Amazonは最近エージェンシー向けに、毎年恒例のプライムデーに向けた準備の方法を紹介すると同時に、成長を続ける同社の広告事業も宣伝している。米DIGIDAYの姉妹サイトのモダンリテール(Modern Retail)が入手した媒体資料から、プライムデーの広告戦略をAmazonがいかに指導してるか紐解く。
Amazonプライムデーは毎年人気を博している。具体的な売上高は明かされていないものの、同社によれば昨年のプライムデーの売上高は、ブラックフライデーとサイバーマンデーの合計よりも高かったという。
しかし、Amazonプライムデーの目的は、商品を大量に売りさばくことだけではない。有料のプライム会員の登録者や、Amazonで商品を販売する企業からの広告収益を増やすことも、目標のひとつだと考えられる。
もはやAmazonにとって、eコマース事業は唯一の中核事業ではない。eマーケター(eMarketer)の主席アナリスト、アンドリュー・リップスマン氏は「同社の事業は3つの柱から成り立っている」と語る。まずは商品やプライム会員向けの有料プランを販売するeコマース事業。次に、Twitch(ツイッチ)やプライムビデオ(Prime Video)といったメディアプラットフォーム事業、そして最後に広告事業だ。Amazonは最近エージェンシー向けに、毎年恒例のプライムデーに向けた準備の方法を紹介すると同時に、成長を続ける同社の広告事業も宣伝している。「プライムデーは毎年、Amazonの勢いをさらにプッシュするための機会として活用されている」とリップスマン氏は語る。
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プライムデーの「波及効果」を強調
こうした傾向は、Amazonがエージェンシーにプライムデーの準備を進めさせる方法からも見て取れる。米DIGIDAYの姉妹サイトのモダンリテール(Modern Retail)が入手した媒体資料でAmazonは、エージェンシーに対し「プライムデーに向け、Amazon広告予算を通常の200%以上高く設定するのが望ましい」と説明している。さらに広告展開は、プライムデー開始の2〜3週間前が良いとも書かれている。
小規模な販売業者のなかには、それだけ広告費をかけるのは難しい企業も少なくない。そこでAmazonは、プライムデーの「波及効果」を強調する。広告費をかけることで、ブランドの知名度が高まり、新規顧客が増えるというのだ。Amazonによれば、昨年のプライムデーの2週間後には、各カテゴリーの検索広告のインプレッションが141%増加したという。セール自体は2日間だったが、このデータこそがセールが終わったあともブランドの商品が買われていることの証左だとしている。
しかし、それでも十分とは考えないブランドもある。プライム会員はプライムデー特有の、大幅割引を期待しているためだ。
新しい広告フォーマットもおすすめ
また、今年の媒体資料でAmazonは、各ブランドに新しい広告フォーマットを試すよう勧めている。たとえばディスプレイ広告や、商品の動画を配信するAmazon Liveを通じた広告展開などだ。
Amazonでは、何年も前から「天然由来 デオドラント」といった特定の用語で検索したユーザーを狙った検索広告が一番人気となっている。だが以前、米DIGIDAYが報じたように、最近では、Amazon Liveに力を入れており、たとえば同プラットフォームのブランドを顧客がフォローできるボタンを追加している。ほかにも、買い物客を商品リストではなくブランドページに誘導するテストを実施するなど、Amazon上で新しいブランドを発見し易くする取り組みを続けているのだ。
「Amazonは、これまでファネル下部の扱いは上手いが、ファネル上部はどちらかといえば苦手としていた」とリップスマン氏は語る。
Amazonから、こうした動向についての回答は得られなかった。なお、以下の画像がエージェンシーに向けたプライムデーの営業資料となっている。
[原文:Pitch deck How Amazon is coaching agencies to craft sellers’ Prime Day strategies]
ANNA HENSEL(翻訳:SI Japan、編集:村上莞)