ギネス(Guinness)やベイブ・ワイン(Babe Wine)、カットウォーター・スピリッツ(Cutwater Spirits)といったアルコール飲料ブランドにとって、アルコール飲料のデリバリーを手がけるドリズリー(Drizly)への広告支出を増やすことが、パンデミック下での重要な取り組みとなっている。
パンデミックのなか、フードやアルコール飲料のデリバリーアプリが、広告主をますます惹きつけている。いまも多くの人が自宅にこもり、オンラインデリバリーを利用しているからだ。
ギネス(Guinness)やベイブ・ワイン(Babe Wine)、カットウォーター・スピリッツ(Cutwater Spirits)といったアルコール飲料ブランドにとって、アルコール飲料のデリバリーを手がけるeコマースアプリのドリズリー(Drizly)への広告支出を増やすことが、パンデミック下での重要な取り組みとなっている。実際そのうちの2社は、今年からドリズリーでの広告支出を増やす計画を打ち出している。ある業界筋も、ドリズリーの成長は今後も続くと予測している。
「新型コロナウイルスが猛威を振るうなか、eコマースを活用することで、これまでよりもはるかに多くの人たちに、当社の製品を届けることができている」。こう語るのは、ベイブ・ワインでゼネラルマネージャーを務めるチェルシー・フィリップス氏だ。さらに同氏は、もはやこうしたトレンドは一般的になりつつあると付け加える。
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もっとも、ドリズリーのようなeコマースプラットフォームは、パンデミックの前からデジタルマーケティングを推進しようとするマーケターにとって、欠かせない存在になっていた。こう指摘するのは、メディアエージェンシーのメディアハブ・グローバル(MediaHub Global)でバイスプレジデント兼メディアディレクターを務めるグレッグ・カバルッツォ氏だ。
カバルッツォ氏によると、米国のマーケターは、メディア支出を実際の販売に結びつけるうえで、困難に直面しているという。そんななか、ドリズリーがマーケターを惹きつけている理由は、「メディア支出が販売に結びつくまでの道筋」を示すことができているからだ。ドリズリーの検索広告やディスプレイ広告のクリック単価は製品によって異なるが、1.45~2.6ドル(約153~274円)ほどだと、米DIGIDAYは以前の記事で推測している。
そして、多くの人が自宅にこもって食料品を注文するようになり、デリバリーの利用が急速に増加しているいま、この分野への広告投資は一層加速している。
「コロナ禍は、ドリズリーにとって大きなチャンスとなった。ロックダウンによって消費者行動が変化するなか、広告主はメディア予算をeコマースに再投資することを余儀なくされた」と、カバルッツォ氏はメール取材で述べる。
店舗ビジネスの代替として
ベイブ・ワインのフィリップス氏によれば、同社は現在、広告支出の60~80%をソーシャルメディアに割り振っている。なおドリズリーに関しては、正確な数字は明らかにしなかったが、昨年と比べてその投資金額が増えているという。また、「2020年には当社のメディア支出の80%がデジタルメディアに使われ、その95%以上がeコマース(ドリズリーやD2C施策)に向けられた」と、同社の広報担当者はメールで回答した。
ベイブ・ワインは、パンデミックの前からドリズリーと手を組んでいたが、ドリズリーのeコマースプラットフォームで売り上げが増加したのはパンデミックが発生してからのことだ。同社の調査によると、アルコール飲料の販売店に消費者が足を運ぶ回数が、コロナ禍で減少していることがわかったという。店舗は同社にとって、若者にブランドを認知してもらう主要な場であるにもかかわらずだ。「人々が店舗に足を運ぶ機会は、ほとんどなくなった。我々は現在、人々が(ドリズリーの)プラットフォームをどのように利用しているのか、より正確に把握し、それをもとに彼らにリーチする方策を検討している」と、フィリップス氏は語った。
