[ DIGIDAY+ 限定記事 ]米DIGIDAYは「アリババ(阿里巴巴)101」という媒体資料を入手。そのなかでは、中国の小売市場の規模、アリババが小売パートナーとしてできること、同社の巨大な規模と商業インフラ、「ニュー・リテール」プログラム、そしてもちろん「独身者の日」について記載されている。詳細を見ていこう。
[ DIGIDAY+ 限定記事 ]アリババ(阿里巴巴)は同社のプラットフォームで商品を販売するブランドに大きなチャンスを約束している。しかし、アリババのエコシステム、「タオバオ(淘宝)」、「Tモール(天猫)」、「ヨウク(优酷)」といったアプリがどのように中国の顧客にリーチし、影響を与えるかを国際企業が理解するのは難しいかもしれない。
米DIGIDAYは「アリババ101」という媒体資料を入手。そのなかでは、中国の小売市場の規模、アリババが小売パートナーとしてできること、同社の巨大な規模と商業インフラ、「ニュー・リテール」プログラム、そしてもちろん「独身者の日」について記載されている。ニュー・リテール・プログラムでは、製品イノベーション、顧客獲得、決済、実店舗といった小売分野の現代化が予定されている。独身者の日は中国版「ショッピングホリデー」で、アリババの売り上げが1年でもっとも多い日だ。
Tモールで商品を販売する米国ブランドのCEOは「アリババには『よろしければ、私たちを検討すべきです(If you want in, you should go through us,)』というキャッチフレーズがある」と話す。「アリババは自らを協力者と位置づけている。特にAmazonとは対照的だ」。
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成長のため、中国に目をつけるブランドが増えている影響で、アリババとEC企業JD.comの競争が激化している。媒体資料によれば、アリババのビジョンは、少なくとも102年にわたって存続すること。そのためには、また、自動車小売店、高級ファッションブランド、化粧品ブランド、消費財企業といった国際企業を引きつけるには、何を提供できるかを明確にしなければならない。
数字でみるアリババ
アリババは媒体資料のなかで、中国の消費者市場とアリババのリーチを利用すれば、市場拡大の大きなチャンスがあると述べている。媒体資料によれば、中国は2017~2022年に30兆ドル(約3312兆円)相当の商品を輸入する見込みで、2017年、中国の小売市場は6兆ドル(約662兆円)規模に迫っていたという。アリババの売り上げも大きく貢献している。2018年度の取引総額は7680億ドル(約84兆8000億円)だった。そしてもちろん、中国の小売市場の原動力として、アリババはECとモバイルを挙げている。中国の小売市場はいまだ80%がオフラインだが、媒体資料によれば、中国は2020年までに世界のEC市場の60%近くを占めるようになり、すでにインターネットアクセスの95%がモバイルで行われているという。
アリババは自社の目標として、発展途上国の新規顧客にエコシステムを拡大し、合わせて20億人の顧客にサービスを提供することを掲げている。中国の消費者向けサイトはTモールとタオバオだが、国外でも4つのECサイトを運営している。インドネシア、マレーシア、シンガポール、タイ、フィリピン、ベトナムをカバーする「ラザダ(Lazada)」「トコペディア(Tokopedia)」と、インド、パキスタンで展開する「ダラズ・ドット・PK(Daraz.PK)」、「ペイTM(PayTM)」だ。
2018年のアクティブカスタマーは6億100万人で、155億ドル(約1兆7112億円)の利益を計上した。総売上は399億ドル(約4兆4051億円)で、内訳は以下の通り。
- コアコマース:341億ドル(約3兆7647億円)
- デジタルメディア、エンターテインメント:31億ドル(約3422億円)
- クラウドコンピューティング:21億ドル(約2318億円)
- イノベーション戦略:5億2400万ドル(約578億5000万円)
エコシステム
アリババの武器は自社最大の消費者向けマーケットプレイスTモール、タオバオだけではない。アリババは「ライフスタイル・ポータル」であることを強調している。事実、出前アプリ、映画チケット購入アプリ、音楽とビデオのストリーミングサービス、旅行予約サイト、プリペイド式携帯電話の料金支払いサービスも提供している。アリババの報告によれば、同社のユーザーは1日平均7.8回アプリを開き、30分使用しているという。これに対し、Amazonのアプリは1日平均8.2分しか使用されていない。
水面下では、ほかにもさまざまなことが起きている。アリババの売りのひとつは、6億100万人のユーザーにリーチできるデータ重視のターゲットマーケティングだ。Amazonに出店する場合と異なり、アリババがデータを利用し、ホワイトラベルで類似品を安く販売することで、ブランドのビジネスを妨害する心配はない。プラットフォームモデルは、アリババは出展者と競合するのではなく、出展者の成長を後押しするというものだ。
アリババの主力事業デジタルメディアとエンターテインメント、コアコマース、ローカルサービスを支えるのは、エコシステムの決済、金融サービス、流通(配送、フルフィルメント)、広告データ管理、クラウドコンピューティングをサポートするテクノロジーサービスのネットワークだ。
決済、流通、マーケティング、データの運用によって、アリババはデータ作成、補給システムを構築。つまり、売り手は商品とブランドのみに注力できるということを強調している。
ニュー・リテール
ニュー・リテールとは、オフラインとオンラインをつなぎ、小売業界を現代化すること。顧客にとっては、オンラインで購入し、店頭で受け取るサービスの展開、オフライン、オンライン両方のカスタマーサービス向上、パーソナライゼーションのレベルアップなどを意味する。データに基づくリコメンデーションは購入履歴だけでなく、広告クリックや検索ワード、友人と共有したリンク、訪問した店、閲覧履歴、テレビ番組の好みも対象となっている。
アリババはニュー・リテールを展開する分野として、特に食料品とコンビニエンスストアを挙げている。アリババのスーパーマーケット「ヘマ(盒馬)」は100店舗を持ち、モバイルアプリが導入されている。モバイルアプリはオンラインショッピングに利用できるだけでなく、店頭で商品をスキャンすれば、価格や情報が表示される。アリババによれば、ヘマはニュー・リテール理論を証明する存在だという。ニュー・リテール理論とは、顧客はオンラインや店頭で買い物する際、もっと柔軟な配送の選択肢を求めており、顧客の行動データはオンライン、店頭で連動可能というものだ。アリババはこのテクノロジーを既存の小売店にも拡大したいと考えている。
独身者の日
最後に、アリババでは独身の日の比重が高まっている。消費者向けのイベントはほかにもあるが、11月11日は1年でもっとも売り上げが多い。2018年の独身の日は、取引総額が308億ドル(約3兆5000億円)に達しており、ブラックフライデーとサイバーマンデーを合わせた金額の2倍を超えている。世界中の18万ブランドがイベントに参加し、セール、ディスカウント、高級ブランドのファッションショー、ガライベントなどが開催された。ファッションショーは5800万人が視聴。ガーライベントはテレビ中継され、視聴者がリアルタイムで商品を購入できるようになっていた。
アリババによれば、独身の日を見るだけで、同社の経済規模が理解できるという。独身の日だけで、10億の注文が処理され、その40%が国際的なブランドの注文だった。
Hilary Milnes (原文 / 訳:ガリレオ)