P&G 、人気ブランド「タイド」で洗濯サービスを開始:アプリを中心にデータ収集

P&G(Procter & Gamble)が抱えるブランドのなかでも、もっとも認知度の高いもののひとつがタイド(Tide)だ。P&Gはそんな有名ブランドを活用し、オンデマンドなモバイル洗濯サービスを開始した。

サービスの名前はタイド・クリーナーズ(Tide Cleaners)。利用客は事前にアプリを通じて洗濯料金を支払い、洗濯物をロッカーのなかに収納、もしくは箱をマンション、オフィス、店舗などに提出する。洗濯完了の通知を受け取れば清潔ない服をピックアップする、という流れになっている。現時点でシカゴ、ワシントン・ポスト、ダラス、デンバー、フィラデルフィア、シンシナティ、ボストン、ナッシュビルで展開されている。

タイド・クリーナーズは、P&Gがほかの消費財企業と同様に、ブランドのリーチをこれまでの卸売・リテールモデルの外へ向けようとする傾向の一例となっている。こういったサービスを開始することで、リピーター顧客から定期的な収益を得ようとする狙いだ。タイド・クリーナーズの利用料は、シカゴでは加入プランに応じて、月間洗濯にかかる料金は1パウンド(0.45kg)あたり1.24ドルから1.36ドル(約138円から151円)。特定のプランに加入しない場合は1パウンドあたりの料金は1.59ドル(約177円)だ。洗濯作業は自社の従業員とタイド・クリーナーズのフランチャイズ契約オペレーターが混ぜ合わさった業務体勢となっている。顧客の需要に応じて新しいマーケットへ拡大する計画があるという。ユーザーは色の修復やその他カスタマイズされたサービス、特別なプロダクトなどにもアクセスできる。

DTCを狙う理由

消費者にダイレクトにリーチするこのモデルを通じて、タイドはふたつの利点を得ている。顧客の好み、洗濯の頻度、特別な要求があるかどうか、といった情報を蓄積することで顧客との関係を所有することができること、そして月額プランに加入する消費者にディスカウントを提供することで、継続したビジネス収益の可能性だ。

「日常のさまざまな物や事を人々がアウトソースしようとしているなかで、タイドの体験をこの分野に参入させるチャンスがある。米国中で人々が私たちのブランドをこのような形で体現するのははじめてだ」と、P&Gの広報担当は語る。

DTC(Direct to Consumer:ネット通販)ビジネスモデルへの投資を深めるなかでP&Gは、自社が抱えるブランド群の役割を再構想している。報道によると、100以上のシードステージのデジタル専門ブランドを実験しているとのことだ。そして、このコンセプトを率いる従業員にはミレニアル世代の人材を活用しているという。新プロダクトをすぐにテストし、デジタルのみのブランドとして、どれほど良い成績を収めるかを計るというアプローチになっている。

守りのアプローチ

P&Gは多くのスキンケア・ブランドを抱えている。フェイシャル・トリートメント・エッセンス(Facial Treatment Essence)など、いくつかのブランドに関して、P&Gはテレビ広告からデジタル、そしてソーシャルメディア中心のマーティングへと移行している。インフルエンサーたちも起用されている。ユニリーバ(Unilever)ペプシ(Pepsi)と同様、買収も積極的に行っている。この1年だけでも、パーソナルケア・ブランドのL、ウォーカー・アンド・カンパニー(L., Walker & Company)、ファースト・エイド・ビューティ(First Aid Beauty)、スノーベリー(Snowberry)といったブランドを買収している。タイド・クリーナーズは、またふたつの買収の結果生まれたプロダクトでもある。2018年に買収された洗濯サービスを行うプレスボックス(Pressbox)、その前年に買収したユニバーシティ・ランドリー(University Laundry)のふたつだ。

デジタルマーケティング・コンサルタントのジャッジ・グラハム氏にとって、DTC洗濯サービスへの参入は守りのアプローチと見えているようだ。

「タイドは自分たちに伝統がある、古いブランドであると理解している。そして、彼らが実行しなければ、ほかがこのアイデアを実践してしまうとも分かっている。彼らならこのマーケットを完全に所有してしまうことができる。また、これによって人々はタイドを『Uber(ウーバー)のような』イノベーティブなブランドとして認知することで、従来のリテールにおける売上も伸びると予測する」と彼は言う。

課題は「顧客の維持」

デリバリーサービスを行うことでP&Gは顧客の習慣について、特定の地理条件に応じて具体的にデータを集めることができるだろう。それによって将来のプロダクトやサービスを設計することができる。これまでも、洗濯デリバリーサービスを行ったことがある。そのひとつの形態がタイド・スピン(Tide Spin)だ。シカゴで2015年に実験的に行われた。さらに遡れば、2001年にアトランタでジュヴィアン(Juvian)という洗濯デリバリーサービスも実験的に行っている。

「(このサービスによって)新しい、これまでは得られていなかった、もっともブランドに貢献度の高い顧客層に関する土地や人口構成のデータを得ることができる。新しいプロダクトをテストするチャンスも得られる。また将来の他社ブランド買収に関しての判断材料にもなる」と、データ分析企業ヤグアラ(Yaguara)のCEOであるジョナサン・スモーリー氏は言う。

タイド・クリーナーズはアプリを駆動としたサービスだが、それによって顧客は自分の洗濯の最新状況をリアルタイムで知ることができる。この便利さ、そしてサービスの均質さが、新しい顧客にとってはアピールとなるだろうと、P&Gの広報担当者は述べた。しかし、これらの機能のアピールはあれど、P&Gにとっての最大の課題は、顧客の維持だろう。サブスクリプション・ベースのスタートアップが抱える問題だ。

外部識者からの視点

ガートナーL2(Gartner L2)のリサーチ・ディレクターであるジェイク・マシューズ氏は「DTCモデルがたくさんプロモーションされていることに対して、我々は若干のためらいを感じている。顧客獲得のコストを考えたときに、DTC企業の多くは顧客維持という点で苦戦している。サブスクリプションモデルが機能するためには、予測できる消費者行動が存在している必要がある」と語った。

Suman Bhattacharyya(原文 / 訳:塚本 紺)