ホリデーシーズンの期間中、ベイブ・ワインはバドワイザー(Budweiser)と提携して、ドリズリーのeコマースプラットフォームのワインセクションとビールセクションで、商品のプロモーションに取り組んだ。フィリップス氏によれば、ベイブ・ワインは現在、「人々がドリズリーやほかのeコマースプラットフォームを含め、どこでアルコール飲料を手に入れようとするのか」という点を重要視しながら、投資戦略を練っているという。
聖パトリックの祝日がきっかけに
一方ギネスも、米国のパンデミック初期、さらにいうと3月17日の聖パトリックの祝日のころからドリズリーでのテストを増やしたと、酒類メーカーのディアジオ(Diageo)でギネスブランド担当ディレクターを務めるニキル・シャー氏はいう。今年は、聖パトリックの祝日の前からドリズリーへの投資を開始する予定だというが、予算の具体的な金額は明らかにしていない。
「当社は、聖パトリックの祝日が終わってからの数カ月で、ドリズリーへの広告予算を3倍以上に増やした。いまもこのプラットフォームでは、3桁の成長が続いており、将来費やすべき予算の見極めを続けているところだ」と、シャー氏はメールで回答を寄せた。
聖パトリックの祝日は、多くの企業にとって転換点となったが、なかでもビールブランドは大きな恩恵を受けたという。なぜならこの日は、消費者がビールを買い求めるからだ。「当社は戦略を切り替え、その期間だけ大量の予算を(ドリズリーに)振り分けた」とシャー氏はいう。なお、同社がこの戦略転換を決めたのは、聖パトリックの祝日の1週間前。eコマースは「アットホームな時間」を過ごそうとする人たちが集まる「大きなチャンス」をもたらす場所のひとつと考えていたと、シャー氏は当時を振り返る。
一方、カットウォーター・スピリッツは、検索広告、ストリーミング広告、およびYouTubeとに予算の多くを費やしていると、同社の親会社であるアンハイザー・ブッシュ・インベブ(Anheuser-Busch InBev:ABインベブ)でビヨンド・ビール(Beyond Beer)のマーケティング担当 バイスプレジデントを務めるラナ・ブキャナン氏は述べる。同氏によれば、カットウォーター・スピリッツは、デジタル広告とソーシャルメディアを活用して、ユーザーをドリズリーなどのeコマースでの購入に誘導しているという。
ブキャナン氏は、ドリズリー、およびeコマース関連に振り分けているメディア予算の金額を明らかにしていない。しかし、いまはあらゆる企業にとってeコマースが「最優先の取り組み」になっていると語った。
地域ごとの規制に影響
とはいえ、ドリズリーに問題がないわけではない。シャー氏は「この分野は地域性が高いことが特徴だ」と述べる。「デリバリーの分野は、米国のアルコール飲料業界で非常によく見られるような、地域ごとに存在する規制の影響を明らかに受けている」
そのため、Amazonなどのプラットフォームと提携したときのように、「きわめて広い地域をカバーする」のは難しいと、シャー氏は指摘する。
また、カバルッツォ氏も、ドリズリーなどのプラットフォームで成功を収めるには、「製品の流通体制とeコマース販売業者の配送エリアを加味して」適切な戦略を練る必要があると語る。
しかし、ベイブ・ワインとギネスは、どちらもドリズリーでの広告支出を増やす予定だという。eコマースやオンデマンドデリバリーの流行が一時的なものではないとすれば、こうした戦略は理にかなったものだ。
「ワクチンを接種する人が増えて(パンデミック前の)生活が取り戻せたとしても、携帯電話から酒類を注文できる手軽さが、すぐに忘れ去られてしまうことはないと思う」と、カバルッツォ氏は付け加えた。
[原文:‘Order booze from your phone’: Why brands like Guinness, Babe Wine see advertising value on Drizly]
KIMEKO MCCOY(翻訳:佐藤 卓/ガリレオ、編集:村上莞)