2016年にパタゴニアが立ち上げた中古衣類プラットフォーム、ウォーンウェア(Worn Wear)が、成長し続けている。ウォーンウェアは、パタゴニアの古着を売買できるサービスで、回収した商品が同ブランドのものであることを確認した上で、修繕して新たな商品として製造し、リセールする。
パタゴニア(Patagonia)の衣類リセールビジネスが、軌道に乗りはじめている。
というのも、2016年に同社が立ち上げた中古衣類プラットフォーム、ウォーンウェア(Worn Wear)が、成長し続けているのだ。ウォーンウェアはパタゴニアの古着を売買できるサービスで、回収した商品が同ブランドのものであることを確認したうえで、修繕して新たな商品として製造し、リセールする。このビジネスモデルで、ウォーンウェアは2020年、「過去最高の売上」を達成。またパタゴニアは、2019年11月にアップサイクリング製品ブランド、リクラフテッド(ReCrafted)も立ち上げており、2020年の月間売上が「複数月で過去最高」となっている。
2020年は、リセール市場が非常に好調な年となった。ポッシュマーク(Poshmark)やスレッドアップ(ThredUp)、米メルカリをはじめ、リセールプラットフォームは大幅な成長を記録している。しかしパタゴニアはこれらに頼るのではなく、独自のリセールサービスを構築することを選択。いまではこの投資が功を奏し、パタゴニアの公式サイトでも、ウォーンウェアの存在がより目立つようになっている。
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パタゴニアの事業において、ウォーンウェアを成長させるというのは長年のプロジェクトだった。パタゴニアのウォーンウェアでプロジェクトディレクターを務める、アレックス・クレマー氏は「ウォーンウェアがパタゴニアのWebサイトのトップページに置かれるというのは、大きな進歩だ」と語る。クレマー氏は具体的な売上額については明かさなかったが、パンデミックの最中、ウォーンウェアは数カ月でパタゴニアの主要事業のひとつにまで成長したと述べている。パタゴニアは、何十年も前から修繕サービスを提供してきたが、自社のリセールサービスに力を入れるようになったのは2017年からだ。
パタゴニアにとっては二重のメリット
クレマー氏によると、パタゴニアは現在、最近のトレンドを踏襲することで、ウォーンウェアに若いユーザーを引き込もうとしているという。ここ数カ月、パタゴニアではフリースの売れ行きが好調だ。特にビンテージスタイルが人気で、Z世代からの支持がとりわけ多くなっている。パタゴニアの株価も、ウォールストリート・ジャーナル(The Wall Street Journal)が最近報じたように大きく伸びており、投資家に利益をもたらしている。
中古品に関しても、80年代から90年代にかけて販売されていたパタゴニア製品が人気を博している。たとえば、1982年の製品が、イーベイ(eBay)で約1000ドル(約10万円)で落札されたケースもある。「若いユーザーは、中古製品の売買への抵抗がほとんどない」とクレマー氏は語る。「特に興味深いのは、中古品をギフトとして購入する人が増えていることだ。数年前まで、そんなケースは見られなかった」。
こうした中古品人気の上昇を受け、パタゴニアの公式サイトでは現在、同プラットフォームが目立つように表示されている。たとえば新品であっても、もし中古品があった場合はその旨が「買い物袋に追加(Add to Bag)」ボタンの下に表示されるようになっている。クレマー氏によるとこれは、ウォーンウェアが掲げる「より安く、より多くを求めよう」という考え方の表れだという。
活動家としての側面を持つパタゴニアのような企業にとって、この戦略は二重の意味でメリットがある。利益を得ると同時に、サステナビリティという側面でも、社会への貢献度を示すことができるからだ。米国環境保護庁によれば、同国では年間におよそ1280万トンの衣類が廃棄されているという。「ウォーンウェアの成長は、『地球環境保護事業』という当社の哲学にも合致している」とクレマー氏は語る。
リセールサービスの現状
前述したスレッドアップが毎年発表しているレポートによると、リサイクルショップなども含めた中古市場全体は、今後5年で640億ドル(約6兆6000億円)規模にまで拡大すると予測されている。また、「2024年までに、いま盛り上がりを見せているリセールサービスのシェアが、従来型のリサイクルショップといった業者のシェアを追い抜く」とも書かれている。パタゴニアをはじめ、かつてないほど高まっている消費者需要と在庫不足を受けて、新規にリセール事業に乗り出すブランドが増えているのだ。
だが、市場が急激に成長していることと、収益性は別の話だ。フォレスター・リサーチ(Forrester Research)の主席アナリスト、サチャリタ・コダリ氏は最近、米DIGIDAYの姉妹サイトのモダンリテール(Modern Retail)に対して「リセールプラットフォームにとって、持続可能性がひとつの課題となっている」と述べている。ポッシュマークや米メルカリなどのスタートアップは顧客獲得に躍起になり、顧客ニーズに応えるためのフルフィルメントに多額の投資を行ってきたが、現状、安定した利益を上げられていない。
パタゴニアのウォーンウェアもまた、固有の課題を抱えている。まず、1点ものの中古商品の取り扱いは、「工場で数百万点レベルで量産すること」とは似て非なることだと、クレマー氏は述べている。たとえば購入と販売のプロセスだ。リセールの場合、簡単な修繕や商品の認証、写真撮影といった手順が増えることになる。「ユーザーにとって使いやすいサービスを目指している。その一環として、ユーザーが直接商品をパタゴニアの実店舗に持ち込んで、その場で対価を受け取れる仕組みも提供している」と同氏は語る。ウォーンウェアによって、パタゴニアは変化の激しい市場のトレンドを先取りしようとしている。
プラットフォームは活用しない
パタゴニアやアークテリクス(Arc’teryx)、REIなどのブランドの中古商品を扱うトローブ(Trove)のCEO、アンディ・ルーベン氏は、我々がリセール市場の次なるフロンティアとして見ているのは、「リセールを通じて顧客を獲得しようとしているブランド」だと語る。同社はそうした企業と提携し、現在の需要に合わせたサービスを展開することで、毎年300%から400%の成長を達成している。「ブランドたちのアプローチの多くは、(パタゴニアのように)自らサービスを構築するか、他社のプラットフォームを活用するかのどちらかだ」。
パタゴニアの場合は、これまでウォーンウェアへの投資を根気強く行っていたため、それが成功に結びついた。クレマー氏は次のように語る。「2020年は、ユーザーが一度購入した商品を売るというトレンドが、急激に加速した年になった」。
[原文:Patagonia is investing in its Worn Wear resale platform]
GABRIELA BARKHO(翻訳:SI Japan、編集:村上莞)