IABの年次リーダーシップミーティング「ALM」の2日目。当日の話題の中心は「オムニチャネル」であり、経営幹部や消費者、測定といったさまざまな観点からのアプローチが試みられた。真のオムニチャネルマーケティングの確立は依然として前途多難の様相を呈しており、これにマーケティングおよびメディア業界は頭を悩ませている。
ニューヨークで開かれたIAB(インタラクティブ広告協議会)の年次リーダーシップミーティング「ALM」の2日目。当日の話題の中心は「オムニチャネル」であり、経営幹部や消費者、測定といったさまざまな観点からのアプローチが試みられた。真のオムニチャネルマーケティングの確立は依然として前途多難の様相を呈しており、この不都合な真実にマーケティングおよびメディア業界は頭を悩ませている。
それは、IABのCEOであるデビッド・コーエン氏(同氏は「私の望みは、我々が実際に何かをすることだ」と当意即妙に回答。自身の業界団体のカンファレンスにおける代表の非常に率直なコメントだ)との談話に臨んだ、グループエム(GroupM)北米担当CEOのカーク・マクドナルド氏も認めている。最大の課題のひとつは「マーケターの野心とエージェンシーのビジネスサイドのあいだで依然として続く綱引きだ(中略)我々はいまもスプレッドシートの記入や調達をめぐって争っている。その緊張はまだ消えていない。この観点から見るクローズアップは非常に興味深い。違う世界が見えてくる」
マクドナルド氏によれば、過去15年間、デジタル広告が罪悪感を抱いてきた悪しき行動を考えると、「技術としての広告に必要なのは、おそらく消費者のための広告キャンペーンだろう。消費者が求めているのはアドフリー、アドライトなユーザー体験だが、無料サービスやコンテンツを利用する際に広告が果たす役割を消費者にわかってもらう努力を我々は怠っている。悪意ある業者がはびこり、彼らのせいで業界全体が汚名を着せられてきた。このことが問題化している(中略)業界が一致団結してこの問題の解決に取り組んでいないことも問題だ」。
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好ましい広告を作るには?
その後行われた、オムニチャネルマーケティングの観点を通してカスタマージャーニーを検証するセッションでは、ロレアル(L’Oral)でメディア部門の責任者を務めるシニアバイスプレジデントのシェナン・リード氏が、その根底にある真の問題を明らかにした。広告による消費者へのストーカー行為だ。「消費者にとって、オーバーフリークエンシーがもたらすリスクは現実の問題だ」と、リード氏は語った。「どうすればメディアは、プライバシーに配慮した、広告表示の頻度を適度に抑えた、消費者にとって好ましいサービスとなるような戦略の構築を促せるのだろうか」。
どのチャネルでコンテンツを消費しようと執拗に追いかけてく広告を繰り返し見せられると、消費者は「メディアではなく、広告主に怒りの矛先を向ける」からだと、リード氏は付け加えた。
グループエムでスペシャルティチャネル部門のエグゼクティブディレクターを務めるジェン・ソック氏は、オムニチャネルのバリューチェーン内にいるすべての当事者が、マーケター、メディアおよびリサーチ関係者、そして消費者が用いる3つの異なる言語ではなく、同じ言語を使うことが必要だと述べた。
「ターゲットである消費者を追いかけるには、これらをひとつにする方法を見つけることが必須だ」と、ソック氏は語った。「そして、ファネル下部にある情報のなかには上部の理解に役立つものがあると認識することも必要だ。D2C(Direct-to-Consumer)を実践するようになったが、我々はいまちょうどDR(ダイレクトレスポンス)からD2Cへの移行期にある。D2Cはいわば、プログラマティックとDRのマリアージュだ。そのコンセプトは非常に単純だが、私にとってのD2Cは、プレイ回数を増やすべき場所の理想像だ」。
オムニチャネル測定の闇
いうまでもなく、オムニチャネルの測定が、その他の主な障害のひとつとして前進を妨げ続けている。この問題は、グループエムで投資戦略部門のエグゼクティブディレクターを務めるアダム・ガーバー氏が登場した午後のセッションでも取り上げられた。
自身のコメントのせいで解雇されるのは本意ではないが、と前置きしたうえで、ガーバー氏はオムニチャネルの測定が抱える主な問題に正面から切り込んだ。それは売買の方程式のなかで対立する金銭的利害による、連携の欠如だ。「我々が連携できないのは、そこに莫大な金が絡んでいるからだ」と、同氏は語った。「メディアエコシステムは、いまやその半分が資金を従来の側から移そうとしている。メディアの世界におけるこれら両サイドの比較が容易になれば、それだけ資金の移動も容易になる。そこには何十億ドルという金が絡んでいる。だから我々は賛同もしていないし、連携もしていない。中間にはさまざまな思惑を抱える者たちがいるからだ。連携が生まれることを望まない者たちもいれば、もし生まれたとしても、メディアの世界全体の比較はできない形に落ち着くことを望む者たちもいる」。
このコメントこそ、オムニチャネルの約束がいつももう少しのところで果たされないことを指摘する決定的証拠といえるだろう。
[原文:Overheard at IAB’s ALM: Omnichannel’s challenges seem to outweigh its potential]
MICHAEL BÜRGI(翻訳:ガリレオ、編集:長田真)