酒造会社のペルノ・リカール(Pernod Ricard)も、7月の Facebook へのメディア支出を見送ることを検討している。また、同社はユーザーが、オンラインで目にしたヘイトスピーチを、報告できるようにするためのアプリの開発も進めているという。
Facebook広告出稿をボイコットする「ストップ・ヘイト・フォー・プロフィット(Stop Hate for Profit)」の気運が高まるなか、酒造メーカーのペルノ・リカール(Pernod Ricard)も、7月のFacebookへのメディア支出を見送ることを検討している。だがペルノ・リカールUSAのCEOを務めるアン・マカジー氏は、ボイコットするだけではFacebookのコンテンツ管理に、長期的な変化は起きないだろうと考えている。結局のところ、ペルノ・リカールのような大企業の広告主でも、Facebookの広告収益全体に占める割合はわずかに過ぎない。アナリティクス企業のパスマティックス(Pathmatics)によれば、同社は昨年Facebookに240万ドル(約2億6000万円)を投じている。
そこでペルノ・リカールは、ユーザーが、オンラインで目にしたヘイトスピーチを、報告できるようにするためのアプリを開発している。これは、ペルノ・リカールがあらかじめ、各メディアやソーシャルネットワークのコンテンツにフラグを立てておき、ユーザーから報告があった場合は必要に応じてレビューして、削除できるようになるというもの。同アプリの開発目的は、このシステムを通じて削除される投稿内容とそうでないものを明確化し、SNSにおけるヘイトスピーチ管理の透明化を促進することだ。
FacebookやYouTubeが、ヘイトスピーチのコンテンツを削除するといったところで、削除内容とその方法には透明性が欠けているというのが、マカジー氏の主張だ。ほかの広告主やSNSがこのプロジェクトを支援すれば、さまざまなステークホルダーが維持管理する、業界の垣根を超えたプロジェクトへと成長する可能性もある。
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マカジー氏は「広告主としての影響力を発揮し、SNSプラットフォームによるヘイトスピーチ削除の透明性を確保するとともに、プラットフォーマーの説明責任を追求していく」と語る。米DIGIDAYは、ペルノ・リカールが行っているボイコットにとどまらない、SNS上のヘイトスピーチへの取り組みと、社会責任にどう応えていくかについて、マカジー氏に話を訊いた。
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──ほかの企業がSNSへの支出を控えるなか、アプリの開発に踏み切った理由は?
当社は今回のボイコットを尊重しており、我々自身も7月はSNS上の有料キャンペーンを控える方針だ。ボイコットによって、オンライン上のヘイトスピーチ問題は大きな注目を浴びた。だが、8月1日になればどうなるのだろう? アプリを作成し、プラットフォームのヘイトスピーチ対応の透明性を高める方法を見つけることで、ボイコットをはじめとした一連の運動に加担したいと考えている。我々広告主は、プラットフォームが約束を果たすように、これまで以上に追求していくべきだ。
──このアプリによって、SNSによるヘイトスピーチ管理はどのように分かりやすくなる?
SNS上には、ヘイトスピーチに関わるグループが存在する。現状では、プラットフォーム側が実際にこうしたグループを発見し、削除しているのかが、なかなか分からない。だが、ヘイトスピーチのグループを見つけた消費者が、このアプリでそのコンテンツにフラグを立てておけば、プラットフォームに対し、なぜ削除されていないのかを問うことができる。アプリは、投稿内容がヘイトスピーチなのか誤報なのかの判断は行わない。だが、プラットフォームが削除する投稿と、削除しない投稿について、一定の透明性は確保できるようになるだろう。
──SNSから距離をとって、自社が資金を投じてきたコンテンツについて考え直す予定はあるか?
我々は、ヘイトスピーチが見られるプラットフォームに資金を投じてきたのだから、その点に関する非難はすべて受けとめる。広告主として、この問題に真剣に取り組んでいかねばならない。自分たちの支出について、倫理面での見直しを進めている。もし、消費者から、我々が掲げる価値観に反すると指摘されれば、そこで広告を出すことは二度とないだろう。
──倫理面での取り組みは、御社のキャンペーン計画にどのような影響を及ぼすだろうか?
従来のデモグラフィックに基づくターゲティングは、もはや過去の手法だ。人間はさまざまな側面を有しており、現代社会は高度な行動経済によって形作られている。当社は、人々の振る舞いについて理解を深め、それをもとに自分たちのブランドをマーケティングしようと取り組んでいる。自宅にひとりでいるときと、友人といるときでは行動は異なる。そこに肌の色は関係ない。こういった学びがコンテンツ作成の基礎となる。そして従来のアプローチとは根本的に異なる方法で、オーディエンスにリーチするメディアを見つけることに繋がるのだ。
SEB JOSEPH(翻訳:SI Japan、編集:KAN MURAKAMI)