オピニオン:すべてブランド CMO が追求すべき、4つのイノベーション

本記事は、ブランドストラテジストで、社会学の専門家であるアナ・アンドジェリック氏による寄稿です。

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筆者は最近、ある有名なココナッツウォーター企業の最高マーケティング責任者と、持続可能な容器の導入促進に向けた同社の取り組みについて議論した。彼女が抱える問題は、システムと企業コミュニケーションの両方にあった。容器業者のイノベーションに向けた取り組みは、いまのところ十分ではない。現在入手可能な容器は、どれも飲料との化学的な相性がよくないため、環境にはよくても人体に悪影響をもたらす可能性がある。また、彼女の会社が持続可能性に向けて相当な努力をしているにもかかわらず、消費者にはそのことが伝わっていない。

ここにイノベーションのハードルがある。バリューチェーン全体がイノベーションに関与する必要があるのだ。サプライヤー、メーカー、流通業者、そして容器業者のパートナーの取り組みが大きく後れていては、イノベーションを実現できない。しかし、CMOの職務がバリューチェーン全体を対象としているわけではないため、現実にはCMOにイノベーションを強制する力はないことが多い。だが、イノベーションはプロジェクトではなく、成長の原動力だ。そして今日、イノベーションの実現はかつてないほど急務になっている。

ここで役に立つのが、達成すべき使命と優先順位を理解することだ。ほとんどの場合、達成すべきことに変わりはない。中心となるのは次の4つの領域だ。

1. デジタル収益を増やす

このところ、D2C(Direct to consumer:直販)と卸売りのあいだで大規模な話し合いが行われている。ファッション、美容、アパレル業界の小売ブランドの多くが、自社で所有し、運営しているチャネルを主要な収益源にしようとしているからだ。だが、ブランドの流通体制は卸売りに適したシステムになっており、その収益は減少傾向にあるとはいえ、大半がサードパーティによってもたらされている。一方、デジタル収益を得られる場所はeコマースにとどまらない。ソーシャルコマース、顧客を獲得・維持するための戦略、オンラインアグリゲーターとの提携、コンテンツとコマースの統合、インベントリー(在庫)管理、顧客関係管理、メンバーシップ・ロイヤルティプログラム、顧客データベース管理、店舗でのクライアンテリングといった分野で、デジタル収益が増えているのだ。

2. 顧客体験を向上させる

顧客体験(CX)は、いまもっともホットな用語のようだ。調査会社のフォレスター(Forrester)やエージェンシーのハバス・メディア(Havas Media)などさまざまな企業が、優れた顧客体験によって価値を生み出し、価値を得ることができると述べている。そして、これにはもっともな理由がある。調査会社のイプソス(Ipsos)によれば、消費者がブランドを選択する最大の理由が顧客体験であるにもかかわらず、そのような顧客体験をうまく提供できる体制を整えたブランドはほとんどないという。多くのレガシー企業は、いまだに顧客中心主義を事業の中心に据えていない。したがって、顧客体験の優れた事例が、設立から10年未満のデジタルネイティブ企業でしか見られないのもうなずける。「どこでもショッピング」ができるいま、デジタルであれ実店舗であれ、顧客とのあらゆるタッチポイントに、価値を生み出してユーザーを顧客に換えるチャンスがあることを彼らは理解しているからだ。そして、こうしたタッチポイントが作り出す顧客との関係こそ、ブランドが費用を投じて育て上げる必要がある。

3. 運用コストを減らす

さまざまな業界の小売担当CMOが筆者に語ったところによると、彼らが直面している最大の課題は、レポートが多すぎることと、組織がサイロ化していることだという。非効率で時代遅れの組織構造では、今日のビジネスに欠かせない対応能力の獲得は見込めない。そのような組織構造は、ビジネスに変化をもたらす新しいテクノロジー(eコマースやソーシャルメディアのことだ!)が登場するたびに新しい部署を作っていた時代の遺物だ。さまざまな部署がお互いに戦略を調整しないまま、独自の課題を追い求め、別々のエージェンシーと提携するのではなく、持続的なビジネスとブランドの成長に向けた新しいテクノロジーの活用方法に関する戦略を組織全体で統一し、その戦略に従って各部署が動くようにしなければならない。とはいえ、旧態依然とした組織構造をなくすことは、顧客中心主義の実践と対応能力の獲得を目指してゼロから組織を作るよりはるかに難しい。したがって、この分野で新興企業がリードしているのも無理はない。

4. 新しい製品やサービスをリリースする

デジタル収益が拡大し、顧客体験が向上し、事業を合理化できると、新製品や新サービスのリリースがイノベーションの最初のステップだと考えがちだ。だが、これはおそらく最後のステップにすべきことだろう。新しい製品やサービスは、成長を目指して企業全体が変革を成し遂げた結果として自然に生まれるものだ。ただし、新しい製品やサービスが組織レベルで認められず、サイロに隔離されたままになる危険性がある。小売ラボの多くが閉鎖されたり、十分に活用されなかったりしたのもその一例だ。

いまや、すべての企業が成長企業といえる。小売業では特にそうだ。「どこでもショッピング」の時代においては、消費者はいつでもどこでも、さまざまな製品をまとめて簡単に購入できることを期待している。ワッツアップ(WhatsApp)やTikTok(ティックトック)やインスタグラム(Instagram)を使っているときでも、コンテンツを見ているときでもだ。事業を適切に運営できる体制を整え、顧客を事業の中心に据え、デジタル収益を順調に確保し、新しい製品やサービスを継続的かつ戦略的に投入している企業にとっては、あらゆるところに成長の機会が転がっている。

Ana Andjelic(原文 / 訳:ガリレオ)