WFA が主導する、史上最大のクロスメディア測定計画が始動 : Google と Facebook も支援表明

広告主たちは度重なる失敗を経て、クロスメディア測定の探求という無謀な挑戦の突破口を開いたようだ。

現在、ユニリーバ(Unilever)、プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)をはじめとする広告主のグループが主導し、ある環境で投資した広告がほかのチャンネルに及ぼす影響を測定しようとしている。たとえば、テレビ広告がYouTube広告に及ぼす影響を測定するということだ。ただし、クロスメディア測定に関する合意を得るためのこれまでの試みと異なり、GoogleやFacebook、Twitterだけでなく大手エージェンシーの持ち株グループすべてとメディア評価評議会(MRC)、放送局のNBCユニバーサル(NBCUniversal)とヨーロッパ最大のメディアグループであるRTLも参加している。

クロスメディア測定を目的としたこの団体は2019年10月、世界広告主連盟(以下、WFA)によって結成されていたが、概要が明らかになるのは数週間後だ。

WFAは3月、透明性、説明責任、データの出どころに関する世界共通の指針を発表する予定だ。これは広告主、メディアオーナー、エージェンシー、測定企業が地域市場でクロスメディア測定のソリューションを構築するための指針となる。米国市場では、業界団体である全米広告業協会 (4As)が開発を主導する。完成したソリューションは取引通貨としてではなく計画、報告の目的に使用される。

最初のソリューションのひとつは英国で実用化される見込みだ。広告主の業界団体ISBA(Incorporated Society of British Advertisers)が開発を主導する「オリジン(Origin)」で、オンライン動画、ディスプレイ、テレビを横断し、広告のリーチと頻度を重複なしで知ることができる。ただし、広告主がオリジンでリーチ、頻度を売上と結び付けることはできない。プライバシー関連の法令に抵触する恐れがあるためだ。その代わり、自社のシステム内であれば、重複なしのリーチ、頻度を売上データと結び付けることができる。いずれは、オリジンはほかのオンラインチャンネル、メディアチャンネルにも対応する予定だ。

オリジンの公開時期は不明だ。

WFAのグローバルメディア責任者マット・グリーン氏は「ブランドはこれまで、この問題を声高に主張してこなかったが、状況は変化している」と話す。「より一貫性のある高度なクロスメディア測定の実現を促すため、現在、中心部の合意を得ようとしている」。

今回の試みの重要ポイント

長年、オフラインチャンネルからオンラインチャンネルへのカスタマージャーニーをつなぎ合わせるという発想は、無駄骨に近いものだった。たとえば、アトラス(Atlas)を擁するFacebookとニールセン(Nielsen)が広告主のため、リーチの重複を最小限に抑えようとしたとき、キャッシュという問題が立ちはだかった。ニールセンはアプリ内インベントリー(在庫)の追跡に苦労し、アトラスはFacebookの製品だという理由で、Googleが所有するプラットフォームを測定できなかった。

しかし、今回の試みでは、いくつかの前進が見られる。まず、今回は最大級の広告主を含むグループが関わっている。次に、GoogleとFacebookの両方が支援を表明している。さらに、以前と比べ、成功例が増加している。たとえば、ドイツでは、テレビ視聴率にYouTubeでのオンライン動画の消費が含まれるようになった。

今回の計画に詳しいある企業幹部は、システムを公開する前に解決すべき重要な要素がいくつかあると述べている。もっとも差し迫った問題は、どのように測定データをオンラインプラットフォームから引き出すかだという。

総合的なユーザー情報を共有

この計画に詳しい別のメディア企業幹部は、プラットフォームとメディアオーナーはユーザーレベルのデータではなく集計データを共有したがっていると話す。

つまり、キャンペーン内の頻度を管理したいマーケターは落胆する可能性が高いということだ。頻度の管理にはユーザーレベルのデータが必要だ。しかし、もっと実利的なマーケターにとっては、プラットフォームの姿勢はそれほど問題にならないかもしれない。

