ペプシコ(PepsiCo)は菓子ブランドのフリトレー(Frito-Lay)やクエイカー(Quaker)、ポテトチップスのレイズ(Lay’s)といったブランドを抱えているが、いずれも直近の四半期で収益が増加。全体で見ると、7月から収益は倍増した。最近ローンチしたデジタルチャネルが好調なのが要因だという。
ペプシコ(PepsiCo)は長年、世界規模の小売事業を中核としてきた企業だ。そんな同社が取り組んできた新しいデジタル戦略がいま、実を結びつつある。
同社は菓子ブランドのフリトレー(Frito-Lay)やクエイカー(Quaker)、ポテトチップスのレイズ(Lay’s)といったブランドを抱えているが、いずれも直近の四半期で収益が軒並み増加。ペプシコ全体のeコマース収益で見ると、7月から収益は倍増した。同社のラモン・ラグアルタCEOによると、最近ローンチしたデジタルチャネルが好調なのが要因で、「今後必要な投資を行っていく」という。 また、同氏はこの投資のなかで「第3四半期に倍増したeコマース事業の、プレゼンスと規模の拡大」を目指すという。
いま、大手消費財ブランドのなかには、卸売依存からの脱却と、新興ブランドとの競争力を高める取り組みを進めるところが少なくない。例としてD2Cへ一気に進出しつつあるクロロックス(Clorox)や英国クラフト・ハインツ(Kraft Heinz)のプラットフォーム、「ハインツ・トゥ・ホーム」などが挙げられる。こうした取り組みの背景には、台頭しつつあるデジタルネイティブの消費財ブランドの存在がある。
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一方、ブランドの大小を問わず、多くの企業がオンライン販売への移行を進めている。バンク・オブ・アメリカ(Bank of America)による最新の世界調査を見ると、投資額にして約4800億ドル(約51兆円)が、実店舗からeコマースへと流れているという。
実験的なマーケティング資産
5月、パンデミックの第1波がはじまったとき、ペプシコは「Pantryshop.com」及び「Snacks.com」というふたつのサイトを素早くローンチ。いずれもD2C戦略を基付いて設けられたチャネルだ。PantryShop.comは、クエーカー(Quaker)の朝食やゲータレード(Gatorade)といった、ペプシコでも特に人気の商品を、サブスクリプション形式でセット販売している。一方、Snacks.comは最低価格15ドル(約1600円)でフリトレー(Frito-Lay)の菓子をセット販売している。
同社のD2C戦略の主眼は、チャネルの成長ではない。ペプシコでグローバルeコマース責任者を務めるギブ・トーマス氏は、同社の卸売インフラは非常に強力であり、eコマースプラットフォームに同レベルの展開を期待すべきではないと強調。また、同氏は米DIGIDAYの姉妹サイト、モダンリテール(Modern Retail)が春に実施したインタビューで、「D2Cの規模は、相対的には小さい」と述べている。
実際、eマーケター(eMarketer)の主席アナリスト、アンドリュー・リップスマン氏は、ペプシコの「収益の大半は、今後もスーパーなどの店舗販売になるだろう」と予測する。しかし同時に、ペプシコのeコマース戦略にとって、オンライン販売チャネルの伸長は、良い兆候であることは間違いないとする。「販売量だけではなく、実験的なマーケティング資産として、どのようにチャネルを活用するかが重要だ」。
また、eコマースを通じてロイヤル顧客との関係を深め、オンラインでリターゲティングを実施して新製品のテストを行うといったこともできるだろう。これはD2Cブランドではよく見られる手法だ。
取るに足らない規模
eコマースソリューションプラットフォームを提供するスケールファースト(Scalefast)で、最高マーケティング責任者を務めるオリビエ・ショット氏は「こういった消費者との直接的な繋がりは非常に重要だ。商品のバンドル販売やサブスクリプション契約を通じて、顧客単価を上げ易くなる」と語る。さらに、食品業界のサプライチェーンが揺らぐ現在、新商品の発売も容易になる。ショット氏は「ペプシコのような巨大企業からすればSnacks.comはニッチなプラットフォームで、卸売価格やサプライチェーンを壊すことなく、複数市場でD2Cインフラをテストする手段になる」と分析する。
現在、ユニリーバ(Unilever)のグレイズ(Graze)やマイユ・マスタード(Maille Mustard)など、デジタルネイティブブランドを自らローンチし、そこからフィードバックを得ているレガシーブランドは多い。「これからeコマースが拡大してくなか、ペプシコに続く大手企業はどんどん出てくるのではないか」とショット氏は予測する。
だが、伸びているとはいっても、ペプシコほどの大企業にとってeコマース事業は取るに足らない規模だ。「しばらくは、eコマースの相対的な規模は小さいままだろう」と、前出のリップスマン氏は語る。「包装された食品は、いまでも店舗で買う人が大半を占めるからだ」。
[原文:Pepsi’s e-commerce business nearly doubled this past quarter]
GABRIELA BARKHO(翻訳:SI Japan、編集:村上莞)