コロナ禍による内食需要の増加に伴い、男性の家庭内役割に変化が見られている。 パナソニック はこの7月、調理家電 ビストロの認知拡大を目的に、男性および料理初心者をターゲットにしたデリッシュキッチンとのタイアップ番組、Bistro LIVE Kitchen for BEGINNERSをスタートした。
昨今のコロナ禍による内食需要の増加に伴い、男性の家庭内役割に変化が見られている。パナソニックはそこに目をつけた。
同社はこの7月、調理家電 ビストロ(Bistro:TOP画像中央)の認知拡大を目的に、男性および料理初心者をターゲットにしたライブ番組、Bistro LIVE Kitchen for BEGINNERSをスタートした。この取り組みは、レシピ動画メディアのデリッシュキッチン(DELISH KITCHEN)とのタイアップ企画だ。7月8日から現在までに2回実施されており、今後も継続的な配信が予定されている(次回配信日は9月2日の21時)。なお、同番組はデリッシュキッチンのインスタグラムアカウント @delishkitchen.tvで配信されており、IGTVやYouTubeでアーカイブ視聴も可能だ。
「通常のBistro LIVE Kitchenは2019年から配信していたが、特に男性をターゲットにしたものではなかった。しかし、コロナ禍で男性がキッチンに立つ機会が増えたことを受け、男性および初心者向けの新シリーズをスタートした」。こう語るのは、パナソニック コンシューマーマーケティングジャパン本部 コミュニケーション部 エンゲージメントプランニング課 主務の谷一恵子氏だ。実際、デリッシュキッチンを運営するエブリーが発表したアンケート調査では、在宅が増えたことで、男性が「⾃分の分担が増えた」と感じている家事は、「⼦育て(41.9%)」に次いで「料理(29.3%)」「⾷器洗い(26.4%)」が多かったという。
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潜在顧客の認知・理解に
そもそもパナソニックは、2〜3年ほど前からビストロのメインターゲットをデュークス層(DEWKS層:子供のいる共稼ぎの夫婦)に絞ってきた。「昨今、世間の『キッチンの主役は女性であるという』イメージが変化しきている」と谷一氏。「女性だから料理ができるという、そんな定説はいま通用しない」。ただ、Bistro LIVE Kitchenは開始当初、DEWKS層をターゲットとして意識しつつも、特に男性にフォーカスした内容ではなかった。
そんななか、コロナ禍の影響により在宅勤務が増加。それにともない、家庭内でキッチンに立つ男性も増えた。こうした変化を受けパナソニックは、男性を含む料理初心者向けシリーズ、Bistro LIVE Kitchen for BEGINNERSを試験的にスタートした。
「Bistro LIVE Kitchen for BEGINNERSの実施はまだ2回だ。しかし、施策の効果を検証するためにマーケティング調査を実施したところ、若年層の男女両方の購入意向が高く振れていた」と谷一氏。今後、ビストロのメインターゲットであるデュークス層になるような、潜在顧客の認知・理解に繋がったことがわかったという。「Bistro LIVE Kitchen for BEGINNERSで多くリーチすることができた若年層は、今後30代、40代になり、メインターゲットであるデュークス層になっていく。彼らとの継続的なコミュニケーションを通じて、いかにビストロファンになってもらえるか、中長期的な視点で次の手を考えている」。
コンテンツの仕掛け
では、Bistro LIVE Kitchen for BEGINNERSでは、男性をターゲットにする上でどのような仕掛けが施されているのだろうか。そのひとつがキャスティングだ。
通常のBistro LIVE Kitchenは、さまざまな企業イベントや大型フェスなどの司会を務めるMCあまり氏(MAD MANAGEMENT所属)をメインMCに、料理ブロガーや専門家が、調理を実践しながら解説を行うスタイルで展開される。一方、Bistro LIVE Kitchen for BEGINNERSでは、MCあまり氏が調理を実践し解説。ガジェットやカルチャーに関する話題を扱うアイテム情報誌メディア、ゲットナビ web(GetNavi web)の山田佑樹編集長も出演し、ビストロの細かな機能について解説を行っている。
今回、同企画を担当したエブリーのDELISH KITCHENカンパニー OMO事業部 マーケティングソリューションズの及川ひとみ氏は、キャスティングの意図を以下のように語る。「男性は、最新のモノや家電、ガジェット好きな方が多い。通常のBistro LIVE Kitchenでは調理法の解説がメインだが、今回はガジェットに詳しい山田氏をキャスティングし、あえて製品説明を多くした。また、出演者を男性のみにしたところも共感を呼ぶだろうと考えた」。
もうひとつの工夫は、調理するメニューを初心者や男性が直感的に「食べたい」と思うようなものにしたこと。第1回のメニューは「ひっくり返さないハンバーグ」、第2回は「鍋で茹でないナポリタン」だった。「味が想像できるような、分かりやすく簡単なメニューをテーマにしている。普段料理をしない人が、『プロバンス風煮込み』や『〜風グリル』と急にいわれても、料理のハードルが高くなってしまう」。
ライブ配信の可能性
昨今、コロナ禍の影響で、国内外の企業がライブ配信に注目しはじめている。実際、デリッシュキッチンでも、Bistro LIVE Kitchenのような、ライブ配信を活用したタイアップ企画に関する問い合わせが、食品企業を中心に増えているという。
「コロナ禍の影響ももちろんだが、視聴者の反応がその場でわかる点が、ライブ配信が注目を集めている理由だと考える。Bistro LIVE Kitchen for BEGINNERSに関していえば、『ビストロが欲しい』『買いたい』といったコメントが、配信中に多く寄せられた」と、デリッシュキッチンの及川氏は述べる。
昨今、より一層注目を集めているライブ配信だが、冒頭で述べたように、パナソニックはコロナ禍が訪れる以前からライブ配信に注目し、Bistro LIVE Kitchenを開始していた。谷一氏は「調理家電分野では、我々がベンチマークしている競合よりも、いちはやくライブ配信の活用をスタートすることができた」と強調する。
今後もインスタグラムがメイン
また、Bistro LIVEシリーズの配信プラットフォームに関しては「今後もインスタグラムをメインで考えていく」と谷一氏。YouTubeをはじめ、先日ライブ配信機能が追加されたTikTokなど、ライブ配信が可能なプラットフォームはほかにも存在するが、料理コンテンツとの親和性の高さから、今後もインスタグラムを活用していくという。
続けて「インスタグラムで反応が良い料理コンテンツが、最近変化してきている」と同氏。「少し前までは、いわゆる『映える』料理コンテンツが人気だったが、コロナの影響を受けてか、しゃれ込まない家庭感があるコンテンツが増えている」という。こうした傾向からも、コロナ禍により内食需要が高まっていることがわかる。
「家庭内でできる料理コンテンツを提供するBistro LIVEシリーズは、昨今のインスタグラムとの親和性が高いと考えている」。
Written by 村上莞
Photo by DELISH KITCHEN