前述のメディア企業幹部によれば、プラットフォームはユーザーレベルのデータの代わりに、キャンペーンにエンゲージした人の属性がわかるコホートレベルのオーディエンス分析の共有を提案しているという。テレビなどのオフラインメディアを追跡するニールセンのような企業の調査データとともに、総合的なユーザー情報がクラウドベースのクリーンルームに流れ込むと、前述のメディア企業幹部は説明する。

独立したクリーンルームという概念

このアプローチは、Googleが提案するサードパーティCookieの代替技術とよく似ている。個人ではなく集団の閲覧行動を調べるという考え方だ。ただし、ふたつのアプローチには違いがある。WFAの計画は独立機関あるいは業界の合同委員会によって運営されるという点だ。

バイサイド、セルサイドのどちらからも支配的な影響を受けない独立したクリーンルームという概念は、正しい発想のように聞こえる。問題は、これを機能させる正しい方法を見つけ出すことだ。

クリーンルームは、すべてのメディアが公平に関わる必要があるだけでなく、広告主が広告のリーチ、頻度、アトリビューションを理解するには、すべてのデータを集計分析しなければならない。それができなければ、クリーンルームはチャンネルごとに報告するための単なる中央リポジトリーになってしまう。デートラマ(Datorama)のような企業がしていることと変わらない。

ピュブリシスメディア(Publicis Media)傘下のエージェンシー、スターコム(Starcom)でマネージングパートナーを務めるポール・カサミアス氏は「パブリッシャーは個人を特定するための固有識別子を共有していないため、どのようなソリューションであれ、アカウントのプロフィールとCookieデータを照合するための情報が必要になる」と話す。そうした詳細情報がなければ、インサイトへの信頼は限定的なものになると、カサミアス氏は指摘する。

GoogleとFacebookの協力体制

それでも、GoogleとFacebookは広告主に、クロスメディア測定を実現するため、障害を取り除く手助けは何でもすると約束している。

Facebookのバイスプレジデントとして測定、インサイトを担当するブラッド・スモールウッド氏は電子メールで次のように述べている。「我々はWFAに拍手を送りたい。業界をひとつにまとめ、プライバシーに配慮した世界規模のクロスメディア測定ソリューションを設計しようとしているためだ。我々はWFAに協力し、メディアフォーマットをまたいでリーチ、頻度管理、売上を継続的に測定するという提案の実現に尽力するつもりだ。広告主がメディア投資をより総合的に理解できれば、結果的に、顧客体験の質も高まる」。

とはいえ、クロスメディア測定の仕組みづくりに関わることはプラットフォームの利益にもなる。結局、クロスメディア測定はどのような形であれ、オンライン動画のインベントリーとテレビを比較することになり、メディアオーナーからメディアオーナーへの資金移動が容易になるのだ。

ユニリーバのグローバルメディア担当シニアバイスプレジデント、ルイス・ディコモ氏をはじめとするシニアマーケターたちはGoogle、Facebookなどのオンラインプラットフォームに、広告主の支出だけでなくリーチの測定も支援するよう求め続けてきた。オンラインプラットフォームは自身のエコシステム内に限り、キャンペーンのパフォーマンス測定を支援することは得意だが、広告主がプラットフォームの外で何をしているかは無視する傾向にある。広告主がオンラインメディアの購入を増やしたいとき、こうした現実が大きな障害となる。

ポストCookieのより良い方法の追求

それにもかかわらず、Cookieが測定の方程式から取り除かれる日は迫っている。広告主はいまや、同一人物が自社の広告を複数のプラットフォームで何度見たかを知るためのより良い方法を追求するしか選択肢がない状況だ。

メディアコンサルティング企業ランプ97(Ramp97)のプレジデント、ブライアン・レダー氏は「ブランドのマーケターたちは、従来型テレビのデジタルチャンネルに対する貢献、オンラインからオフラインへの影響を尋ねる質問が増えていると話している。多くの場合、最高マーケティング責任者から聞かれるそうだ」と述べている。

Seb Joseph(原文 / 訳:ガリレオ)