割引を求める買い物客の需要に応えるため、アウトレットストアを開設する小売業者が増えている。
アウトレットモールを運営するタンガーアウトレット(Tanger Outlets)は8月、6月末時点で同社の36施設の占有率が97.2%だったと発表した。この占有率は、3月には96.5%、2022年6月の時点では94.9%だった。その前日、米国で最大のショッピングモールオーナーであるサイモンプロパティグループ(Simon Property Group)は、同社のモールとプレミアムアウトレットの占有率が6月末の時点で94.7%だったと発表した。こちらも、1年前の93.9%から増加している。
大手アウトレットモールは、ほかの実店舗と同様、パンデミック初期に政府から店舗閉鎖を命じられ、損害を受けた。裁量支出の移行といった経済的な逆風にもかかわらず、アウトレットモールは復活しつつある。プレイサーエーアイ(Placer.ai)の2023年7月のモール指数によると、オープンエアー型のライフスタイルセンターは、前年同期比でほかのセンターを上回っている。サイモンプロパティグループのCEOを務めるデビッド・サイモン氏は、直近の決算発表で、「アウトレット事業への需要が大幅に回復した」と述べた。サイモンとタンガーはいずれも2023年通期業績予想を引き上げ、タンガーは10月にナッシュビルに新しいセンターを開設する。
この記事は、小売業界の最前線を伝えるメディア「モダンリテール[日本版]」の記事です。
割引を求める買い物客の需要に応えるため、アウトレットストアを開設する小売業者が増えている。
アウトレットモールを運営するタンガーアウトレット(Tanger Outlets)は8月、6月末時点で同社の36施設の占有率が97.2%だったと発表した。この占有率は、3月には96.5%、2022年6月の時点では94.9%だった。その前日、米国で最大のショッピングモールオーナーであるサイモンプロパティグループ(Simon Property Group)は、同社のモールとプレミアムアウトレットの占有率が6月末の時点で94.7%だったと発表した。こちらも、1年前の93.9%から増加している。
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大手アウトレットモールは、ほかの実店舗と同様、パンデミック初期に政府から店舗閉鎖を命じられ、損害を受けた。裁量支出の移行といった経済的な逆風にもかかわらず、アウトレットモールは復活しつつある。プレイサーエーアイ(Placer.ai)の2023年7月のモール指数によると、オープンエアー型のライフスタイルセンターは、前年同期比でほかのセンターを上回っている。サイモンプロパティグループのCEOを務めるデビッド・サイモン氏は、直近の決算発表で、「アウトレット事業への需要が大幅に回復した」と述べた。サイモンとタンガーはいずれも2023年通期業績予想を引き上げ、タンガーは10月にナッシュビルに新しいセンターを開設する。
高まるアウトレットへの関心
米モダンリテールが情報筋から聞くところによると、小売業者がアウトレット施設に関心を抱くのにはいくつかの理由が考えられる。プレイサーエーアイのマーケティング担当シニアバイスプレジデントを務めるイーサン・チェルノフスキー氏は、そのひとつはマクロ経済の要因であり、「アウトレットモールは、経済的な不確定性の時期にもうまく調和するような、価値志向の恩恵を受けている」ためだと語る。小売業者が実店舗により多くの関心を向けていることもひとつの理由だ。コアサイトリサーチ(Coresight Research)によると、2022年は2016年以来初めて出店数が閉店数を上回った。
多くの小売業者は、「アウトレットがオムニチャネルのエコシステムの重要な部分と考えている」と、タンガーのCEOを務めるスティーブン・ヤロフ氏は米モダンリテールに語った。
アウトレットは、倉庫の容積を開放するためにも有用だと、ヤロフ氏は付け加えている。「アウトレットストアを利用すれば、ブランドの価値を損ねることなく過剰在庫を処理できる。これはブランド自身にとって極めて重要なことだ」と同氏は述べる。ギャップ(Gap)やナイキ(Nike)など多くの小売業者は、サプライチェーンの困難を受けて、在庫の削減に取り組んできた。
屋外モールの本質的な強み
屋外型のアウトレットモールは、屋内型の店舗に比べて空気の循環の点で本質的な優位点があり、2020年に起きたCovid-19初期の衝撃の後には、多くのアウトレットが復活した。プレイサーエーアイによると、屋内のモールと比べて、屋外のモールは、2021年の最初の6カ月間の訪問客が、2019年の最初の6カ月間の訪問客と比較しても落ち込みが少なかった。
ヤロフ氏によると、タンガーは2020年5月頃、テネシー州やサウスカロライナ州など南部の州で、アウトレットを再開しはじめた。Covid-19に対する予防措置のレベルが異なっていたため、ほかの場所でのアウトレットのオープンには、60日から90日ほどを要した。人々が在宅勤務をはじめ、家から出たいと思うようになったため、タンガーではCovid-19以前よりも平日の訪問客が「はるかに多くなった」と同氏は述べている。また、顧客の買い物のパターンも3月以前とは大幅に変化したと付け加えている。
また、ヤロフ氏は、「これによって、当社がショッピングセンターをマーチャンダイズする方法も変化した。人々は集まる場所を探していたので、集まれるスペースが魅力的であるよう力を気を配った。食料品にはこれまでなかったほどの労力を注いだ。人々は日常的な利便性も求めていた。そのため、サービスを拡充し、食料品店を重視して、エンターテイメントやライフスタイルコスメも多く取り入れた」と述べる。
同氏によると、タンガーは、ベース(Bass)や婦人服のドレスバーン(Dress Barn)など従来型の小売ブランドが去ったあとのスペースに、新しいD2Cブランドが参入しているという。これらのD2Cブランドは、アウトレットを利用することで、フルプライスを望まない新しい顧客層を開拓することができる。「アウトレットセンターには顧客を獲得する機会があり、これは貴重なものだ」と同氏は述べている。
出店を加速する各社
小売業者は、規模を問わずアウトレットの場所を増やそうとしている。ベストバイ(Best Buy)は、「価値を重視する」買い物客を呼び込むことをめざし、来春までにアウトレット施設を10店舗オープンすることを計画していると、同社のCEOを務めるコーリー・スー・バリー氏は3月に語った。ベルク(Belk)は5月、新しいアウトレット施設を10店舗開設し、合計16店舗になった。クレートアンドバレル(Crate + Barrel)は6月に、最初のアウトレットをアリゾナに開設し、レイモア・アンド・フラニガン(Raymour and Flanigan)も、ロングアイランドにアウトレット施設を建設中だ。
このような成功例はあるものの、アウトレットモールには依然として克服すべきハードルがいくつか存在する。まず、ガソリン価格の高騰から、人々がアウトレットまで移動する気にならないかもしれないということだ。「多くのアウトレットモールと中核的なオーディエンスとの距離を考えると、難しい課題だ」と、チェルノフスキー氏は語る。またアウトレットは、eコマースサイトのように包括的なプロモーションや特売を行っているほかのチャネルからの圧力にも直面している。
「しかし、この数カ月間はアウトレット分野で大きな変化が起こっており、訪問客は確実に増え続けている。このトレンドが続くなら、アウトレットモールは新学期シーズンに向けて好調に推移し、2023年の年末まで好調が続く可能性がある」とチェルノフスキー氏は続けた。
[原文:Outlet malls are booming as brands seek out new retail options]
Julia Waldow(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)