロモーションしはじめた。オーディエンスのなかでも、さらにターゲットを絞ってリーチしているようだ。
「ほとんどのチャンネルがお金を支払うことでサポートを得るようになっていることは理解している。しかし、ソーシャルメディアでのキーはそこにある。決まり切った公式は存在しない。常に変化に対応できないといけない」と、ジーン氏は言う。
Tanya Dua(原文 / 訳:塚本 紺)