「顧客にとって我々は、 DNVB ではなく単なる新ブランド」 : アウトドアボイスのケビン・ハーウッド氏

アパレルブランドのアウトドアボイス(Outdoor Voices)でテクノロジー担当バイスプレジデントを務めるケビン・ハーウッド氏が目指しているのは、すばやく決済できる機能を自社のアプリやウェブサイトに搭載することだけではない。

「商品の売買を通じて顧客と関係を有するだけでいいとは考えていない」と、ハーウッド氏はいう。「我々が目指しているのは、顧客の住む地域に近い場所でイベントを開催し、そうしたイベントでの活動が楽しくなるようなアパレル製品を勧めたり提供したりできる体験を作り出すことだ」。

店舗体験の向上につながるイベントに取り組むデジタルネイティブなブランドは、アウトドアボイスだけではない。シカゴにふたつ目のショールームをオープンしたばかりのソファブランド、バーロウ(Burrow)は、コンサートやコメディなどのイベントが店舗に人を呼び込むのに有効なことに気づいている。その来店客が、カウチに関心のあるユーザー層の人ではなかったとしてもだ。CBD(カンナビジオール)飲料メーカーのリセス(Recess)も、2月にニューヨークでポップアップストアをオープンし、ヨガ教室や健康に関するワークショップなどのイベントを行っている。もっとも、このような取り組みには当然ながら課題もある。それは、無料のワークアウトクラスに惹かれてやって来た人たちを、どのようにして自社の顧客にするかということだ。

アウトドアボイスのハーウッド氏は、アプリとウェブサイトの開発責任者であるだけでなく、店舗体験を向上させるためにどのようなテクノロジーを導入すべきかを決定する立場にある。6月中旬、小売プラットフォームのニューストア(NewStore)と提携し、顧客がオンラインで商品を注文して店舗で受け取れるサービスを夏に開始することを明らかにした

そのハーウッド氏が、アウトドアボイスの店舗戦略、インスタグラム(Instagram)のチェックアウトの導入成果、そしてモバイルとパーソナライゼーションへの投資に関する同社の考え方について語ってくれた。回答は読みやすさのために若干の編集を加えてある。

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――店舗体験に対する顧客の期待はどのように変化している?

Amazonが台頭したおかげで、商品の配送に対する期待値があらゆる人のあいだで高まっている。店に来て商品がなかったときに「わかりました。じゃあ、配送してもらえませんか」というのは、ほとんどの顧客にとってごく普通のことだ。彼らはオンラインで買い物をした経験があり、そのやり方になじんでいるので、配送してもらえることをこれまで以上に期待するのも当然だろう。我々は(こうした機能の提供を)簡単にできる基盤テクノロジーをすでに構築したため、ブランドとしてのアウトドアボイスはきわめて有利な立場にある。これに対し、20~30(年)ほど前の旧式のシステムを使っているブランドは、最新のアプローチに移行することが難しい。若い会社であることが、我々のアドバンテージになっているのだ。

我々がオンラインからスタートしたという事実は、おそらく顧客の頭のなかにないと思う。彼らは単に我々を新しいブランドと考えており、もっと新しい機能を期待しているかもしれない。それこそが、我々が確実に提供したいと考えているものだ。

――決済機能のテストでインスタグラムとの提携を決めた理由は?

我々にとって、インスタグラムは顧客とのコミュニケーションに欠かせない重要なチャネルだ。あらゆるソーシャルチャネルのなかで、もっとも活発に活動している場所であるため、社内的にきわめて重要なプラットフォームなのだ。ユーザーが(インスタグラムで)お気に入りのものを見かけたときの体験をシンプルにし、その製品を購入しやすくする取り組みにトライすることは、私にとってごく自然なことだった。

――顧客が自社サイトでなくインスタグラムで製品を買えば、顧客に関して得られるデータは少なくなる。顧客が利用している別のプラットフォームで簡単に製品を買えるようにする取り組みと、自社サイトに誘導する取り組みとのバランスは?

データの視点はたしかに重要だ。顧客に関するデータが多いほど、よりパーソナライズされた体験をできるのは間違いない。だが我々は、顧客とのコミュニケーションの取り方そのもので、ほかの企業と差別化できていると考えている。我々の基本戦略は、人々を楽しいアクティビティに誘う友達のような存在になるというものだ。パートナーやプラットフォームを評価するときも、顧客との関係を(引き続き)維持できる確実な方法があるかどうかという点を重視している。

――パーソナライズの重要度は? また、顧客体験をパーソナライズするためにテクノロジーをどのように利用している?

過去の購入データなどから得られる情報(たとえば購入したサイズなど)については、サイズが自動的に表示されたり、サイトを検索したときにそのサイズが(目立つ形で)表示されたりするようにしている。(色や生地の種類などを)アドバイスできることはきわめて重要だ。また、顧客の好きなアクティビティについて知ることができれば、彼らがイベントに出かけて地域の人々と交流したいと思えるようなアクティビティにフォーカスしたコンテンツを提供できるかもしれない。

検討していることが(パーソナライズしか)ないようでは、ほとんどロボットになってしまう。我々が求めているのは、自動的に顧客との関係を構築し、彼らの気持ちに訴えかけることのできる手段ではない。顧客が買ってくれそうなものを表示することだけに100%最適化されたAmazonのような存在を目指しているわけではないのだ。当社の創業者であるタイラー・ヘイニー氏は、このことを「ハイキングにオレンジのおやつを持ってくる友達のようになりたい」と表現している。また、このような取り組みを最初から最後までをパーソナライズすることはできない。人間同士のつながりや関わりを増やさなければ、理解できないのだ。

――アウトドアボイスのモバイル戦略は? また、アプリを通じた顧客とのコミュニケーションについてのあなたの考えは?

2018年にローンチした「OVトレールショップ(OV Trail Shop)」は、拡張現実(AR)を使って人々にトレッキングの楽しさを知ってもらうというものだった。だが、この取り組みは、テクノロジーを利用して人々にアクティビティを奨励できるかどうかの実証実験でもあった。モバイルは私にとって非常に重要なアイテムであり、我々はいまも熱心にモバイルに取り組んでいる。

私の考えでは、顧客に共感をもたらし、彼らが戻って来たくなるようなモバイル体験を構築するには、コンテンツ・コミュニティ・製品というトライアングルを追求する必要がある。

Anna Hensel(原文 / 訳:ガリレオ)